第三話
9月12日 11時
ペンタゴンは世界最大のオフィスビルである。
上からみると四重の五角形に見え、一番外側の一辺の長さは280メートルにもなる。
エレベーター13基、エスカレーター19基、階段に至っては131箇所とまさに迷宮のようなビルだ。
ここに三日間ほぼ不眠不休の軍人たちがいた。
「後藤准将。なんとか終わりました 確認をお願いします。」
なんとも覇気のない軍人は今にも倒れそうである。
「………ご苦労だった。少し寝ておけ。」
「は、ありがとうございます。」
彼はそう言うと、後藤の目の前のソファーに倒れ込み夢の中に旅立ったのである。
普段なら許されるものではないが…
無理もない。三日間不眠不休で情報を集めたんだ 「ありがとう」
後藤は自分の部下たちに労いの言葉をかけ静かに部屋を出たのであった。
同時刻
きぃーーーーーーん
巨大な機体が滑走路に進入した。
全長48m 全幅56m 最大離陸重量21t
8発のジェットエンジンがこの巨体を飛ばすのに一役かっている。
この機体の名はB-52 ストラトフォートレス
正確にはRB-52Cといわれるこの機体は偵察用に作られた機体である。機体は誘導に従い指定された場所で止まる。がいつまで経っても搭乗員は降りてこない不信に思い整備員が機内に入るとそこには爆睡している搭乗員がいた。
彼らもまた三日間の偵察任務に奔走していた人たちである。
同時刻 ハワイ 真珠湾
ここハワイは世界的な観光スポットであるのと同時に日本海軍の本拠地がある巨大な軍港がある。
ここに七つある艦隊のうち二つの艦隊がいた。
一つは第7艦隊、一つは第3艦隊である。
第3艦隊は通常ロマ岬海軍基地にいるがとある任務のためハワイに訪れていた。
第3艦隊旗艦大鳳には日章旗がはためいていた。
同日 13時 白い館
軍が必死に情報を集める中、閣僚の面々は昼食をとっていた。それぞれ考え事をしながら。
伊部総理「日本は国外でやっていけるだろうか?」
赤城外務大臣「今後日本は外交が重要になるだろう。」
北川農林水産大臣「国外のものは食べれるかな?」
山崎厚生労働大臣「いつ娘の反抗期が終るかな?」
全員が食べ終わった頃、後藤が入室した。
「後藤くん、昼食は食べたかい?」
「ご心配にはおよびません。総理、軍の報告をまとめましたので報告させていただきます。」
「9月9日から我軍は人工衛星及び空軍による高高度偵察を行いました。まずは目の前のスクリーンにうつる写真を見てください。」
スクリーンに写ったのは中世ヨーロッパ頃の建造物だった。人や家の多さから町のようだ。
「ご覧いただいているのはβ大陸にある一つの町です。他の大陸にもいくつかの町がありました。
文明レベルは中世ですが一部の技術は二十世紀前半の技術と変わらないものもありました。
また、魔法のようなものも確認しています。
この技術は後々調査する予定です。が、どちらにしても技術レベルか二世紀程の差があるので我軍を脅かすものはないと思われます。」
後藤が言ったのは慢心でもなんでもない。
言うならば、帆船の戦艦vs超弩級戦艦 である。
勝負は火を見るより明らかである。
「次に環境ですが地形が大幅に変わったのと陸上生物に前にはなかったものもありました。
例えば、ゴブリンはサル並み以上の頭脳を持っていたり、ドラゴンがレプシロ機並みの速度が出ることが確認しています。」
「また、現在α大陸とβ大陸にて戦争が発生しています。他のC、D、Eでは特になにもなく平和です」
一通り後藤が言い終え一息つく。
「……戦争か…。」伊部が呟く。
「…魔法技術を知るチャンスではないだろうか?」
伊部の呟きにあえて後藤がこたえる。
「はい、戦争となれば大抵使えるものは使ってしまいます。魔法技術があるなら当然使うでしょう。
魔法を使った戦術もあるかもしれません。いずれにしても知っておいて損は絶対にありません。」
「となると…やはり現地派遣だろうな…」
これに難色を示した人がいた。石橋総務大臣である
「そんなことが世間に知られて見ろ、マスコミの良い餌食だ。それに仮に万が一現地人と接触したらどうする。得体の知れない病気がくるかも知れないし
戦闘になるかも知れないし…いずれにしても大問題だ。」
石橋の言うことはもっともだが今はそんなこと言ってる場合ではなかった。
結局、部隊派遣か決定したのである。
短くてすみません
次も日本です。