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魔宝使いのアマテラス  作者: 蔵田らく
12/13

再開する再会

「…今回のお仕事、なんだったかな…」

ミリアとマリアの教育係となってから早数日。

飲み込みは早く、そこまで念入りに教える必要はない様だ。

「お兄ちゃん!今日は何するの⁉︎」

「そろそろ、作戦ですかね」

二人から期待の目線を向けられる。

俺はこれから、ちょっとした調査に行かなければならんのだ。よって、今日の研修兼授業は、こうだ。

「…いや、お前ら。今日は自習だ。俺以外に暇そうな魔宝使いに話を聞いてみろ。為になるかも知れないぞ。後でレポートにまとめて提出する事。いいな」

「えー…今日はお兄ちゃんと一緒じゃないの〜?」

「…俺は、ちょっと用事があってな。紙はアルーノから貰え。サボったら今日のおやつは無しだ」

「「えー」」

「ほんと仲良いなお前ら。…おやつを抜かれたくなければ死ぬ気でレポートを書くんだ。良いな」

「はーい!」

「わかりました。文字数の上限はありますか?」

「…そうだな。可能な限り、A4用紙オモテ面に纏めてくれ。どうしてもって時は裏面使って良いぞ。ちなみにここには魔宝使いでは無い社員や従業員もいる。魔宝使いのスタッフは皆胸にバッジをつけてる。これで判断して質問する事。良いな?」

「わかったー!」

「では、あまりお兄さんの邪魔をしてもいけませんので。行きましょうか。ミリア」

「うん、いこいこ!」

マリアがミリアの手を引いてその場を去る。

…やっと、落ち着いて調査が出来そうだな。この前の一件から、少し調査に滞りが出ていた。

例の赤い線の魔宝。

そして、あの自称サディスト男とあの少女の関連性。調べたい事は山程ある。…とりあえず、あいつの所に行くしか無いか…。



「と、言うわけで!」

「リーヴァさん。是非インタビューを」

「おやつの為に!」

「…お、おやつ?」

「…えと、聞く事をメモに纏めてあるから…っと」

「私が纏めました。こう見えてミリアは誰かいないとまともに喋ることもできないので」

「ふふ、良いわよ。私で良ければお話を聞くわ。そうね、お茶でもしない?奢るわよ」

「わーい!」

イグドラシル内部、カフェテリア。

研究室での研究員や情報処理班の班員などが挙って休憩に集まる憩いの場所。

そんな中で、銀髪の少女はケーキを頬張っていた。

「…すいません、ケーキまでご馳走になってしまって」

「良いのよ、気にしないで。…所で、聞きたい事って?」

「はい。ミリア」

「まひょーふはいにひゃっへ」

「食事中に話しかけた私が馬鹿でした。謝りますので飲み込んでから話してください」

「…んぐっ」

咀嚼していたケーキを紅茶で流し込み、頬についたクリームなど御構い無しにミリアは筆箱から鉛筆を取り出した。

「…えっと。まず、魔宝使いになって嬉しかった事。嫌な事。…その、嫌な事は答えなくても大丈夫!」

「ミリア、頬にクリームが…」

「あ、ほんとだ!えへへ…」

呆れを一周して、逆に微笑ましく感じたリーヴァは仕方ない、という表情をして

「…そうね、まず嫌な事から。…二人とも知ってるかしら。魔宝使いは、赤ちゃんが産めないのよ」

「…え?」

思わず驚愕して、ミリアは鉛筆を机に落とす。

「…な、なんで?大人になったら結婚して、パパとママと…赤ちゃんで…え…あれ?」

「…ちょっと、難しい話だったかしらね。…その、人として…少し幸せを持っていかれたわ」

「…ご、ごめんなさい…。ミリア、そんな事知らなくて…ごめんなさい…たたかないで…」

「…ミリア、落ち着いてください。心拍数が上がっています」

「ちょ、大丈夫?」

「大丈夫です。ちょっとした発作みたいな物です。…少しすれば。ミリア、深呼吸を」

「…う、うん…ふ…ふぅう…」

震えながらも、ミリアは深呼吸をした。

マリアの差し出された紅茶を一口飲むと、ぎこちない笑顔をリーヴァに見せた。

「…そ、その。…楽しかったお話。して良いかしら」

「…た、楽しいお話?…聞きたい。ミリアは楽しいお話…大好き」

「そうね。私、昔からそんなにご飯が食べられなかったの。…ちょっと病気でね。ずーっと病気で入院しててね」

「…ご病気…だったのですか?」

「えぇ、そうよ。…家族は、皆で大騒ぎしたわ。お金の話や勉強の話、人間関係の話ばかり。…外で遊びたかった私は…経緯はちょっと怖いお話になるから内緒だけど、魔宝使いになったわ」

