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急なお引越し

 突然だが我が家は引っ越しをすることになった、その理由は詳しく話すと長くなるが普通とは少しばかり逸脱していると思う。


 引っ越しの理由は多種あれど大学生、高校生にもなった息子達を連れての引っ越しは普通はしない、なぜなら高校以上の学校は義務教育を卒業した人に向けての高等教育機関であり入学するにも編入するにも先ずは一度試験という篩を経由する必要があるからである。


 であるからこそ通常は学生の一人暮らしなり親の単身赴任などという選択肢が挙げられるべきであるのだがもう一度言うが今回の事件は普通の理由とはかけ離れているのだ。




 我が家の引っ越し先、それは―――





 ―――異世界だった





 ♂♀




 これが夢だと自覚できる不思議な状態の中ぼんやりとしたおぼろげな意識でおかしな夢を見た、既視感を感じる懐かしい風景、曖昧な思い出、自分が自分でないような、自分ではない誰かが書いた自分の日記を読んでいるようなモヤモヤとした夢だ。


 とはいえ夢とは所詮夢、現実の世界には何ら影響を与えることのない仮初の仮想での出来事......とは残念なことにならなかった。


 夢から覚めた俺が目にしたのは知らない天井、何時も生活しているはずの自室は漫画や教科書の影も見えない見知らぬ部屋になっていた。


 寝て起きたら知らない場所に一人放置、この状況で呑気に熟睡していた自分に驚きである。


 というか一番の問題点は俺の体が縮んでいることだ。



「「「「「な、なんだこれは!?」」」」」



 このとき広い屋敷に全く同時に5つの叫び声が重なった。




 ♂♀




 ところ変わって幾つもの椅子と机が並ぶ会議室、そこに面影が無いようで思いっきりある俺を含めて5人の人間が集まることとなった。


 そこには物理的な能力を獲得した空気があった、そう錯覚するほど重苦しい空気だマジで空気が死んでいる。


 集まった5人は軽く自己紹介を済ませ思い思いに現状を理解しようとしている。


 あるものは今日行うはずだった仕事がどうなるのかを心配し、あるものは朝ご飯どうしようかしらと心配し、あるものは突然起こった非日常に口元を気持ち悪く緩ませ、あるものはお腹すいたーとのんきに催促し、あるものはあれ、これでもう学校いかなかくていいんじゃね?という天才的発想にたどり着いた、ごめん最後のは俺の思考が漏れた。


 ていうかこの連中ろくなのいねーな。


 もう察している人がいるかもしれないが一応はちゃんと紹介をしておこう此処にいる5人は決して他人なんかではない、この世の中で最も強い絆で結ばれた5人言ってしまえば血の絆で結ばれた家族であった。


 とりあえず一人ずつ紹介しよう。


 父親:ビャクヤ・アカツキ(暁白夜)

 年齢;25(39)

 職業:領主(政治家)

 備考:親馬鹿『娘限定』


 母親;セツナ・アカツキ(暁雪菜)

 年齢:23(36)

 職業:第一婦人(大学准教授)

 備考:旧家出身


 俺:レイト・アカツキ(暁黎人)

 年齢:8(19)

 職業:(学生)

 備考:大学の理学部一年


 弟:イザヨイ・アカツキ(暁十六夜)

 年齢:7(17)

 職業:(学生)

 備考:国立工業高校三年


 妹:ミライ・アカツキ(暁未来)

 年齢:7(15)

 職業:(学生)

 備考:私立のお嬢様学校の中等部三年(jc)


 ちなみにかっこの中は前の世界でのことを表している、みんなどこか前の面影はそのままに容姿は少し変わっている、それ以前に若返ってるけどネ。両親の若い姿とかホントなんだこれ状態、一体誰得なんだろう。子供たち(俺ら)に至っては体が縮んで小学生に逆戻り。


 一体コレハ何事ナンダ?


 全員が若返ったのに伴って遺伝的特徴も変わっている、目鼻などの顔の造形の部分に限定すると若返ったこと以外には違和感はないが瞳の色と髪の色は日本人の身体的特徴(黒色)から大きく変化していた。目の色は家族みんながルビーのような赤色に髪の色は銀一色になってしまったが個人ごとに少々異なりがある、女性陣はさらさらとした絹糸のようなきれいな銀髪で、父親のは白に近い銀髪のオールバックで弟のは緑がかった銀髪で俺の髪は青がかった銀髪とそれぞれに個性があった。


 違和感が半端ない、具体的に言うと服装も相まって家族みんなでコスプレでもしてるみたいだ。


 まあ、うん、客観的に見てすごく痛々しい。


 まあ要約するとだ、見た目だとか年齢だとか世界観とかいろいろおかしいけど家族みんなが一緒にいられてよかったネ(白目)。


 ということだ。


 家族ってすげーわー、異世界にまで一緒に来ちゃうとか家族の力ってまじすげー......もうこれ何らかの呪いなんじゃねと錯覚するレベル?


