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親友の夏希
「雪菜‼おはよう」
夏希の元気な声が小さな駅の待合室に響く。
「どうしたの?ほっぺが真っ赤だよ。
走ってきたの?」
夏希は雪菜の村で唯一の同級生電車で、
親友だ。
二人で、となり町の高校まで通っている。
雪菜は夏希のあっけらかんとした底ぬけの
明るさにいつも圧倒されっぱなし
駅近くの商店街の食堂を経営している
両親のもとで育ったためか、
農家を営む雪菜の家とは育った環境が
違ってたが、不思議と気があった。
学校でも同じくクラスでいつも一緒だった。
夏希と電車に乗り、並んで座った。
雪菜はさっき洋館のペンションに消えた
女の子の話を夏希にした。
いつも明るく笑いとばす、夏希が、
今日は雪菜の話を真剣な表情で聞いていた。
「あそこは、一軒だけ古い洋館の別荘に
冬の間だけ、老夫婦がきて、
春には東京へ帰っていくって、
食堂に来たお客さんが不思議がってたよ。」
と夏希が話した。
「じゅあ、あの女の子はお孫さんかな?」
電車はとなり町の駅に着いた。
いつも通り、学校で授業を受け、
帰るころには、
雪菜は朝のことはすっかり忘れていた。