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軍神再臨 ―阿弖流為(アテルイ)を救えなかった男の、千年後の守護―

かつて、救いたかった友がいた。守りたかった約束があった。

平安の軍神・坂上田村麻呂。彼が抱き続けた「千年の無念」は、令和を生きる一人の少年の血の中で眠っていた。


平和な現代に突如として現れる「不条理」という名の暴力。

それに対峙したとき、温厚な大学生の顔は、弱きを救い悪を砕く『大魔神』の憤怒へと変貌する。


「……何故、笑う。その命、酒一献にも足らぬというのか」


隕鉄の太刀が闇を切り裂き、物理法則を超えた『気』が炸裂する。

これは、過去と現在、二つの魂が「誰かを守る」ために戦う、魂の再生物語である。


【第1話】

「ったく……明日から前期試験で、孫は一応理系、工学部でけっこう忙しいのに、なんで今日なの」

歩道橋の階段を下りながら、俺は背中のザックの重みを直した。中には、さっき爺さまから手渡されたばかりの桐箱が入っている。中身は古びた巻物、『目録』だ。

早くに父母を亡くした俺にとって、祖父母は親代わりだった。特に爺さまは、温厚で分厚い手をした、日だまりのような人だ。武術の稽古も、強くなりたいというよりは、俺が相手をすると爺さまが本当に嬉しそうにするから、その顔が見たくて毎日続けてきただけのことだった。

「『目録』ねぇ……」

独りごちる。正直、実感がわかない。流派名すら曖昧な、爺さま流の古流柔術。

ふと、さっきの爺さまの言葉が脳裏をよぎった。

「あの嘉納治五郎師範が、」爺様が大山館長、初代宗道臣と共によく口にする人の名であった。「あれは、突出した真の教育者であるとともに傑出した武術家であり「道」の理をも知る求導者でもあった。道は、皆が歩くからこその道。武の矛と盾は、根は同じでありながら顔が違うように性根も異なる人々が同じように歩く『道』と同じ」。爺さまは、お茶を啜りながら遠い目をして言ったた。「勝敗を競い楽しむスポーツとしてはありえぬ、受け身という「負けた状態」から始まる自他共栄の道そのもの。武術である以上負けては術として無意味。、剥き出しのいくさの技術を柔の道としてまとめ上げた治五郎師範の思い・・・」

「……理系大学生にいくさの技術と『柔の道』ね。単位の方がよっぽど大事なんですが

信号待ちの交差点。スマホを取り出す。

画面には、またイスラエルでのテロや、進展のない拉致問題のニュースが並んでいる。マスコミの優等生的なコメントが、ザックの中の巻物と同じくらい、今の自分には遠い世界の出来事に思えた。

「正義なき力は暴力なり、力なき正義は無力なり、か……」爺さまがよく口にしていた大山館長の言葉。その「力」の端くれを、自分は継いでしまったのだろうか。

その時だった。

(ヒヒィィィンッ……!)

一瞬、耳の奥で、令和の街中ではありえない「馬のいななき」が聞こえた。

同時に、視界の端でトラックが制御を失い、こちらへ突っ込んでくるのが見えた。

「あ――」

身体が動かない。いや、理オタ脳が「衝突までの秒数」を計算するより早く、ザックの中の『目録』が熱を持った気がした。

講道館柔道の嘉納治五郎師範が、何故初段という言葉を使ったかわかるかの?「守 破 離」の守があらかた終わったという意味 一人で稽古しても間違った方に行く事は少ないという意味じゃよ。阿手にはしるかぎりの技は伝えた。大山師範の如く薩摩示現流の太刀であろうと守るべき者は、相討ちになろうと必ず守る境地に立たんとするか、盛平翁 塩田剛三の如く神人合一を見んとするか、」少し誇らしげとも悲しげともとれる響き「斬り結ぶ太刀の先こそ地獄なれ 一歩踏み込めば 後は極楽」小さな声であった。ん? 嵐??馬のイナナキ  かすかに不快なものを身体が勝手に避けるかたちで 目に入ったのは風船?子供 ダンプが。。。

田村麻呂は黒毛を攻めに攻めていた。今でいう淀川沿い枚方の近くか「何故 殺す。何故『約』を違える。阿弖流為よ母令よ生きてくれ。汝ら二人であれば、この太刀を渡せば十重二十重の囲みも切り逃れる事も•••」に深く静かな瞳を持つ漢の顔がうかんだ。微笑んでいるようにみえる だが透明に光る母礼の顔もうかんだ。姿勢が崩れた。荒れる川面が

「荒れる川面」が視界を覆い、田村麻呂の意識が現代の「アスファルト」へと叩きつけられる。

――生きてくれ、阿弖流為。

その悲痛な叫びが、現代のブレーキ音と重なった。

主人公の脳裏で、お祖父様の「斬り結ぶ太刀の先こそ地獄なれ……」という独白がリフレインする。

次の瞬間、ダンプの鉄塊がすぐそばを通り過ぎ、爆風のような衝撃が襲う。

転がった子供を抱きかかえ、立ち上がった少年の瞳は、もはや濁った黒ではなかった。

「……。ここは、どこの戦場いくさばだ」

透き通るような、それでいて深いあおの瞳。

助かったはずの子供が、その眼差しに触れた瞬間、泣くことさえ忘れて硬直する。

彼の背後には、荒れ狂う淀川を駆ける黒毛の軍馬と、千年の無念を纏ったまま「軍神」の幻影が、陽炎のように立ち上っていた。

これは・・・、アテルイの母御前が『都とは命の少なき場所にそうろう』とつぶやいていたのを思い出していた。都よりさらに人は多いが、人以外の命は更に少ない風景。命を食らうことのみの空間。母親と思しき若い女性が、子供を抱きしめていた。『母さん、あのアメリカの人が抱っこしてくれた』・・・。

てってて、 う〜さぶぅ 温かいものが顔をなぞっていった。うわぁ〜ウマぁ? 温かい鼻息が顔にかかった、寒いだけで痛みもしびれも感じられなかった。どうやら知らないうちに受け身をとっていたらしい。アっ、あの子は、ダンプは?? 雲間から月がのぞいた。水面に映る自分と思しき姿。なにこれ『俺ってハニワくん?埴輪人形??』身に覚えのない衣装、博物館でみた埴輪像か、小さい頃父のコレクションビデオで観た 大魔神?という古い特撮映画の巨人像と同じいでたち。また馬が鼻を擦り寄せてきた。よしよし でも、でっかいいなお前、馬の鞍の脇から何かが落ちた。やや重い、袋の中 金属のあたる音がした。二振りの太刀、一方は太く厚く長く、もう一方はやや細身ながら剛柔を感じさせる太刀。ん 蕨手刀だっけ、図鑑で見た東北出土の太刀と似てるけど、蕨手刀よりはるかに長く大きく、、、大きさの割に軽いな、チタン系の合金か、月が輝いた、太刀が深く黒い輝きをました、こりゃ隕鉄を鍛造したのかな、、、

