寒帯と歓待
「え、リュウト。今なんて言ったの?良く聞こえなかったわ…」
「…いや、だからSOLが帰ってくる…ってお前知り合いか?」
リーヴァの驚く様子からしてそうだろう。そうとしか思えない。
逆に知り合いじゃなかったらこの反応は一体なんなんだろう。
「ま、まあそうね知り合いと言えば知り合いよ」
「もしかして…肉親だったりするのかな」
トリガーが的確な言葉でリーヴァを突き刺す。
「…久しぶりだな、リーヴァ」
リーヴァの後ろから低く、尚且つ威圧感のある声が聞こえる。
「げ、に、兄さん!?」
イグドラシルの制服に身を包み、俺より身長の高いこの男は、SOL。本名は本人以外知らない。
「兄さんねぇ…え!?兄さん!?ちょっと待て、今お前兄さんっつったか!?」
「はぁ…えぇそうよ…このSOL…だったかしら?この人は私の兄よ…全く、なんでここにいるのよ」
「可愛い妹がイグドラシルに来たと言うのでな。いてもたってもいられなくなったのだ」
「別に帰ってこなくても良いのに…」
リーヴァは額に手を当てながら呆れ顔でSOLを睨む。
SOLがリーヴァの兄貴って事は良く解った。第一、あいつに兄貴がいた事が驚きだ。
「…ところでよSOL。お前が戻ってきたって事は、何かしらあるんだろ」
「あぁ、デカいヤマを一つだけ…持ってきた」
「まーた愉快なモンぶら下げて来やがるなお前は」
「あぁ、ここから北の国で起こっている事件だ。なんでも生きたまま冷凍している倉庫が見つかったらしい」
「人体実験でも始めんのか…それとも人の体をコレクションすんのが趣味なのか…」
「おそらく前者だ。そして誘拐となると、何らかの組織が絡んでいるに違いない」
「…なんとなく話が読める。よし、久々に大人数で行こうぜ。組織ぐるみなら俺らの得意分野じゃねえか」
「ちょっと待てリュウト。…久々に組手でもしないか、最近デスクワーク詰めで体が鈍っている」
「上等だ、作戦結構前にいっちょやりますか!!」
俺たちは、目を輝かせながら地下階段を降りていった。
地下施設、魔宝使いの実力テストや研究などを行うために作られた施設。
主にドーム状になっておりとても広く、いくら暴れた所で壁に傷一つつかない。
「…トリガーさん、二人共ああなの?」
「うん、いつもあの二人はああだね。二人共すぐああやって目を合わせると組手をするんだ」
「…男って良く解らないわ…」
「そういう生き物だよ」
「おっし行くぞSOL、手加減はしねえからな!!」
「あぁ、こちらも本気で行く!!」
『こらぁー!二人共、組手って言ったでしょ!!何殺し合いする感じで始めてんのよ!!』
リーヴァの怒声がドーム内に響き渡る。
「うるせえよ、ちょっと待ってろ。お前の兄貴すぐにぶっ倒してやるから」
「大した自身だな、だがもう…間合いに入っているぞ」
「その間合いすら、俺の間合いだッ!!」
お互いなにもしていない様に見える。
だが俺とSOLは瞬時にお互いの魔宝を展開し、お互いに「斬撃した残像を残像で切っていた」。
俺は軽く飛び跳ねて一歩下がり一気に踏み込む。
SOLもそれに反応する様に素早く踏み込む。
「へっ、腕は落ちてねえみてえだな。SOL」
「お前も落ちてないな、安心したぞ」
「おし、じゃあちょい本気で一発打ち込む。それで倒れた方の負けだ。それでどうだ!?」
「面白い…行くぞ!!」
お互いの魔宝に力をこめる。一撃、その一撃に全てを込める。
まるでボスキャラか何かとの戦いだが、残念な事にこれはあくまで「組み手」である。
「「はぁあああっ!!」」
「…貴方達バカじゃないの!?バカの中のバカよ!なんなの一体!!仕事前にボロボロになるバカがどこのどの世界にいるのよ!!」
「今お前の目の前にいるだろ、仕事前に組み手でボロボロになるスーパーバカが」
「そうだ、組み手ですら本気になれない奴が一体何で本気になれると言うんだ」
