第3話 怨み方
2週間後、私は気持ちを切り替えてドラマ撮影に集中した。ドラマの内容は一言でいうと、怨み。私はそういう類のドラマは初めてだった。私は恨みをはらす役。
「…難しい…。」
考えている私に監督さんが言った。
「原田さんは怨まれたことはある?」
「怨まれたことですか?…あまりないと思います。」
「んーでもね、人気No.1女優の原田さんなら怨まれることもあるんじゃない?」
「まさか。それと真子でいいですよ。」
「そうか。そういえばお父さんは元気?」
「ええ。」
「僕もお父さんには取材などでお世話になったよ。」
撮影が始まるため私は現場に向かった。
今撮影しているシーンは、詐欺にあった女性が実は詐欺師だったというシーン。
“詐欺をしているのは…あなたのようね。”
“ふっ、ばれたのなら仕方がない。教えてあげる。これ見て。”
“何よ?”
“私の裏の顔。恐ろしいと思わない?”
“ならもっと恐ろしくしてあげようか?”
私はナイフで女を刺す。
カットがかかった。
「お疲れ様です原田さん。」
「お疲れ。」
彼女は今撮影していた女優の熊谷麻美。パパの元妻と奇しくも同姓同名。彼女を見ているとパパの知っている熊谷麻美と似ている部分がありそうな感じがした。
「私、飲み物買ってきます。何が良いですか?」
「アクエリアスお願い。」
麻美ちゃんは外に出て行った。
怨まれる要素はないが私が怨みそう。まるで麻美ちゃんは、パパが知っている熊谷麻美を象徴しているかのようだった。
「買ってきました。」
「ありがとう。麻美ちゃんって今何歳?」
「20歳です。」
あの時と同じ年だ。
「若いのね。…あなたは見た感じ本当に怨まれそうな人ね。」
「はい。私は今も学生なんですけど、大学の人間から怨まれている気はします。」
「もしかして彼氏いる?」
「はい。新人アナウンサーとの熱愛報道、あれ本当のことです。」
「麻美ちゃん、私の知り合いに似ているわ。」
「その人と一緒にしないでくださいね。」
「当然でしょ。」
まあ、パパには関係ないことか。
それから撮影が進むたびにパパのことが気になって仕方がなかった。
「どうした真子?」
「何でもない…。」
「何でもあるだろ。言え。」
「…パパ、死なないよね?」
「まだそんな話をしているのか?言っておくが俺はお前が忘れたころに死ぬ。覚えておけ。」
パパは家でお茶を飲みながら言った。
「聞いたぞ真子。熊谷麻美という女優がいるんだって?」
「それがどうしたの?」
「関係はないけどね。まあ頑張れ。」
私は仕事があるため外に出て行った。
私と仁美でカフェで仕事の打ち合わせをしていた。
「撮影の方はどうですか?」
「順調よ。でも怨む役なんて仕事でないから難しくてね。」
「弱音ですか?珍しいですね。」
「違うわ。それより仁美は怨まれることとかある?」
「私はありますよ。原田さんのマネージャーをしていますから、他のマネージャーから怨まれたりしているんですよ。」
「仁美も大変なのね。」
仁美は表情を薄めた。
「加守田さん、原田さんのこと怨んでいましたよ。」
え?
「どういうこと?」
「加守田さんは若い頃から原田さんが羨ましかったそうです。ずっとNo.1女優だったのが気に入らなかったそうですよ。加守田さんのマネージャーさんから聞きました。」
「そう。」
仁美は間を開けてから言った。
「気を付けてください。」 続く