田村麻呂は立っていた、電柱にぶつかったダンプから30代前後の男が、おりてきた『あ、ごめんごめん』ヘラヘラ笑いながら言った。こやつササ(酒)を噛んでおるのか、ごく僅かであったが熟した柿のような匂いを感じ取っていた。田村麻呂の腹に熱が宿った、牛車か輿の類であろうが、はるかに大きい、戦場では人とさして背丈の変わらぬ馬でも、人を容易に踏み殺す。この者のあやつる?輿ははるかに大きく馬よりもスピードがあった。それを、子供の命が、危うかったものをヘラヘラと、、、腹に溜まった熱が、全身で暴れるようだった『我は武人、なれど命を、人の命を戯れに触ったことなどない』腹の底からせりあがってくる熱が、血管を焼き、稀代の武人、力の権化としての武神が立ち現れたようであった。理系オタ脳が、眼前の光景、異常な数値を認識しようとして足掻いていた。ダンプの男は、ヘラヘラとした薄笑いを浮かべたまま固まっていた。男の股から、じわりと黒い染みが広がる。強烈なアンモニア臭。アセトアルデヒド臭と混じり合い、鼻をつく不快な匂い、他の命には頓着しないが自身の「生」には執着するモノの匂い。


【解説イメージ】『大魔神』――それは昭和の特撮映画に登場する、憤怒の巨神だ。

普段は穏やかな表情の石像だが、悪人が弱者を虐げ、その祈りが届いたとき、顔を腕で拭うようにして憤怒の形相へと変貌する。圧倒的な武力で悪を文字通り「踏み潰す」その姿は、今の自分に宿る「力」のイメージに重なった。


その声は、自分の喉から出たものとは思えないほど低く、地鳴りのように響いた。

工学的な音響解析など無意味だ。これは、魂を直接揺さぶる「圧」そのものだった。

ダンプの男は、ヘラヘラとした薄汚い笑みを浮かべたまま、固まっていた。

男の股の間から、じわりと黒い染みが広がる。

強烈なアンモニア臭。

田村麻呂の意識が、碧い瞳の奥で低く唸った。

「……何故、笑う」

「ひ、ひっ……!? な、なんだ、その眼は……!?」

男は腰を抜かし、アスファルトに這いつくばった。

彼には見えているはずだ。

街灯の逆光を背に立ち尽くす、博物館の埴輪とも、特撮映画の『大魔神』とも違う、圧倒的な憤怒の権現が。

慈悲深い菩薩の顔が、一瞬にして夜を切り裂く獅子の相へと変わる、あの静かなる爆発が。

「馬より速きクロガネの塊を操りながら、その心は獣以下か。……このわらしの命、お主の腐った酒一献にも足らぬというのか」

田村麻呂の右手が、無意識に腰の太刀――隕鉄の重みを持つ一振りをもとめて伸びる。

今の俺(田村麻呂)にとって、これは殺生ではない。

「不条理」という名の病を、一太刀で断つだけの「作業」だ。

「や、やめろ……! 悪かった、金なら払う! 警察には――」

男の言葉が、空虚な風となって消える。

都の連中と同じだ。命の重さを、薄っぺらな約定ルールや金子で計ろうとする。

その「力なき正義」の正義という名の傲慢が、アテルイを、モレを、そして令和の拉致被害者たちを、今この瞬間も殺し続けている。

俺の足が、アスファルトを「発勁」の動きで捉えた。運動エネルギーと位置エネルギーの合算プラスアルファ、爆発的な意力が発せられた。

我は、武人、なれど戯れに人を傷つけたことは無い。まして女子供に手をあげるなど犬畜生にも劣る。怒り、純粋な怒りと蔑み。許さぬ、許さぬ。生命を生命をなんと思っているのか。間違いなく稀代の武人、武神ともたたえられるものだけが発しうる『中国拳法にいう「気」』本人が覚えぬうちの発剄であった。ふれる必要もない、野生動物であればとっさに身を縮め避けうるであろうが、生命を、、自ら得たものでない誰かが加工した生命を喰らうことのみに慣れた者には、避けるすべもない。ダンプの男は半ば正気をうしなった呆けた表情をうかべ、アンモニア臭とともに股間に染みを拡げているだけであった。

碧い目の田村麻呂が額に手を当て少しくよろめいたようであった。 思い出した、渡さねば、あの二人に太刀を、阿弖流為の母とその一族 モレの一族を守りさえすれば、あの二人なら難なく道を開き東北、彼の地にもどるであろう。

渡さねば、守らねば、、

う〜あたま痛あ 気持ち悪〜 輝は、

男の目に映っていたのは、もはや人間ではなかった。かつて古い映画で見た、虐げられた人々の祈りに応えて立ち上がる憤怒の巨神――『大魔神』。その石像が、カチリと音を立てて怒りの相へ変わる瞬間の、逃げ場のない絶望感。それが今、この少年の碧い瞳に宿っていた。

「……渡さねば。守らねば……」

千年前の悲願が、輝の喉を借りて漏れ出す。

だが、急激な意識の混濁とともに、碧い輝きが瞳から消えていく。

「う、あ……っ……。頭痛ずつうが……気持ち悪……」

膝を突き、激しい眩暈に襲われる輝。

目の前には、廃人のように座り込み、自らの尿の海で震えるダンプの男。

周囲には、事故の音を聞きつけて集まってきた野次馬たちの足音と、遠くから近づくサイレンの音。

輝の指先は、いつの間にか握っていた「蕨手刀」の柄から離れ、現代の安っぽいアスファルトに触れる。

(輝……阿弖流為……モレ……)

混濁する意識の中で、誰かの名前を呼ぶ声が聞こえた。

爺さまが言っていた「守破離」の、まだ「守」の入り口に立ったばかりの自分が、とんでもない「力」の扉を開けてしまったことだけは、理解できた。

救急車の赤い回転灯が、夜の街を染めていく。

「……前期試験、……受けられるかな、おれ……」

遠のく意識の中で、輝は場違いな心配をしながら、深い闇に沈んでいった

誰かが俺を呼ぶ声がした。

「おい、しっかりしろ! 君、名前は!?」

駆け寄ってきた警察官か、それとも救急隊員か。

ぼやける視界の隅で、俺は自分の学生証がアスファルトに落ちているのを見た。

てる

田村麻呂の、低く重い呟きが脳を揺らす。

千年前、救えなかった「テル」という名の友。

そして今、目の前に我と共にいる、「テル」という名の少年から青年にうつりつつある者。

運命の歯車か、いかなる理か、不条理とも思える加速を感じた。……輝。阿弖流為……モレ……

田村麻呂の、低く重い呟きが脳を揺らす。輝は少し頭をもたげた。電柱に衝突して停まっているトラック、左側は大きく半球状に凹んでいる。『あれは、僕がやったのか??』少し頭を巡らすと風船をかかえる子供と立ちつくす女性の姿が、目に入った。『よかった。坊、もう風船話すんじゃないよ。』輝の意識は落ちた。左手が痙攣するように動き太刀の一つに触れた。『渡さねば、渡さねば。守らねば、阿弖流為の母を一族を母礼の一族を』田村麻呂の意識が立ち上がったのか。『君、大丈夫か』サラリーマン風の眼鏡の人物が駆け寄った。『早く救急車呼んで・・・』眼鏡を外して眼を擦った。碧い目もさることながら、今時の大学生風の姿に重なって神像の如き姿が映ったような気がしたのだ。眼鏡の人物に軽く頭を下げると左手に太刀を持った姿は立ち去っていった。


