洋館の記憶フラッシュバック(2)
吹雪がいちだんと激しさを増し
古い洋館はギシギシと音をたて
今にも崩れてしまいそうだ。
雪菜は、おばあさんの熱いスープを
一口飲んだ。
凍った身体が、じわじわととけるように
身体にしみわたっていった。
指先、足先と感覚がもどってきた。
「おじいさん、暖炉にマキを入れて、
部屋をもっと温かくしましょう。
雪ちゃんをお迎えに山からあの子が
きてるから…」
おばあさんが、悲しくつぶやいた。
その声をかき消すかのように、
窓ガラスを雪が激しくたたく音は
しだいに大きくなっていった。
木の枝のシルエットが黒く怪しげに
洋館につかみかる。
暖炉の火が燃えあがる。
雪菜はふと、暖炉のそばにかけられた
真っ赤な手ぶくろとマフラーに目が、
とまった。
雪菜ははっとした。
そして、凍った記憶が、
とけるかのように思い出しはじめた。
この赤い手ぶくろとマフラーは、
朝、学校へいくとき、出会った女の子のだ。
暖炉の上には、女の子の写真が飾ってある。
この女の子が雪ちゃんなんだ。
吹雪の中、帰宅するとき、
わたしは、国道で事故に…
わたしの体は、小さな体になった。
わたしは、死んだのだろうか?
雪菜は混乱した。
窓の外では、
風が悲しくすすり泣くような音をだす。
おじいさんが、窓の厚いカーテンを
開け、静かな声だけど強くつぶやいた。
「ゆきちゃんは、この里で生きる。
だから、山へ連れていってはいけない。」
窓ガラスが、割れ、風にカーテンが揺れる。
吹雪が窓から、吹きこむ。
雪菜の手に、冷たく凍った手が触れた。
この冷たい手は、
お母さん‼
雪菜のお母さんは、
雪菜が生まれてすぐ亡くなったと
聞かされていた。
吹雪が一瞬弱まった。
美しい女性が微笑む。
「雪菜、わたしのかわいい雪菜
迎えにきたわ。」
手をひかれ、雪菜の体がふわっと
浮き上がる。
そのとき、雪菜の手を引く
あたたかい手を感じた。
おばあさんの手が、雪菜を抱きしめる。
暖炉の火が風にあおられ、
高く高く燃え上がった。
その炎は激しくなり、洋館全体を
包みこんでいく。
雪菜は気を失った。