第十二話
9月18日 18時30分
記者会見場
プレスがぎゅうぎゅうに入っている記者会見場はちょうど9日前に「日本転移」が知られることになった記者会見場である。
この9日間政府はろくに情報を出さなかったので記者会見場にいる記者たちは言い知れぬ迫力がある。無論これには理由がある。
過去に日本は報道によって煽られた日本国民によって少なからず傾いたことがある。そのため政府は必要な情報以外は流さなかったのだ。その情報は国民を安心させるには充分だったが報道陣は
(政府は何を隠しているんだ。)とまるで自分達が正義、とばかりに情報を引き出そうとしていたが、しかし、情報は一向に出てこなかった。ヘリコプターで日本近海を飛ぼうとしてもAH-64アパッチなどの戦闘ヘリ部隊がそれを阻む。それでも強行突破しようものなら威嚇射撃をくらう。
(いつもならその程度だ。)そう一人思っているのはジャーナリストの井上 洋介である。
(普段ならその程度ですんだ。なのに、なぜ撃墜したんだ?)
彼の同僚が乗っていたヘリコプターは警告を無視し強行突破をしようとした。強行突破しやすいように生中継までして、
が、結果は撃墜。いや、正確にはヘリコプターのフロートに射撃をしてバランスを崩して強制着陸をしたのだが井上にとってそんなことはどうでも良かった。
(生中継しているのは軍も政府も知っているはずだ。わざわざ国民にとって不安を感じる選択をしたんだ?)
井上はふと隣の同僚を見る。
その顔には自信しかなかった。自分が政府にヘリを撃墜したのは誤りだったと認めさせてやる。と。
そんな同僚を見て井上は溜め息を飲み込む。
そこへ9日前と全く同じ順で閣僚が入ってくる。
井上は閣僚の顔を観察する。がどの閣僚も能面のように頑なに前を見ていた。
(俺達を見てない…どこを見てる?)
そして記者会見が始まる。
「吉田官房長官!!、民間機を軍が撃墜するなど前代未聞ですよ!!どう責任をとられるのですか?」
早速怒号のような質問が上がる。対して吉田は落ち着いた。
「ええ、ヘリは警告をしたにも関わらず無視をしました。これは敵対行為!! と、言われてもおかしくはないことであります。その上でペンタゴンでは強制着陸は正しい判断だったと認めます。」
これに食いつくのは撃墜されたヘリの仇をとらんとする記者たちである。
「強制着陸ではなく撃墜ですよ!!間違えないでください。」
「あなた方は我等の知る権利を害している。」
「この件につきましては後日また会見をします。」
やじがとぶなか強制的に締めくくる。
「次に異世界文明と接触についてです。」
これには記者のテンションがおかしくなる。
「接触は避けるんじゃなかったのか!!」
「未知の病原菌がきたらどうするのだ!!」
「公約を破った伊部内閣は解散しろ!!」
そんなことは意に介さず伊部はカメラに向かってしゃべる。
「今まで情報を最低限しか出さなかったのは要らぬ混乱や間違った情報が流れないようにするためでした。異世界に日本が転移して9日間、我等は血眼で異世界の情報を得ようと努力をしました。そして漸く今日、異世界文明に接触するだけの情報が集まりました。この事から伊部内閣は情報を開示してもいいだろうと判断いたしました。」
(テレビの向こう…日本国民に言っている)井上はそう感じた。
いつの間にか記者会見場を飛び交っていた怒号は鳴りを潜めていた。
「この記者会見ではどんな質問も受け付けます。我等が知りうることをお答えします。」
「「おおおおおお~ーーーー!!」」
「現地時間8時頃、第三艦隊戦闘部隊所属の重原子力ミサイル巡洋艦 阿蘇が未確認飛行物体を捕捉。8時30分頃、衛星が未確認飛行物体はドラゴンと断定。ドラゴンには騎乗している人おり服装から高貴な