【第2話】

「救急車は、」「ガイシャは、、、」救急隊員と警察官が入り混じって働いていた。「酒飲み運転のダンプが突っ込んできて、子供をはねそうになったのは確かですが、子供は無事で、運転手も無傷です。」

「ただ運転手は内臓にも脳にも損傷なさそうなのですが、何も喋らないというか喋れない状態です。ショックによる記憶喪失でもこうは、ならないとドクターが首を捻っています。」「あと鑑識の連中が言うには、電柱に衝突した破損はわかるが、左側の破損がわからない、どうしたらこういう壊れ方をするのか・・・」と悩んでます。

「子供を助けてダンプに撥ねられた可能性の高い青年は?」年嵩の刑事と思しき人物が声を発した。「いや、それが、碧い目の軍人だったという方と、今風の大学生みたいだったという方とおられて・・・」「あ、それは大丈夫みたいだな、学生証が落ちてた。森屋輝、ほう〜T工大の学生さんね。」「でさっきの刀は?」「それも、、、サイズからいくと銃刀法違反なのですが、考古学の遺品科美術品みたいなデザインで、妙なのは、刃がないのですよ。あとから刃引きした風でもなく、エッジは鋭いのですが、人が触れただけでは、切れません。」、、、

「その刀 引き取らせていただいてええですか?」後ろから声がした。背筋の伸びた恰幅の良い翁であった。「あ、森屋先生!」「この方なら大丈夫、署でも護身術、逮捕術の教示をいただいている。」「ということは、この学生証、森屋輝君は、お孫さんですか」「はい、孫ですな。」「お孫さんはどちらに、、」「まあ、今時の若いものなので、少しはめでも外しておるのか、戻ったら連絡させますで」輝の祖父であった。

道場に戻り一通り稽古を終え。門人達に「今日は、掃除はいいので、今日は、これまで」と伝え帰らせた。「お孫さん早く連絡くれるといいですね。」との声とともに門人達は、帰っていった。

門人が全て帰ったのを確認して、蝋燭を立て、道場の真ん中に座した。「もう出てきたらどうじゃ」道場の隅に人影とも取れる影がいくつか、あらわれたように思えた。沈黙、座したまま人を圧すのに慣れた者の風であったが、翁には素知らぬ風であった。「相変わらず無粋よのう、汝らこそ雅の極みにおるはずではないのか。」返事の代わりに針のようなものが、何が塗ってあるのか、かすかではあるが禍々しい光が、いく筋も飛んだ。鉄扇、無骨な黒い骨に美しい白を持つ団扇が開かれていた。「通じぬよ」翁はつぶやいた。隅の暗がりに頭を向けた。「八瀬童子の者はおらぬようじゃの」「・・・」「八瀬童子は、どれほど藤氏の血が濃かろうと、帝を守り帝のために働く」「なれど帝の外戚であろうと外祖父であろうと藤氏の声では動かぬ道理」「八瀬童子とは、わしも争いとうない」「これで存分にやれるの」「どうした出てこぬのか」輝が見たことのない祖父であった。怒り、冷たく熱い思い、打ち掛かってくるもの全てを滅しさる狂気に近い光。

「名を呼ばれねば出てこぬのか。養蜂の王子の裔か、百済の王の裔と呼ばれねば、出てこぬのか」「どうした、この太刀が欲しくないのか」

「草薙の太刀は今どこにあるのか・・・」

「主らの方が詳しかろうが。本来、草薙の太刀は三振で一柱。この太刀が草薙の太刀の和魂、荒御魂、幸御魂のうちの一振りであることを。」「知られたくないのであろうが、草薙剣のまことの持ち主を、草薙剣が払うのは、民草ではなくて、、藤である事を知られたくないのであろうが!」「ヤマトタケルの名をいただいた皇子たち、平氏・源氏の先駆けとなった王子達を滅したのは、父である帝ではなく汝らであろう!!汝らと汝らより先に大陸より渡ってきた者共が、鳥と化してまで、帝のもと、父の元に戻りたかった皇子達を畿外に滅したのであろうが!!かつて、百済のため忠を尽くし勇を振るった鬼室福信を弑したように。」、、「鬼室福信は武官に過ぎぬ、文官とも同列に座れぬ下賤の者、それが王たるものを蔑ろにしたのだぞ、当たり前と語る要もない。」暗いというより冷たい汚水を感じさせる声が返した。

「怖いか、妬ましいか、出てこい我を殺して太刀を奪うがよい。」音もせぬ影が八つ取り囲んだ。謡に似た呪文のような声、同時の拍子、相打ち前提の八つの太刀が振り下ろされた。「哀れな、秦の者共も誑かしたか。」八人とも向かいにいる者の太刀に真っ向断ち割られこときれていた。さらに影が舞った。左手に太刀を持ったまま翁が舞った。古代の神事を知るものが観たら禹歩うほともみえる舞であった。太刀傷はなし。全ての者が、頚骨を、あるいは肩を砕かれ膝を砕かれたうえ頚骨を砕かれていた。「これほどの技を持つ者を殺させるのか」「殺させておいて、ウヌは出てこぬのか」

「物部の呪と技に加え、母礼の技も併せ持つ、ものの前に出るほど愚かではないは」

「フン 阿呆が、これは、本来ヒトがヒトであるところと一つになる技よ。民草を蔑み、その民草から奪うことしかせぬウヌらには、幾世代重ねようと使えぬ・みえぬ技ではあるがの。」

翁の身体が傾ぎ、燭台を倒した。虫の息であった「薬殺、暗殺は、藤のものどもの得手であったの」蝋燭の火が床にひろがり炎となっていった。

輝自身はやや細身、なで肩でピアノでも弾きそうな掌であったが、田村麻呂の拳と化し真っ直ぐに膻中の急所へと向かっていた。『やめろオッサン殺しちまうぞ!』輝の意識が浮き上がってきたとともに確実に肋を砕いた手応え、『ウチともアテともいう、毎日稽古すれば胸側の肋と同時に背中側の肋も砕ける』祖父の言葉を思い出していた。この爺さんなんちゅうえげつないことを年端もいかぬ孫に、しかも嬉しそうにいうかな・・・と思ったことを思い出していた。とっさに軌道をずらしたので折れた骨が心臓に刺さりはしなかったが、間違いなく肺には刺さっているはずであった。嫌な手応えを輝は噛みしめていた」

野卑たオスの集団。『美人のおねえちゃん彼氏とばっかり楽しまずに俺達にもお裾分け〜』下卑た声、カップルの男性は大学生ぐらいであろうか切り整えた髪型、きれいな姿勢、歩いても上下しない肩、剣道の有段者と見えた『やめろ暴力は』

