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プロローグ.恐ろしい場面を目撃してしまいました
知っていたら、扉を開けたりなんてしなかった。
そもそも、そのことを知っていたら、その部屋に近づきさえしなかった。
けれど、俺は知らなかったのだから仕方がない。
彼と彼女が、二人きりでその部屋にいたことをなんて。
そりゃあ確かに、普通なら俺の来訪を告げるはずの儀仗兵が無言だった……いや、そもそもその部屋の前にはいなかったのも、おかしいと言えばおかしい。
だからって、それまでに山ほどいる衛兵たちの誰か一人でも、注意を促してくれていたら!
魔王様はただいま密会中ですとか、言って止めてくれていたら!
そうすれば、俺はこんな気まずい思いをしなくてもよかったのだ。
誰かわかってほしい
部下であるはずの女性魔族に跪き
その上足蹴にされて恍惚としている
そんな魔王サマの姿を目撃してしまった
この俺の気まずさを!