人と予測されました。9時頃、ドラゴン第三艦隊に接触する可能性が高くなり警戒レベル3になりました。9時30分頃、なるべく接触は避けるB案が採用、実行にうつりました。12時30分頃、第三艦隊潜水艦部隊所属艦伊807が作戦を開始、ドラゴンの前で浮上し、5分間接触後、ドラゴンは去って行きました。なお、この作戦でわかったこと、またはこの作戦の前後でわかったことが多数あります。
大きなものをあげると。」ここで一旦息を整える。記者会見場は静寂に包まれ次の言葉を待つ。
「日本国民以外に日本語を話せる人を確認したこと
無人島を調査した結果地球の生態系とほぼ変わらないことがわかりました。菌も地球のものと変わらないものばかりです。
β大陸には少なくとも一つの国家があること。
その国には少なくとも高貴な人がいること。」
後藤がそう言い切ると赤城か口を開く。
「様々な情報を精査した結果、接触をしても混乱は少ないと内閣府て判断しました。閣僚会議で使節団を送ることを決定し、5時30分頃、使節団を乗せた「富士」が第三艦隊が布陣している場所に出発しました。」
「以上です。質問がある方は挙手をお願いします。」
後藤がそう言うと小学校の授業よろしく記者たちが勢いよくキレがよく手を挙げる。
「全日本科学技術クラブです。後藤准将にお聞きします。ミスリル剣は折れたとのことでしたが破片は残っていませんでしたか?」
「あったという報告があります。」
その言葉に記者は目を輝かせる。
「では、その破片から成分はわからないのですか?」
「現在、富嶽で輸送中でしてまだなんとも言えません。」
「全日本オカルトクラブであります。後藤准将に質問であります。ドラゴンは火をはきましたか?」
「伊807が接触したドラゴンが火をはいたという報告はありません。」
(なんでこんな質問ばかりなんだ!!)
後藤准将にきた質問の大半はこんな感じだった。
対して、伊部、赤城は
「伊部総理にお聞きします。相手国が戦争を仕掛けてきたらどう責任をとられるのですか?」
「赤城外務大臣にお聞きします。使節団に何かあった場合どうするのですか?」
とまぁ半分こんな訳のわからない質問だった。
後にこの記者会見を
伊部は
「喧嘩を吹っ掛けてくる中学生に囲まれた。」
赤城は
「虎の後ろの狐が棒で突っついてきた。」
後藤は
「オタクに囲まれててきとうな相槌をうってる感じだった。」
と語っている。
(この記者会見は仕組まれたな。)
そう思いながら井上は一人歩く。
(今回の記者会見で政府は自分達の存在を大きく見せようとし、それは成功した。当分は国民の大半は報道陣の煽りに乗らないだろう。が、)信号が赤になり井上は歩みを止める。
(どこか急ぎ過ぎていると思えるのは私だけだろうか?)信号が青になり、歩みを始める。
(………もっと正確な情報がいるな…。)
井上はそう思うやいなや電話をかける。
21時
??????
闇、そう言わしめるような暗い空間。
円形のテーブルには端末が埋め込まれていた。
ふと一つの光が広がると光はたちまち発生していった。
「見事にやられたな。」男性の渋い声が無人の部屋に響く。
「…あるつてによるとマホロバにやられたようだ。」今度は比較的若い声がする。
「国の狸が動いているという報告もある。」
「あの青二才に何ができる。」
次々、別の声が部屋に響く。その響きはまるで一つの音のようだった。
「今は潜め。時はいずれ来る。」
一つまた違う声が響く。その声は年期の深さを感じさせる声だった。
「…」
一つまた一つと光が消えていく。
後に残ったのは暗く冷たい空間だけだった。
不定期更新となっております。
次の更新予定は2月はじめ頃を予定しております。
誤字脱字があるかもしれません。すみません。
今後も是非ともよろしくお願いいたします。