口の前に人差し指を立てて突き出し、「秘密」の合図を送る。

ミリアは、じっとリーヴァの顔を見つめた。

「楽しかった事は、そうね。この足で、沢山外を走り回った事かしらね。野山も駆け回ったわ。山の中でお友達も沢山出来たの。…うーん、なんて言うべきか…自由、が手に入ったかしらね」

「なるほど…じゆう…っと…他には他には⁉︎」

「そうね、ここの皆と出会えた事ね。もう貴方達は私達とお友達よ?」

「友…達…!よくわかんないけど、すごい!」

「…ほっ」

「…お友達ができた…っと」

「こんな所かしら。…どう?参考になった?」

「うん!すごく!」

「はい、良い意見の提供を。どうもありがとうございました」

「良いのよ。またいらっしゃい」



「…ごめんね、マリア」

「…いえ、謝るのは私です。ミリアの心を知っていながらこんな事になるなど…妹…いえ、魔宝失格です」

「…じゃあ!今日はどっちも悪い!喧嘩両成敗…じゃ、ダメかな?お姉ちゃんの我儘…」

「ミリアがそれで良いなら」

「…むぅ…」

「…すいません…訂正を。そうですね。今回は両成敗、と言う事で」

「うん!」


森奥の小屋…と言うには少し巨大な家。

ここは、俺が育った場所でもある。

アマテラスと融合した後、俺はすぐさまここに移され、魔宝使いのいろは、世間の常識、普通の勉強にテーブルマナー。…そう、ここには、俺の人生の先生兼母親がわりの人が住んでいる。

門を開けると、すぐに子供達がやって来た。

残念なことに、この子達は大人の事情に巻き込まれ魔宝使いとならざるを得なかった子供達である。

無垢な笑顔、純粋な瞳。…見ているだけで胸が痛くなる。

「リュウト兄ちゃんだー!」

「久しぶりー!」

「ね、遊ぼー遊ぼー!」

「おい、俺が先だぞー!」

「…まあまあ。待ってくれお前ら。先生いるか?」

「うん!呼んでくる!」

…懐かしい園舎。

昔は…ずっと隅っこにいたな。

…魔宝使いになる、なんて…自分で言っておいて、結局魔宝使いになったって事実は受け入れられなくて…いっつも落ち込んでたっけな。

反動からか拒食症にもなって…あ、来たな。

子供達に引かれて現れたのは、和服に身を包んだ、一人の女性だった。

名前は「ミサキ・ヴァリアント」。簪がわりにキセルを突き刺している所が特徴だ。

「おいおい引っ張るな。一つしかないんだ。取れたらどうする」

「…よ、久しぶりだな」

「おぉ、お前か。無駄にでかくなったな」

「老けたなぁ…そろそろ還暦か?」

「はっ、私は37。まだまだ現役だぞ?…っと。立ち話もなんだ。入れ。茶ぐらい出すぞ」


中へと案内される。

何も変わっていない。何ひとつ。

古い木造の板が、踏むたびに少しだけ軋む音を鳴らす。窓硝子から覗く森の木々も、懐かしい。

古い木の扉を開けると、一室に入る。

…食卓、だな。ここで良く皆で飯を食ったもんだ。


「おい、お前達。宿題はやったか?明日の授業で使うぞ」

「あっ!やっべ!」

「今からやろうよ!」

「うん!そうしよう!」

「…元気な子供だな」

「まあな。…寿命以外で死ぬ事の無い彼らだ。…寿命が尽きるまで…普通の生活をさせてやりたいんだ」

「…俺の時はそんなこと言わなかっただろ。…じゃ、なかった。…本題に移ろう。この魔宝…黒い本体に赤いラインが入っている。…見たことがあるか?」

「…あぁ、ある。…私の所にも…良く来るからな」

すぅっと、息を吸って…師匠、ミサキはまた口を開いた。



「…少し、話をするとしよう」

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