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参拾陸

たったの30分間の話だった。けど志茉にとっては両親の話を聞けた貴重な時だった。しかも、美津は父の妹、つまり血縁のある叔母だったのだ。

「ありがとうございました。…赤の他人に貴重なお話を…」

志茉はできる限り、美津を見ないようにした。手が震える。そんな志茉の手を優しく包んで美津はふっと微笑んだ。

「……」

「不思議…兄夫婦にはね、3人の子どもがいたの。こころに似たあなたに姪の面影を重ねてしまうのかしら…」

「……」

「あのっ…!」

何か言いたげな志茉よりも先に、つい奏多のほうが口を出す。

「この子は本当は佐藤ゆき…いっ…」

志茉は奏多の手の皮膚をつねる。

「なんでもないです。すいません。では、これで失礼させて頂きます。ありがとうございました。」

志茉は泣きそうだった。本当なら今すぐに、自分が姪の"佐藤 (ゆき)"だと打ち明けて叔母の美津の胸に飛び込みたかった。皇から逃げて一緒に暮らせたら…そう望めば皇は黙っていないだろう。星者は家を離れて皇に尽くさなくてはならない。それを拒めば、秘密裏に暗殺される…。美津が平和に暮らしているのは、三兄弟が美津のことを覚えていないから…。

(さようなら、叔母さん…)

俯く志茉、そっと肩を支える奏多。

「貴方が私の姪でもそうでなくても私は貴方のことずっと待っていますよー!」

志茉の後ろで美津の声が聞こえた。志茉は一瞬立ち止まり、振り返らずに、また歩き出した。何十歩、何百歩も歩いて、奏多が振り返った時には丘はもう遠くだった。

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