「何もっともらしいこと言ってんのよ貴方達。第一そんなボロボロで何ができるって言うの?」
二人して顔を合わせて再びリーヴァに向ける。
「「…仕事…?」」
「ここはいつから小学校になったのかしら…やんちゃ盛りの生徒を持つ教師の気持ちが理解できたわ」
「そいつは良い経験だな、さて仕事に行こうぜ、こんな事やってたらいつまでも仕事ができない」
「…それは貴方達のせいなんだけど…?」
「よっしSOL、運転は任せたぜ。今回の任務は俺とSOL、リーヴァの三人で行く。トリガーとアリスには別のお仕事を頼む」
リーヴァの言葉を軽くさらっと受け流し俺は全員に指示を出す。
「別のお仕事って?」
「それは後で送っとく、とにかく俺達は出発だ。ヘリ出すぞヘリ」
「本当になんでもあるのねこの組織は…」
なんでもある、というのは語弊がある。
必要な物があるだけでなんでもあるわけではない。
ガレージにエレベーターで向かいSOLがヘリにエンジンをかける。
「SOL、お前運転できんのか?」
「余裕だ、俺はこれで帰ってきた」
「そりゃ頼もしいわ、よし、北国エリアに向けて出発だ」
「ん、どうしたリーヴァ」
「へ?だ、大丈夫よ…べ、別に高い所が怖いワケじゃないの。えぇ、断じて」
「お前高所恐怖症だったんだな。いい情報が手に入った」
「ジェット・コースターとか観覧車とか連れてくのやめてよ…」
「考えておこう」
…しかし、北国。いい思い出がねえな…。
昔任務で来た事があるがその任務内容のせいだ。
「おいSOL、なんでお前平然としてられんだよ」
「…過去にあった事などいちいち思い出していたら限りある時間がもったいないだろう」
「大人だなお前は、やれやれ」
「21にもなって大人じゃなかったらそれはそれで問題だがな」
「違いねぇ」
「ねぇリュウト、過去にあった事って…」
リーヴァがか細い声で俺の耳の間近に話かける。
多少のくすぐったさを覚えながらも俺はリーヴァの方を向く。
「…あんま興味本位で聞くようなモンじゃない。胸糞悪いだけだぞ」
「そう、まあ良いわ。それと、あと何時間くらいで着くの?」
「んー、そうだな…5、6時間くらいだろ。SOL」
「あぁ、大体な。所でリュウト。トリガー達に頼んだ別の依頼ってなんなんだ?」
「そりゃもう、イグドラシルにある兵器と言う兵器と、戦える人材の派遣だよ。なんてったってお相手は戦争大国。俺らだけじゃ暴れん坊共
は手に負えねえよ」
俺は背もたれにどっかりともたれ掛かり少しヘリの機体を揺らす。
「…人体実験なんて、何度もやるもんじゃねえぜ。戦争大国。今度こそお仕置きだ」
俺は、若干曇りかけた窓ガラスに息を吐きかけた。
「ってな訳で、ちょっと銃持って立ってるだけで良いの。後はなんかの物陰に隠れているだけで良いから」
「…すごいですね、イグドラシルの倉庫…戦争でも始めるつもりですかね」
「違うよアリスちゃん、これはあくまで脅し。本当の恐ろしさはこんなオモチャの鉄砲なんかじゃなくて魔宝使いにあるんだから」
「魔宝使い…ですか」
「うん、イグドラシルには、生まれつき魔宝使いの子や実験なんかで魔宝使いにされちゃった子を保護する事が義務付けられているんだ。
そしてその保護された魔宝使いに「戦闘するだけの技能と、意思があればいくつであろうと戦闘と自衛の参加が可能」となっているから、
お相手さんは「銃や兵器ばかり並べたハリボテ」とか言うけどあながち間違いじゃないんだ。だってここにあるライフルやマシンガン、リ
ボルバーやランチャーや戦車も、あくまで「フェイク」だからね」
「すごい組織なんですね、イグドラシルって!」
「そうだよ、私ですらここには頭が上がらないかな…あ、そこの子。ちょっと手伝ってーこっちこっち」
「トリガーさん、トリガーさんはなんでイグドラシルに?」