『ひょー剣道部長さん こわいよ〜剣道三倍段〜〜、でもオレっちには』車の奥から人影が立った身長は180を超え体重も100キロ弱か、しなやかな感じは空手、それもパワー空手を学んだものであることを伺わせた、対して八相の構え 下段に取った青年の姿には相当の稽古を感じさせるものである。取り囲む連中のなかから瓶が飛んだ。打ち払われ砕ける瓶、テキーラを思わせるアルコール臭 ひゃー火踊りの祭り〜始まり、始まり〜〜着火したジッポーのライターが投げられた、女性の悲鳴、燃える顔を振りながら彼女を守らんとする姿、無慈悲に巨体から振り込まれるローキック、顔面へ向かう突き、ありゃ茶帯レベルか緑帯くらいで逃げ出したか、性根を見透かされて道場におれなくなったクチだな、と、半覚醒ではあるが妙に冷静な輝の意識。切なる悲鳴に田村麻呂の意識がかった。「許してはおらぬ戦場の習いとはいえ、略奪暴行は許した覚えはない!……たわむれに人を傷つけたことも無い。まして女子供に手をあげるなど、犬畜生にも劣る」

輝の口から漏れ出たのは、現代の大学生が使うはずのない、重厚で峻烈な武人の響き。

プレステ遊びに興じてようとしていた仲間の内にありながら、巨漢の空手使いは、目の前の「なで肩の少年」から放たれる、物理的な圧を伴う殺気に完全に呑まれていた。

「ひ、ひぃっ……! な、なんだお前、その目は……!」

碧い瞳。

暗がりで発光しているかのようなその双眸に見据えられ、100キロ近い巨躯が引けていた。

彼らの背後に停まった高級車の中で、恐怖に顔を歪めるカップルの女性。

そして、火を点けられ、熱さにのたうちながらも彼女を庇おうとする剣道の青年。

田村麻呂の意識が、輝の右拳に「熱」を凝縮させた。

「許さぬ。……生命いのちを、何と思っている」

空気が爆ぜた。

物理的に触れる必要さえなかった。

祖父が「アテ」とも「とおし」ともいうと言った「透過勁とうかけい」の一種か、田村麻呂が家伝の技を磨くうち身につけ「戦場の技」として振るった不可視の衝撃――「気」が、巨漢の胸板を直撃する。

『やめろおっさん、殺しちまうぞ!』

輝の現代人的意識が、内側から悲鳴を上げる。

だが、拳は止まらない。

膻中だんちゅうの急所を、目にも留まらぬ速さの拳が貫く。

バキリ、と嫌な手応え。

胸側の肋骨が砕け、その衝撃が背中側の骨までをも同時に粉砕する。

「が、はっ……」

巨漢は声も出せず、白目を剥いて崩れ落ちた。

とっさに輝の意識が軌道を数ミリずらしたおかげで、折れた骨が心臓を直撃することだけは免れたが、肺は確実に損傷している。

「……汚らわしい」

田村麻呂は、吐き捨てるようにそう言うと、手にした「蕨手刀」を桐の箱に収め、夜の闇へと歩き出そうとした。背後では、警察のサイレンと、遠くに燃え盛る道場の煙が、夜空を赤く染め始めていた。

「やめろ、暴力は! 両方とも、警察を呼ぶぞ! !」野次馬の声


輝の拳が、空気を切る音を発した時、「これで輝もその手では、人を打てぬようになったのと」爺様は、嬉しそうであった。

物理的な破壊力以上に、その「一撃」には、藤氏が築き上げてきた「言葉による呪」を内側から粉砕するような、根源的な力が宿っていた。

影から音がした。『毒も進んだもの、無味無臭、肌からも吸収される。いかな剛のものも神経毒ではどうしようもあるまい。』

救急車の音、パトカーの声、「急げ、太刀だけで良い」「後は、捨てていく」、「部下の遺骸は・・・」一瞬怒りに近い仄めきがゆらめいた。「直接 儂らが事情を知らぬ警官どもに捕まらぬ限り、警察・消防などどうとでもなる。捨ておけ。」

もう一つの音がした。

「森屋も、これで絶えたか」

「後は八瀬童子やせどうじか」

「八瀬童子はみかどを押さえておれば、何もせぬ。何もできぬ。」

崩れ落ちる祖父の、薄れゆく意識。

祖父の身体が燭台を倒し、燭台の下にあるものを押すように床に伏していった。

「……汚らわしい、討つほどの討つほどの者でも無かったか」

田村麻呂は、吐き捨てるようにそう言うと、手にした太刀を桐箱に収めた。怯える狂犬の群れに狂気が取り付いた。「相手は一人だ!」「みんなでやっちまえ」鉄パイプ、中にはご丁寧に釘を植えたバットを持つものもいた。輝の意識が戻った、「何だこりゃ、赤軍派の時代!?!う〜ん革マル派だっけ。さっきのオッサンはどこよ。田村麻呂の意識は同じ身体にありながら、少し離れたところから別の身体を見る感じで観ていた。血走った眼 吊り上がった口吻 飛び散る涎、

ウワ汚ったね。輝の身体が反応していた。合気の技と観る者もあれば、少林寺拳法の柔法と観るものもあるかもしれない。一人静かに無人の野を歩んでいるかのような動きであった。田村麻呂は、「この者・・・」「母礼の技に似ておる。母礼と試した時の事を思い出していた。「良いのか技を見せても」田村麻呂は驚いた。まだ武術の流派というものは確立しておらず。技は、武人の各家に伝わるもので他家の者に見せたりはしないのが、常識であった。「我らの武技は、害獣から身を守り、理不尽な暴力から同胞を守るためのもの。我らの武技は我らの共有財産、母礼は若いものに武技の手ほどきをする役も兼ねております。」踊るような手の内、足の運びであった、それでいて負けぬ。田村麻呂をしてもいつまで戦っても勝てる見込みが見えない技であった。パトカーの群れがやってきて狂犬の群れを包囲した。夜の闇へと歩き出そうとしていた輝もその身柄を拘束された。一つの身体に二つの精神の負担があったのか、パトカーの中から眠り続けていた。