 某かすかべの劇場版なら何度でも世界の危機を救える奇跡の力なのだ、しかし残念此れはフィクションではなくリアルだ現実は非常である



 家族一緒でよかったね、ではなくこれは何が起こっていてこれからの暮らしをどうするのかという人生計画が必要なのだ、生きて行くって大変。


「第一回暁家家族会議in異世界」


 イエ―イとおかしなテンションで家族会議を開催したのは次男のイザヨイ、周りのみんなも一人ハイテンションな馬鹿に影響されてかため息をつきながらも不満は見せず会議に参加する旨を見せた。


「はぁ、本当なら今頃予算会議だったのになぁ。何でこんな訳の分からない会議に参加させられてるんだろう」


 はいそこ、愚痴らない。


「現在暁家は正体不明の事態に陥ってます、目を覚ますと見知らぬ国で生活していたことになっておりこの状況を認識かつ共有できているのは今の所この5人だけです。ではまずこんな事態に陥った原因に心当たりがある人物はいないでしょうか?」


「何馬鹿なこと言ってんだバカヨイこんなおかしな事態に心当たり何てあるやつが、いる...わけが......」


 俺は途中で言葉を切ってしまった、なぜなら俺の視界の中にイザヨイの質問に対して明らかにおかしな態度になった人物が映り込んでしまったからだ。



 ちょっとミライちゃんお兄ちゃんとO・HA・NA・SIしようか。




 ♂♀




「なるほど、なるほど、つまりミライちゃんの話をまとめると昨日学校からの帰り道で白蛇を事故から助けたらその白蛇は神様でお礼をすると言われてその結果がこれと」


「いや~~お恥ずかしながら」


 イザヨイの放った一言に激しく狼狽した愚妹のミライちゃんを追及したところ彼女はいろいろとこの事件の元凶ぽい事を吐いた。


 我が妹ながらこの子の頭の中身が心配です。

 なんで照れてるんだろこの子、褒めてねーんだよ。


「何をやってるんだミライ!」


 そうだ親父この馬鹿をちゃんと叱ってやってくれ。


「事故だって!?もしミライちゃんが巻き込まれていたらどうしたんだ。自分の身を大切にしなきゃだめだろ!」


 だめだこの父親、そう言えば親馬鹿だった。


「そうよ、ミライちゃん」


 お母様!あなたならきっと信頼してもいいですよね。


「いつも言ってるでしょ、知らない人とはお話ししちゃいけませんって、お礼するなんていかにも怪しいじゃない」


 あれ、うちのお母さんってこんなに天然だったかな?家庭内ヒエラルキーに置いて大黒柱の父親を差し置いて頂点に立っているバリバリのギャリアウーマンなんだけどなぁ。


 もしかしてこの状況に混乱してるのか?


「そうだぞミライ!」


 イザヨイ《馬鹿》は黙ってろ、どうせろくなこと言わねーんだから。


「白蛇が喋る上に神様だって、どうして僕を呼ばなかったんだ!」




 娘のおかしな発言に対して、この対応である。


 だめだこの家族、俺がなんとかしないと……





「いま重要なのはこれからどうするかだろ。ミライちゃん元の世界には帰れるのかい?」


「いやー、多分無理っぽいかなぁー」


 現状ではどうやってこっちに来たかも、どうすれば元の場所に帰れるのか手段も手がかりもない状態だ、何をするにも当分は情報収集に時間を割かなければならないようだ。


「ミライは一ヶ月外出禁止だ」


「ッひゃい」


 親父が暫定的にミライちゃんに処分を下した、まだほとんど現状が分かったない状態だがミライちゃんに大人しくしておいてもらうのは正しい判断だと思う。


「そうなると暫くはこっち側で生活しなきゃならないのか。父さんそこらへんはどうなってるの?」


「うーむ、どうやらこっちの世界で生活は確立されているようだしそれに対応すれば問題はないだろうまあ多少は問題が発生するかもしれんがそれは仕方ない」


 俺の疑問に父さんは暫く考えてからそう結論を下した。


 今の俺たちの状況は一家まとめての異世界に転生した形だ、しかも俺たちはこの世界で今まで生活をしていたことになっているみたいだ。


 現状を正しく認識できているとは言えないが、大雑把にまとめるとそんな感じだ。


 イザヨイが言うにはこの世界に元々住んで居た俺たちに限りなく相似していた人に転生しただの、神様が俺たちがこの世界に元から暮らしていたように辻褄を合わせただのと色々と語ってくれたがどれも確証はないに等しく結局のところ真実は神のみぞ知るところとなった。



 そんなわけで、ぶっちゃけ俺たちには致命的なまでに知識が足りない。


 なぜだか今までこの世界で生活していたという事になっているのだが俺たちの主観ではこの世界にはさっき来たばかりという認識だ。


 不思議なことに今日までの薄っすらとしたこの世界の自分の記憶と必要最低限的な知識はあるが本当にただそれだけ、現状では正に首の皮一枚でつながっているようなものだった。


 それが実際どんな状態かといえば、この屋敷が自分たちの所有物であることはわかるのだがそこに勤めている使用人の名前が全くわからない、この会議もいきなり騒ぎ出した俺たち一家の事を心配する使用人達をみんな閉め出して急遽開いた程なのだ。




 そんな色々と致命的な状況ではあるにもかかわらず我が父親は問題無いと結論を下した、これが年長者の余裕かはたまた希望的観測なのか、


「確かに危機的状況ではある。だがだからどうした?時間がこれから全く無いわけではないし知ら無いならこれから学べば良い。出来ないなら此れからやれるようになれば良い。不安も心配も恐怖も動揺も生きているからこそ感じる感情だ、だがいいか生きているのなら前に進めるのだよ」


「なるほど、つまり時間稼ぎに徹して、時間を稼ぐということでFA(ファイナルアンサー)?」


「いや、父親の名台詞を潰すなよ」


 これにて第一回暁家家族会議in異世界終了である。



 突然起きた未知の事象、放り出された未開の地にて暁家改めアカツキ家はこれから起こる様々な苦難を家族で協力して乗り越えて行く事が出来るのであろうか、これからの生活の中で起こるであろう艱難辛苦を思い浮かべそんなことを思ってしまう俺なのであった、まる。




【過度な期待はしないでください】

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