アリスが恐る恐るトリガーに尋ねるとトリガーは口に人差し指を沿わせる。
「…秘密だよ、まだね」
軽快な声で言うトリガーにアリスは少し恐怖を覚えた。
「…ん、寝ちゃってたわ…いまどの辺?」
「後数分で着くぞ、それとお前頼むから膝に頭乗せるのやめてくんね?お前の兄貴の殺意の波動が見える」
「へっ!?なっ!?」
「妹が膝枕されてる妹が膝枕されてる妹が膝枕されてるしかも身内の男に膝枕されてる…ぶつぶつ…」
「ほらな、お前の兄貴どんだけ妹想いなんだよ、想いが重てえよ」
「ごめんなさい、私乗り物に乗ると寝てしまうのよ」
「SOL、帰りの分の燃料あんのか?」
「あるぞ、あそこにたんまりとな」
「まさか…頂戴してくってか?」
「そのとおりだ、元々会う約束をしていたやつが何者かによって殺害された。燃料もあいつが持っていたが奪われたのかもしれないな」
とんでもない国だ、燃料戦争でもしてるのだろうか。
だとしても誰かを殺してまで奪う物か?だとしたら燃料のねの字も無いって事か。
「…所でリュウト、お前はさっき手加減をしたな」
「あ、バレてた?」
「フン、何が全力だ。手抜きが全力なのかお前は」
「どうだかね、だがアマテラスが暴れたらあんなボロドーム一瞬で消滅するぞ」
それは困る、とつぶやきSOLはヘリから梯子を垂らした。
「…この高さなら大丈夫だろう。降りるぞ」
「はいよ、さあ任務開始だ。早めに終わらせてボルシチでも食おうぜ」
「…うぉぉ…寒いな…星のきらめきが聞こえてきそうだぜ」
「そうね、本当に聞こえたらロマンチックだけど聞こえてるのは銃声ね…」
確かに、リーヴァの言うとおり聞こえているのは連続して聞こえる銃声のみだった。
当然だが雪が降っている。こんな中で戦争やってるなんて馬鹿げてる。
こんな中ではウォッカかなんか飲んで楽しく宴会やってりゃいいのに…ってのは御法度か。
俺未成年だから酒飲めえねし。
「んで俺らはどこに行けばいいんだ」
「ポイントは抑えてある。ここに俺たちの会うべき人間がいる」
「…そうかい。じゃあとっとと行っちまおうぜ。そろそろ寒くて耳がもげそうだ」
「すまないが、戦闘の行われていない市街地を進む。安心しろ、味方の領地だ」
「しゃあねえ、わざわざクッソ寒い中ロマンチックなお散歩と行きますか」
街の前に到着していたため、すぐに街の中央まで行く事が出来た。
噴水が凍り、アーチの様になっている。
そこに集まっていたのは厚着をした子供たちと一人の女性だった。
「…おいアンタら、ここは危ねぇんじゃねえのか?」
俺たちに気付いた子供数人が俺の所まで駆け寄ってきた。
俺を見て宇宙人でも見るかの様な視線で俺たちを見つめる。
むしろこちらからしたら、お前らの方が宇宙人だ。
ファーの付いたフードを脱いだ子供達は、皆同じ髪の色、瞳の色をしていた。
気持ちが悪くなる程同じだ。唯一の違いは、顔が少し違う程度。
そうか、この国の言葉で話さなきゃ通じないのか。
「あー、お前らどうしたんだ。ここは危ないんじゃないのか」
すると子供たちは、きょとんとした顔をしてお互いを見つめた。
「…あー、なんだ。戦争地帯だぞここ。お前らは大丈夫なのか?」
すると、先生と思われる女性が俺たちの方へと向かう。
よかった、この人は同じ色じゃない。
「あなたたちが…日本エリアの「イグドラシル」の方々ですか?」
「あぁ、そうだ。俺はリュウト・カガミだ。よろしく」
「エリィ・アーノルです」
「…この子供たちは?」
「…アルビノです。ただの」
エリィはためらいながらそう俺たちに告げた。
どう考えても嘘だ。アルビノとは、遺伝情報の欠如により起こる先天性の病気だが、髪だけではなく瞳の色まで同じだなんて、有り得無い。一人くらい黒い瞳の子がいても良いはずだ。それともわざと青い目の子供だけ集めているのか?