背後では、燃え続ける道場の煙が、夜空を赤く染め始めていた。

隣り合う制服警官の話し声。

「おい、この学生……例の学生証の『森屋輝』みたいだが。さっきの現場の惨状は何だ?」

「ダンプを素手で凹ませたのかぁ、二十人を超える半グレを一人で……しかも無傷。本当なら化け物ですよ」

眠り続ける輝の瞳が、一瞬だけ碧く、そして黒く明滅する。

【精神世界:燃える淀川のほとり】

第2話:精神の境界線 ―バロム・クロスと軍神の義―】

パトカーの硬い座席の感触が消え、輝の意識は深い闇、あるいは燃えるような夕映えの淀川よどがわの河川敷へと投げ出された。

「……う、あ……。ここは、どこだ? 取調室じゃないのか?」

顔を上げると、そこには一頭の巨大な黒駒と、岩のように泰然と佇む武人の姿があった。

博物館の埴輪が命を得て、戦場の血と硝煙を纏ったような圧倒的な存在感。その瞳は、鏡を見るまでもなく今の自分と同じ**「碧色あお」**に輝いている。

「……目覚めたか、テルよ。お主の身体、暫し借り受けていた。無礼を許せ」

重低音の響きが、空気ではなく魂を直接揺らす。輝は思わず後ずさった。

「借りた……? あんたが、さっきの『オッサン』か。あのダンプを凹ませて、半グレをなぎ倒した……」

脳裏に、自分の手が、自分の声が、自分ではない何かに支配されていた記憶がフラッシュバックする。

工学的な合理性だけでは説明のつかない「合体」。輝はこめかみを押さえ、呆然と呟いた。

「……何これ。要は、『超人バロム・1』状態ってこと? 健一と猛がバロム・クロスして一人になるみたいに、俺とあんたが混ざり合って、あのバケモノみたいな力が出たのかよ……」

「……ばろむ……わん? 健一……? お主の語る言霊は解せぬが、我とお主の魂が、あの事故を機に一つの器に宿ったのは事実のようだな」

田村麻呂は、不思議そうに眉をひそめつつも、静かに頷いた。

「我は坂上田村麻呂。かつてこの地で、救えなかった友……阿弖流為アテルイとの約束を果たすため、時を超えて喚ばれたようだ。見事なる母礼の技、お主の内に流れる『まつろはぬものどもの血』、そしてその名。……お主こそ、我が呼ばれた理由なのだ」

「田村麻呂……。教科書の『征夷大将軍』が、なんで俺の中に……。」

「翁か、森屋の翁、……もう少し早く気づいておれば、」田村麻呂が独りごちた。

「かつてこの地で、救えなかった友……阿弖流為アテルイを、母礼を、むざむざ奪われてしまった。テルの名を持ち、古き武人 物部守屋の名を継ぐ者。百姓のもちたる国であるこの国の真の姿を知る者の裔よ。我と共に歩まぬか。力を合わせてくれぬか」

「ヤマトの英雄 田村麻呂……。征夷大将軍! 何で俺なの? 大体 同居の時は気持ち悪いの我慢すれば生活していけっけど、俺が一人アンタの身体に入る可能性だってあるでしょ、その時どうやってアンタの時代で生きていけるの? 俺の時代の方が、生活は楽だけど アンタだけが俺の身体にいる時に試験になったらどうするの?てか 明日というか、もう今日、試験で、、大学の工学部は、高校並みの時間割で必須の単位落としたら大変なんだよ〜だいたい一コマだけのためにバカ遠い教養のキャンパスまで行かなきゃならなくなるし。てかそれどころじゃないんだ! 爺さまはどうした!? 道場が燃えてるのが見えたんだ!」

輝の叫びに、精神世界の川面が激しく波打つ。

田村麻呂の表情が、一瞬、深い悲哀に染まった。「古の武人である物部守屋の名を継ぐ者であれば、むざ討たれる事はないと思いたいが、草薙の御太刀と共に生方しれずに感じれる。翁は、自ら火を放ち、影へと消えられたか。……が、テルよ、今は悲しんでいる時か。」

「何それ、征夷大将軍の次は、物部氏って?」「知らぬのか??」「そりゃ物部氏は、教科書で読んだ事あるし、うちの苗字ちょっと変わってるなと思ったことはあるけど」「父と母は、何処に?」「父さんは関西の女子大で数学の先生していたけど、小さい時に交通事故で二人同時に逝ってしまったって 爺ちゃん言ってたけど」「何も知らぬのか・・・」

「何も知らぬのか……」

田村麻呂のその一言には、落胆というよりは、あまりにも過酷な宿命の糸を、何も持たずに手繰らされていたテルへの深い憐憫が混じっていた。

精神世界の淀川のせせらぎが、一瞬、激しい滝の音のように響く。

「……信じられん。あの物部の正統が、ただの『一学生』として、浮世のことわりに埋もれていたとは」

「一学生で何が悪いんだよ! 交通事故って……。俺はただ、爺ちゃんに引き取られて、普通に勉強して、たまに道場の掃除して……。父さんも母さんも、顔だって写真でしか知らないんだぞ!」

輝の叫びが、夕闇の空を震わせる。

かつて、巨大な古墳を築き、山を穿ち、水を治めることで「国」そのものを設計した古代豪族 物部一族の末裔。両親の事故死すら、本当に「事故」だったのかという疑念が、輝の脳の隅で、毒の霧のように広がり始めた。

「……テルよ。お主の父母が、真に不慮の事故で果てたと思うか? 血の汚れの影に隠れ、この国を『言霊』の呪で縛り続けてきた者ども、目障りな血脈を『無かったこと』にしてきた者たちが、黙って物部の流れを見逃すと思うか?」

「やめろ……。それ以上は、俺の頭じゃ計算できない……!」

輝は、耳を塞ぐように蹲った。

単位。教養キャンパスとの往復。土木に必須の構造計算。

そんな平穏な数式の中に、奪われた誉、追いやられた者の血の歴史など、一行も記されていなかった。

「物部守屋は、蘇我の軍勢に敗れた折、その身を『鳥』に変えて飛び去ったという伝承がある。……そして森屋の翁殿は、その場所を、思いを、血脈を今日まで守り続けてこられたのだ」

田村麻呂が、重厚な甲冑を鳴らして輝の前に跪いた。

碧い瞳が、迷える少年の視線と真っ直ぐにぶつかる。

「草薙の御太刀みたちと共に、爺殿は消えられた。……奴らは、それを欲しておる。物部の血と、草薙の荒魂あらみたま和魂にぎみたま幸霊さきみたま。三振り一体の御神刀、「風」「水」「火」を司る太刀を「土」と「木」を司る者が持てば、それが合わされば、奴らが千年に渡り築き上げてきた『偽りの正義』に基づく世が、土台から崩れることを恐れているのだ」

「……だから、俺を捕まえようとしてるのか、、その証拠は、、、」

「目覚めよ、テル。扉の向こうで、何やら気配がする。」

病室の白い天井を見つめながら、輝の指先は、枕元に無造作に置かれた古びた「巻物」に触れていた。桐箱から太刀は消え、看護師も医師も「そんなものは最初から無かった」と無表情に繰り返す。その不自然な表情が、輝に危機感を抱かせた。

(……あいつら、隠蔽するつもりだ。俺からすべてを奪うのか)

「……テルよ、その巻物を開いてみよ」

脳内に響く田村麻呂の声。輝は震える手で巻物を紐解いた。

そこには、墨書きの文字、技を表す絵に混じって、幾何学的で奇妙な記号が並んでいた。

「これ……文字なのか? 記号というより、構造図パースに見えるところもあるし……」

その配列に規則性を見出す。

田村麻呂が、輝の視界を借りて低く唸った。

「……輝らは「神代文字」と呼んでおるのか、一部しか読めぬが、これは母礼モレの一族と東北に逃れた得た物部の一族の歴史とともに、彼らを守る「神」について書かれておるような、、、森屋の技と、母礼の技……その源流が一つであることも納得できる。そして、この図の意図するところは……」

