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ー捌ー

お茶の間の白黒テレビのモニターでニュースアナウンサーの女性がこう告げる。

「今回の選挙で皇議員を中心にこの国を統治されることに決定いたしました。皇将軍がどんな日本をお作りになられるのか期待が高まっています。・・・・・」



目を開ける。視界が曇ってあまりよく見えないが、自分が明るい空間にいることは分かった。寝返りをうとうとしても体が思うように動かない。仕方なく、寝転んだまま頭をごろんとして、見回してみると、壁も天井もすべてが白だった。隣の台にリンゴの入った籠が置かれており、それだけが赤色を発す。

(みんなに会いに行こう…)

なんとなく、ミラハウスのみんなが待っているような気がした。早くいかなきゃ、と思ってもやっぱり思うように動けない。

「くっ…」

火事の中に飛び込んだのだから、怪我をしていないほうがおかしいのだろう。無理に起き上がって傷口に響く。寝ていたベッドに手をつき、ゆっくり起きあがる。起き上がるのに時間がかかった。そして床に足を延ばし置いてあったスリッパを履き、一歩ずつ引きずるように歩く。もっと倒れそうになるものだと思っていた。なんとなく動きづらいものの、そこまで歩くことに支障はなかった。扉に向かい、ドアノブに手を差し伸べる。

「あれっ!?」

何回やっても開かない。

「どういうこと…?」

何故、自分は閉じこめられているのだろうか。理由など分からなかった。だが、様子がおかしいことに気づいた。先ほどから物音ひとつ聞こえないのだ。普通なら話し声や足音が聞こえるだろう。それに窓もない。出入りできるのは斜め右前の扉だけ。ただの病室ではないようだ。ここは、隔離病棟なのだろうか。なぜ自分がここに入れられなきゃ行けないのだろう。

妙に明るい部屋とは裏腹に、世界でたった一人ぼっちになってしまったように心細くなる。その時、扉に人影が写った。


ガチャ。誰かが鍵を開ける。開いた扉から入ってきたのは、あの少年だった。


「・・・」

顔をあげると寝ているはずの少女がベッドにいない。白いベッドが寂しくそこにあるだけであった。厳しい顔をして少年は歩み寄る。


ガッ!!

ネックウォーマーを後ろから引っ張られる。扉と反対側の壁に頭を思いっきりぶつけた。追い詰められたかと思うと、すかさず首もとにフルーツナイフを突きつけられる。慈がスムーズにこんなことができたのは、昔から習っていた格闘技のおかげだろうか。

「ここはどこ?教えろ!じゃないと、これで刺す!!みんなどこ!?」

俄かに襟元を掴む左手が震える。普通なら両手が空いている状態なので逃げ出すこともできるのに少年は抵抗しない。そして重い口を開いた。

「あの家の人たちは、多分助からないよ。すごい火事だったから死んでると思う…」

「!!」

慈がナイフを少年の顔ギリギリの壁に突き刺す。

「なんであんたにそんなことわかんのよ!?早く教えろ!!」

だが少年は声も出さず怯えもせず、厳しい顔をしていた。ただ哀しく目の前の少女を見つめる。

「な…何よ、その目は…!次は刺すわよ、私は本気なんだから!!」

慈は、震える右腕を無理やり振り上げる。刃先は少年の瞳に向かい勢いよく落ちていく。

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