素足の登校
雪菜と夏希は学校へと向かう坂道を
並んで歩いた。
駅から学校までのイチョウの街路樹は
すっかり葉を落とし、
枝には、昨夜降った雪が、朝日にキラキラ
かがやいてまぶしい…
吐く息は白く、冷たく凍った空気を
とかすかのようにたちのぼる。
雪菜が通う高校は古くからある女子高で、
建物が古く、カトリック系の学校独特の
重々しい雰囲気があった。
雪菜はそんな校舎を気にいっていた。
夏希は市内の新しい共学の高校に
行きたがっていたが、雪菜と一緒ならと
この女子高にしたのだ。
寒さから押しだまっていたまま歩いて二人
だが、夏希が雪菜の足元に気づき
話しかけた。
「雪菜‼スクールソックスは?まじ
素足じゃん?
手袋にコートマフラーはどうしたの。
電車にわすれてきたの?」
雪菜は、笑いながら、
「電車の中が暑くて、スクールバッグに
押し込んじゃったんだ。」
「今日は、授業は家庭科だけだし、
あとホームルームでしょう。
早く帰れるから、寒くないよー」
夏希は、雪菜の少し赤らんだ顔を見て
「風邪ひいて、熱でもあるんじゃないの?」
「え〜マジ⁉寒くないの?コートは?
そういえば着てなかったよね。」
「コートは昨日、転んで汚れたから、
着てこなかったよ。」
雪菜は白い氷るような息を吐きながら、
夏希に話した。
「今朝は、ものすごく寒いんですけど…」
夏希は震える声で、肩をまるめた。
雪菜が歩いた靴あとは、冷たく凍りつき、
青い冷気がゆらめいていた。