「……伊勢神宮の式年遷宮の時に聞いたことがある。古殿地の地下にある『心の御柱』と同じタイプ。地表の建造物の真下……。そこにあるもう一つの『空間』を指しているようにも見える」

輝の脳内で、巻物の記述が明確な構造として三次元モデルとして再構築されてゆく。

まつろはぬ民が、物部一族が守り抜いた神の殿は、地下の空間にある。

「行こう、田村麻呂。探そう、この地を」

「焦らずとも。日の本に名を刻む武人 物部と田村麻呂、我らに必ず「導き」はある。」「……巻物の末尾には東北の地に眠る、黄金こがねについても何やら記されておる。阿弖流為が、言っておった役に立たね輝く石のことだな、黒鉄クロガネの方が遥かに役に立つ。都人は何故 重石にしか使えぬようなものをありがたがるのか、、、」

コンコン、と控えめなノックの音が、まどろみの幕を裂いた。

「輝くん。具合はどうだい」

入ってきたのは、見慣れた柔和な顔だった。

「……安倍さん。……いや、安倍警部」

森屋道場の古参の門人であり、輝にとっては幼い頃から武術の手ほどきもしてくれた「近所の優しいおじさん」だ。だが今は、よれたスーツに身を包んでいるが、法の元の平等、正義を守らんとする力、警察人として立っている。

「お祖父様があんなことになって……。まだ犯人の目処も立てられずにいる。警察という組織力を使える身でありながら、申し訳ない」

安倍は深々と頭を下げた。そして、顔を寄せてきた。

「……輝くん、よく聞いてくれ。私は警察人として永いが、この件はおかしすぎる。あのでっかいのは、眠り続けているが、ドクターの話では、肋が折れただけで臓器にも脳にも異常はないし、他の半グレどもも関節を砕かれてはいるが、火炎瓶で人を焼く輩らだ。君の行為は「正当防衛」の範疇に入り得るのに、君を傷害罪で起訴しようとしている節がある。半グレどもの中に大臣の息子でもいたのではという者もいて、調べてみたが、そのような可能性のある者は、皆無。道場の焼け跡には少なくとも十体を超える焼死体があった。私も見ている。お爺さまの遺体が含まれているかDNA検査の結果を聴きに行ったら、DNA検査の結果どころか、遺体なんて預かっていないと言われてしまうし。

もっと不可解なのは、太刀の盗難届が出た事、私が、あの太刀をお爺さまに渡したのだが、焼け跡からは見つかっていないし、本部にも盗難届や、それらしいものはないか、問い合わせた時には、無いという返事だったのに、今日になって盗難届が、京都の古美術を扱う会社から出されて、上層部は、君を犯人にしようとしている。一人で調べてみたら京都の会社は、実質活動していない幽霊会社だった。慌ててきてみれば、病室の前には二人の立番。

私は、輝君を小さい時から知っている。どんな人間かよくわかっているつもりだ。お爺さまは、師と弟子の関係を超えた、私の人間としての師範そのものだった。

今は、逃げなさい。私が君を逃す。これは、昨夜帰りがけにお爺さまから預かったものだ。私は中を見ていない。巨大版の帛紗に見えた。今夜だ、準備しておきなさい。

帛紗の中には、広島県の住所と「森永」という人物の名。そして札束、古い札ばかりだが生まれて初めて見る札束。じっちゃんいつの間に、この金なんだろ。どうしたのかな。

「それは、何だ?「お金」銭のようなものか?」輝の意識を読んで田村麻呂がつぶやいた。

田村麻呂の時代、紙自体は貴重品であったが、まだ紙幣はない。「和同開珎」に続く「皇朝十二銭」と呼ばれる銅銭はあったが、地方では、物物交換が主で、米や布が実際の取引に使われていた。「朽ちぬ米か、そういえばコガネも朽ちぬものだそうな。使い道の多いクロガネは、朽ちて残らぬが、コガネは朽ちぬと言っておったな。」

立番の制服警官は二人とも見知った顔であったが、お疲れ コーヒーでもと自販機に誘ってみても頑なに動こうとしない。こりゃアレだなと独りごちつきながら病院を出てぶらぶら歩いてみると、俺も監視されているのか、下手な尾行だな。もう少しマシなやつつけれんかったのかね、、、と呟いてしまう。

病院食を平らげ、食後にヤクルトを飲んで。身支度を確認した。歩哨の制服警官から見えないように気を遣ったが、彼らは視線を合わせたくないのか、合わせるなと命じられているのか、覗き込んでこなかったので、楽であった。簡易浴衣のような病院着の下に着たきりの衣服を着込んで、帛紗と桐箱を気づかれないようにいつも持ち歩いているザックに入れた。

消灯時間になりかけた頃、そっとドアが開いた。阿部さんが、毛布を持って入ってきた。これで人が寝ているように見えるかな、と丸めた毛布を布団の下に押し込み。ニッと笑ってドアを指差した。廊下を見てみると廊下の端 自販機の前で数人のガタイの良い機動隊っぽい人たちが、二人の制服警官に話しかけていた。「え、大変だな。もう少しで交代だろうけどコーヒーでも・・・」「自分達は、誰も入れるな、目を離すなと・・・」「えっ いいって俺っちが、今も六つの眼でしっかり見てるし」こちらを向いた刈り上げた大男が、阿部さんに目で合図したように思えた。二人とも背を縮めるようにしてナースステーションの前を通り過ぎ、エレベーターに乗った。あのカメラとか大丈夫ですか? ん、大丈夫じゃないが、君らが電車に乗るまで保てば良い。どのみち君がいなくなったことは、すぐわかる。

駐車場は、薄暗く無人ぽかった。え、フェアレディZ 32って、阿部さんのイメージと合わなかった。「ほい 入って。後ろでこれ被って転がってて。」黒い毛布と一緒に後部座席に押し込まれた。運転席の上部を進行方向に横切る形で金属のパイプが通ってた。「これ横転時に運転手が潰れちゃわないようにするフレーム。昔 族で走り屋してたのが、今修理工場のオヤジしてんだけど、そいつ胸張ってた。高速道路交通警察体の白バイでもぶっちぎれますってさ」

