初雪
初雪が降った朝は一面の銀世界、
この世の全ての汚れを一夜にして、
ピュアに変える。
青空がどこまでも深く広がり、
太陽がまぶしい。
いつもなら、スキー客で賑わうこの村も、
震災の影響か、今年静かだ。
雪菜は村から遠く離れた高校へ通う高校二年生。
今朝も駅までの道を電車に間に合うように
足早に歩いた。
今朝は寒さでなかなかお布団からでられなかった。
起きるのが遅くなってしまったのだ。
駅までの道は、いつもなら国道沿いの歩道を
歩くだが、電車に遅れそうだ。
ペンションや別荘が立ち並ぶ通りを
通れば近道、雪菜は近道をすることにした。
折からの不景気とスキー客離れで、
その一帯は、空き家や廃墟になり、
この夏の大雨で土砂崩れが起きて、
通行止め、立ち入り禁止になっていた。
雪菜は子どもころから、
別荘やペンションのあるここに、
よく遊びにきていた。
都会からきたスキー客に憧れがあった。
最新流行の派手な服に化粧、
田舎にはない輝きがそこにあった。
都会からきた子どもたちと、雪だるまや
かまくらを作り夕暮れまで遊んだ。
田舎にない珍しいクッキーやチョコに
ケーキを食べれて夢のようだった。
今はもうそこは、人の気配さえない。
凍りついたような廃墟に、
いきなりどさっと大きな音がひびいた。
木の枝に積もった雪が落ちたのだ。
カラスがはばたく音に雪菜は驚いた。
振り返ると、赤いマフラーをして、
赤い長靴をはいた女の子が走り去る
後ろ姿があった。
朽ちた洋館のペンションの裏手に
走り去って消えた。
見かけない子だった。
山からの冷たい風が雪菜のほほにあたる。
背筋がゾクゾクした。
雪菜は駅へと走った。