「…嘘つく相手くらい選んだらどうだ先生。俺達は人体実験殲滅のプロだぜ、その程度の嘘見分けがつかねえ訳がねえだろ」
「いえ、本当です…皆アルビノで、この街はアルビノの孤児を引き取っているのです」
「なんでまた、アルビノなんですか?」
リーヴァが尋ねると、エリィは両手を広げた。俺が話した時と顔色を変えて。
「アルビノは我々の宗教において神の使い、つまり天使と奉っております」
「…神様のお使いを大事にしない訳には行かない…か。…おいエリィとやら。…嘘つく相手選べっつったろ」
再びエリィは恐怖に顔を染めた。
嘘がばれる、殺られる。そう思ったのだろう。
「…俺は自分でも自分が寛大だと思っている。だがな、そんな俺でも腹の底が煮えくり返る事が二つある。それは大人だ。自分の地位や名声、遺産。そういった命とは代え様の無いモンばっか守ろうと必死になり、挙句の果てに子供を研究材料にする大人と…それに怯え黙って見ているしかねえ無能でクズの生きてる価値のねえ大人だ!!そして今のお前はその後し…あぶっ!!」
後者だ、そう言おうとした瞬間俺の後頭部をリーヴァが銃床で殴りつけてきた。
「そこまでにしておきなさい。何一人で盛り上がってるのよ」
「お前は恨めしくねえのかよ。なんの関係も無い子供が実験に使われてんだぞ?」
「アホね、あなたは。いくらエリィさんを怒鳴った所でこの子たちが実験に使われた事実に変わりはない。それに証拠が無いじゃない」
「あるぜ、証拠なら」
俺は立ち上がり、子供達を指さした。
「…アルビノの確率は1万~2万人に一人。ここにいるガキは見た感じ15人。こんな集まる訳ねえ。それにそこの。ちょっと手見せてみろ」
寄ってきた子供の手袋をはずし、リーヴァ達に見せつける。
「明らかにサイズがおかしいと思ったんだ。普通子供の手のデカさなんて大した事じゃない。それなのにあまりにも不釣りあいすぎる。この子の年齢が5歳くらいだとするとこの手は8,9歳の子の手だぜ。戦争かなんかで巻き込まれて「偶然右手を失なわない」限り誰かの手なんてくっつける訳ねえだろ」
「…確かに、どういう事なんですか?」
「…私たちは、見ているしかできなかったんです。最初は身寄りのない子供達を集めるだけの孤児院でした。ですが私達一般の教師の知らない所で、子供達を魔宝の実験動物にしようと言う計画がいつの間にか決定していたんです。最初は抵抗しました。ですが、やはり我々では子供達を護る事は出来ず…」
エリィは四つん這いになり、ぐっと雪を掴んだ。
子供達が寄り添い、背中などをなでている。
「…だから諦めて子供達を渡したのか」
「リュウト、やめなさい」
「死んでも護る覚悟すら無い奴が、護る護らないなんて口にすんじゃねえ!!」
「やめなさいッ!!」
「…おいガキども。お前らは俺が助ける。だが護らない。俺は…俺たちはお前らを助けはするが一切護らない。護るのは自分の役目だ。自
分の身のついでに、その先生。護ってやれ。お前らはただのガキじゃない。かっこいいガキなんだ」
「…おいリュウト。そろそろ行くぞ。目標地点で依頼主が待っている」
「じゃあなガキども。次会うときに一人でも減ってたら承知しねえぞ!!」
そう言い捨てて俺たちは街を出た。
「…この辺だな」
雪の積もった森を進み端末を取り出したSOLが呟いた。
「え、この辺でヘリでも来るのか?」
「いや、ここにだな…穴を開ける」
そう宣言すると先ほどは見えていなかったが、ゆっくりと見えた影響で姿を現した斧で雪の積もった地面に巨大な穴を開けた。
この斧こそSOLの魔宝「ミョルニル・ゼロ」。叩き切る事をメインにしており、それに特化させたシステムを実装している高性能の次世代型魔宝である。
その巨大な穴は、マンホールの穴をさらに大きく広げた、人があと4人は普通に入りそうな大きさだ。
「…相変わらずパワーだけは凄まじいな」
「御託は良い、入るぞ」
俺たちはその穴に身を投げた。
地面の中なので土を掘って行くのかと思ったが、流石にそれはなかった。
塹壕というのだろうか。採掘現場の様に木枠で止めてあり、ライトが吊るされている。
…ご丁寧に矢印まで書いてある。