郊外の駅らしい清潔感のあるロータリーに入った。「後3分で東京行きの電車が入ってくる。ホームは改札とつながっているほう。でこれクレカ。皇居に行って、皇居警察の詰所でこの紙見せればいい。」「皇居って・・・」「遅かれ早かれ手配はかかる。誰も藤氏の本拠地だと思っている皇居に行くとは思っていない。」「藤氏って・・・」「黙っていて悪かった。お爺さまから森屋の由来は聞いている。」ロータリーの向こう側 道路に張り出した街路樹の葉に下からの赤い光、明滅する光が反射した。「行け!君、君たちか、君たちは この世界でも孤立無縁ではない。覚えておいてくれ。俺はアベ氏 1の古代豪族 アベ氏。製鉄技術と造船技術を持つ海の民ゆえ鬼に落とされ追われ追われて 東北 陸奥の民に救われた者の末。」「行け!!アテルイの武神ども。」阿部さんが両手を髪に突っ込んでリーゼント風に髪をかき上げた、てっぺんの反射率はともかく阿部さんが若返ったように見えた。「アベ氏をなめるな!」阿部さんが吠えた。フェアレディZも国産車とは思えぬ咆哮を上げた。明滅しながら数を増やすパトライトの真ん中に突っ込んでいった。

阿部さんからもらったキャップを目深に被り直し、パーカーのシッパーを引き上げた。植樹の影を繋ぐように改札を目指した。電車は、程よく混んでいた。人混みに紛れた安堵からか、途中席が空いて座った途端寝てしまっていたようだ。起きると品川が近いのか、東京タワーが光っていた。東京タワーか、、、もう一年以上経つのか、彼女 「仁」って言ったけ。新宿だったかな同級生とトムヤムクン食べに行こうってなって、辛くて甘くて酸っぱいのをいただいて、店を出て帰りかけてたら「綺麗なお姉さん、一緒にいっぱい行こうよ〜」酔っ払いの声がした。3人で女性を囲んで手を引っ張ろうとしている。スーツを着ているがサラリーマンとは見えなかった。あ、こりゃ〜、気がついたら足が向いていた。「お姉さんみたいな綺麗な人がお酌してくれたら俺っち幸せ〜」と腕を掴み服の裾を引っ張ろうとした巨漢の膝が崩れた。後ろに立つ形になっていた僕は、思わず頭を打たないように後ろから支える形になった。テコンドー、掴んでいた手を切った瞬間、居合にも勝る速度の蹴りが巨漢の顎をかすめ、脳を揺さぶっていた。残りの二人の眼が変わった。一人はスーツの内側に手を入れかけていた。「何、兄ちゃんも俺っちの邪魔しようってか」まず、でも、このデカイのほうりだしてアスファルトで後頭部でも打ったら危ないし。トンチンカンなことを考えていた時に後ろか声がした「おーい モリヤどうした。」って普通こんな時に本名呼ぶ???添野さんだった。添野さんと言っても肉体年齢は同級生、強く光る目を持つまっすぐな男、武術家というのは、じっちゃんが例外で、このような男を武術家と言うと思ってしまう男、とても同級生とは思えない。故に心の中では、いつも添野「さん」。おりゃーいつの間にかヤッパを抜いた男が突っ込んできていた。男の手首があらぬ方向に折れ曲がった。後からやってくる空気を叩いた音、添野さんの蹴りだ。「おいおい男の喧嘩に光モノ出したら高くつくよ。」残った男に添野さんの体が向いていた。男は震えだし意味もなく何度も頭を下げて二人を引きずっていった。「なんだよありゃ」「モリヤ彼女送ってやれよ。俺今から道場行ってウェイトするつもりだから」あっさりと背中を向けて歩き始めていた。これから池袋に行くのかな。拍子抜けした頭で思っていたら女性の声が聞こえてきた。「머리야 (モリヤ)くんだったよね」顔見たことあるような気がするけど、俺に若い女性の知り合いいたっけ。

俺の大学では、一年時から専門の科目を幾つか受講できる試みが始まっていた。専門の科目でいつも一番前に座っている女性、彼女だった。ぽけーとしている僕が彼女を不審がっていると思ったのか「あの先生、いつも出席取るでしょ。それで覚えてしまったの머리야 (モリヤ)って韓国語で 頭だ、とか、頭が、という意味で頭にのこちゃってるの。私は 仁」『その娘 母礼に似た良い目をしておるの』WOWおっさんなんでいきなり出てくるの、というか出てこれるの。キャンパスで出会うたび話をするようになって授業の後、学食で一緒にランチするのが、密かな楽しみになるのに時間はかからなかった。彼女は、韓国からの留学生、韓国の財閥系の企業から派遣されてうちの大学院に留学してきていた。とてもそうは見えなかったが、27歳 少し変わった経歴の持ち主だった。志願して軍に入り、お金を貯めてアメリカの大学に留学し卒業後 今の会社に就職して既に課長職を拝命していたが、経費会社持ちで留学してきていた。テコンドーは軍隊でしごかれたそうだ。ある日「東京タワー見たい」となって、俺も東京人だけど東京タワー上った事がないと言う事で、一緒に東京タワーから夜景を眺めていた。「私 今も予備役で定期的に軍で訓練を受けてる」「なんで? 義務なの?」「女性には、義務でない。でもソウルと平壌は近い、ソウルの南山タワーからは、北朝鮮の山が見えます。私の家族も親戚も皆ソウル南部に住んでいます。北は、「半島統一」と言っているけどあれはスローガン、お題目、北が本当に欲しいのは、この国、美しいニッポン。私は、一人になっても銃がなくなっても戦車の前に立ちます。私の体をひく時間、北が私の家族に近づくのを遅らす事ができるのなら、日本に行くのを1分でも遅らせる事ができるのなら、私の大事な人を北の狂気から少しでも離す事ができるのなら・・・」展望台の窓枠についた左手の小指が彼女の小指と重なり 少し熱かった。


【第3話】

「おのしヨダレが出ておるぞ」おっさんの声がした。ワッなんだよ「ここらで降りるのではなかったか」「宮のおわすところなれば、京のはずじゃが雰囲気がのう違いすぎるというか」ここは関東地方「関東、坂東か、なら宮が上総国 鹿島・香取の宮に行宮されるのか」上総国ってどこよここは、東京・江戸。通じるわけがない。太田道灌が今の皇居の場所に江戸城を築くのが1457年、阿弖流為と母礼が河内国枚方あたりで処刑されるのが、延暦21年、802年9月17日 江戸城は影も形もなく関東平野も台地を除いて海の下、江戸時代の大工事もあって、地形そのものが、今とはだいぶ違う。一回 図書館かどっかにこもって千年の歴史勉強したほうが早いかも。輝は、うつ伏せ気味に足を運んでいた。もう10時近いな、乾門の警備派出所へ行ってみるか。警備派出所の明かりを背に大きい影と小さい影が輝に近づいてきた。「時間通りだね」小さい影が敬礼した。「警視庁より出向で皇居の警備隊長を拝命しております。」「こっちは ヤ」大きい影が遮った「裏切り者に名など伝えなくて良い」分厚く冷たい声が遮った。見事な巨漢でありながら猫ほどの足音も感じさせぬ動き。なんと、じっちゃんより強いかも・・・「見えておるのか」おっさんが独りごちた。「我らは、審神者のおり、お方の傍を固めるもの、裏切り者の姿などとっくに見えておるは、お主のようなものの血が私等の中に流れておろうとは、お方の警護のお役目なければ、この首切り落として血を全て吐き出したいは!」まさに血を吐くような巨漢の声であった。小柄な方に目を写した。ボクサー、、だが耳は、見事なカリフラワーというか耳朶がないに近い耳、あ!柔道の兄ちゃん。「思い出したかね。俺が腕立て伏せしよう時、背中に乗って腕立て伏せしようったが、輝ちゃん」ドラえもんの耳で思い出した。輝より少し小さい168cmくらいの身長だが、着痩せする体質か見事に引き締まった身体を持っている。確か2年ほど、前にブラジルで行われた世界選手権で優勝している。白い肌と時に薄緑に見えることもある薄いブラウンの瞳、彫りの深い顔。ブルースウィルスのおじさんは?「あ、親父は、体調崩して入院している。」えっ、、樽に太い手足をつけたような身体、じっちゃん曰く この使い減りせぬ身体で一の太刀も使いおる。じっちゃんとどっちが強いの?幼児だった輝の無邪気だが無意味な質問。いつも輝を大人として対応してくれたじっちゃんは、考え込んで。「良くてあいぬけ」「悪くするとわしが、腕一本と肋を持っていかれての相打ち」 相抜け??そういえば、あの時初めて相抜けという言葉を聞いた気がする。一のたちもイチの太刀と言ったり、ヒトツの太刀と言ったり。輝とは、はとこのはとこの関係か、祖母の一族であり。母も祖母の同族である。