「おい、本当に俺らのお仲間さんは大丈夫なんだろうな。まさか反政府軍設立したは良いけど戦力足りないよーとかだったらお前を問答無用でブチのめすぞ」
「安心しろ、この国の敵国がバックについている。民度はどうか知らんが金だけなら腐るほどある」
「…信用なるのか、それ」
「解らんが変に敵視されるよりはマシだろう。俺達だって一度は死ぬんだ」
俺たちは、黙ったままその矢印に従って通路を道なりに進んでいった。
道を通り抜けると、鉄でできた扉が勝手に開く。
「やぁ、待っていたよ。イグドラシルの諸君。まあまあ掛けてくれたまえ」
金髪の、いかにも「ボブ」とか「ジョニー」とか「マイケル」みたいな名前してそうな男が俺たちを迎えた。
こいつがリーダーか?しかし三人か…この厳重注意はなんなのかね本当。
「君たちを呼んだのは他でもない。僕たちの軍の協力をして欲しい」
「戦力は、どれくらいなんだ。まさか5000人に対して300人とかそんなふざけた事抜かす様だったらお前の脳天カチ割るぞ」
「リュウト、いきなり喧嘩腰で行くな。すまん、こいつは色々と問題があってな」
「いやいや、若くて元気が良いのはいいこと、助かるよ。それと少年。SOL君から話は少しは聞いているだろう。我々のバックには一国がついている。戦争しろと言われて即座に戦争できる戦闘員が多数いる。我が国の軍人よりも数は多い」
自分の国が嫌いとは、大変なこって。
それに自分の母国越えようと別の国から軍人引っ張ってくるなんて反抗期のガキかなんかか…。
「…はいはい、んで目的はなんなんだ?この国の偉い人達の頭を文字通り雁首揃えて持って来れば良いのか?」
「雁首は揃えなくてい。むしろ俺たちの国に「首を川辺に晒す」なんて狂気じみた習慣は無いよ」
「俺の国には親に反抗するのにお友達を連れてくるなんて素敵な文化はねえよ」
「はっはっは、面白いね。気に入ったよ君。俺たちの目的はこの国のトップ…の補佐の首だ」
「なんだ?ここいらの海辺に晒してアザラシの餌にでもしようってか?」
「いや、抑止力だ。…首を晒せばあいつも考えてくれるだろう」
「つーかよオッサン。その頭は何してんだ?」
「…金だ。あいつらは必要以上に金を奪う。お陰で俺らの住んでいた市街地は住民の3分の2は壊滅だ…そんな状況を見逃す訳には行かない」
SOLは壁にかけた腰を上げ不満そうな顔を男に向けた。
俺はそのSOLよりも先にイスを蹴飛ばして立ち上がる。
「お前は何したってんだ。お前の国じゃあ解決方法はドンパチかます事なのか?」
「…違う。同士達が集い意思を募った結果…こうなった」
男は目を細め、俺たちを睨んだ。
「…違わない、ドンパチ以外にできることがあるならなんでそれをやらなかった」
「やったさ!!俺は、俺達は何度もあいつに!!」
「何度話しても分かんねえから殴り込みってか?猿かお前は」
「なんだと!!」
「足りねえ脳みそいくら使ったってどうにかなる訳ねえだろオタンコナス!!SOL、リーヴァ。帰るぞ、アホらしい」
俺が二人に怒鳴りつけると部屋の隅にいた男たちが一斉に拳銃を向ける。
なんでこいつらは俺ら魔宝使いに対して拳銃を向けたがるんだ。
「SOL!!」
「応」
大昔から存在する「芯のいらないホッチキス」を思い出した。
男を壁に突き刺す。だがその体にはなにも刺さっていない。
否、貫通した男の肉が岩の壁に突き刺さったのだ。
「…良いかオッサン。俺らが動くのには正当な理由、及び正当な状況が必要だ。もしお前が俺らに対してこれ以上の発言、行動を起こす場合
は俺らも一切の遠慮はしない。ったく…くだらねえ事に時間使わせんじゃねよ…」
「…君たちはこれからどこへ行くんだ」
「…あ?帰るに決まってんだろ能無し」
「そうか」
男は黙って俯いたままだった。
「…どうするつもりなんだ、リュウト」
「以来は受けたからな。潰してやるよ、戦争大国…敵さんも潰してあいつらにも現実を叩き込む。それだけだ」
俺は指を鳴らして地面を強く蹴った。
…潰してやるよ、こんな国。くだらねえ国を潰す為に俺はわざわざアマテラスを取り込んだんだ…。
しかし、寒い。寒すぎて鼻水が凍ってきた。
「さて、お仕事しましょうか」
俺は、大きく振ったアマテラスをこの国でもっとも高い所へ向けた。