招き入れられたのは、こぎれいなビジネスホテルのような部屋。「仮眠室なんだけど、今晩はここ使って。シャワーは、小さいけど奥にあるし。電話もここのものは、大丈夫、急ぎの用の時は、そのベルみたいなの押して、すぐ本官が駆けつけます。」冗談ぽいヤッチャン兄ちゃんの声だった。シャワーを浴びてサッパリしてベッドに転がった。おっさっんは、寝ているのか考え込んでいるのか、先ほどから何も言わない。微睡かけた脳裏に秋の一日が浮かんできた。ばあちゃんが両手に米俵を下げて微笑んでいた。今日は稲刈り、村中総出で祖母の実家に集まったような、刈り取った稲を運ぶもの、脱穀するもの、脱穀した籾殻を風で吹き飛ばし俵に入れるもの、皆楽しそうに汗を流していた。今年は良かった。夏も水が足りて日がよくてって、稲穂に身が入り始めてからは、台風も来ず。毎年こうなら極楽じゃのう。古老の声がした。そう南方が原産である稲は、一定以上の温度と水さえあれば、連作障害もなく毎年実りをもたらし、その実は乾燥した状態であれば、保存がきく。まさに白い黄金。いや精米しないと茶色いから輝く黄金そのものか、だが温帯域に属する日本では、田植えの数日の遅れが、収穫に大きく影響する。稲刈り直前に台風に遭えば全滅の危機に瀕する。一気に行ってしまわないといけない田植え、夏場の無限に続くかと思える草取り。面積あたりの収穫量も多いがこれほど集中的に人手を要する作物も珍しい。

子供の俺は、ばあちゃんの手伝いのつもりで俵を引っ張っていた。あら輝ちゃん、そげん引きずると俵がキレてしまうけえ。いくらサナちゃあの子供でも、まだちっさいさけえ、、、早苗は母の名である。うっすらとした記憶だが母は、細身であったような記憶がある。サナちゃあも力持ちで、俵を二つ下げて運んでいるときにちょっかいを出した男衆を恥ずかしかたのであろうか、避けた時に俵が当たって男衆を吹き飛ばしてしまったそうである。吹き飛ばされたのが若き日の父であったのかは、聞けずにいる。まあ、龍司さんは、細かったけえ、、、別の声がする。でも 村相撲の時おっきいい衆をコロコロ投げ飛ばして、カッコ良かったヨォ、わしなんか惚れてまっただがね。でもあんときは、森屋の爺様もきておられて、何もあんだけ怒らいでも、そうじゃワシも守谷の爺様が怒るの見たのはあの時だけじゃった。祖母の視線が悲しげに沈んだ。「龍司ぃ〜」祖母のところに行こうとした僕を後ろから抱き上げた手があった。あっデブのおばちゃん、母の一番上の姉であった。輝ちゃんは、デブのおばちゃんって呼んでええんよ。叔母の目が潤んでいた。「輝ちゃんは、ええ子じゃね〜」「何でこの子が、、、」叔母が小さくつぶやいた。つぶやきを隠すように、ほれおっぱいあげようか、、、輝ちゃんはまだ小さいけえおっぱい欲しいじゃろが、白く輝く豊かな膨らみを押し付けられ、俺は、手足をバタつかせ叔母の拘束から脱しようとしていた。そういえば、叔父様は?冬の日 賞状を焚き火にくべていた。叔父様、銃剣術 優勝 関東なんとか と読めた。「ワシは嫌じゃった。銃剣術など、、、何の役にも立たんかった、シベリアで同じ小隊の友を救えなんだ、銃剣術など何の役にも立たなかった。彫りの深い顔が、鳶色の瞳に涙を浮かべていた。俺に気づくと「おお輝ちゃん、今 餅焼いてやるけぇ、食べんさいい」不意に表情を変えていった。あの叔父はどこに行ったのか、少したばこ臭いのが嫌で顔を背ける俺を何度も抱いてくれたあの叔父は、、、片方の門扉の中にドアがある大きな門 祖母の実家、母の実家でもある、ほんの小さい時に聞いた曽祖父の言葉「ワシは、わしらはどん百姓じゃ、どん百姓でええ」俺の頭を撫でながら泣きながらつぶやいていた曾祖父の顔が唐突に浮かんできた、両親の葬儀の時であろうか曾祖父は黒い紋付を着ていた。あれは桔梗紋 今ならわかる土岐源氏の家紋、なぜか曽祖母の紋は違っていた。モスラの映画を見た時、なんか似てると思った怪獣の紋、揚羽紋 六波羅の地に居館を築き、神戸港を開き、通商による利で皆と共に富もうとはかった平氏の紋。外戚政策を真似された藤氏の怒りを買ったのか、帝の綸旨で幼き帝と共に西国の海に消えた平氏の裔か。

翌日俺は、西に向かう電車に乗っていた。新幹線で新大阪まで行き、在来線で西条という駅を目指していた。新大阪までは、昇降客も多くのぞみでも連続して降りれない時間は、短い。東広島が最寄りと聞いていたが、長い時間 連続して新幹線の車内に閉じ込められるのが不安で大阪から在来線に乗り換えた。失敗だった連続して閉じ込められはしないが、ほぼ半日電車に揺られる羽目になった、尻が座りすぎて痛かった。しかも西条からタクシーに乗ったが指示された住所に辿り着くのに30分以上かかった。おっさんは、尻の痛みを俺一人におわせるつもりか一度も出てこなかった。森永の表札のかかった家で出迎えてくれたのは、母の一番上の姉と瓜二つの女性だった。奥に通されると大師様の掛け軸と立派な仏壇。チンと鳴らし線香を上げて「ナム大師遍照金剛」と唱えた後、こちらを向いて「申し訳ありません。父は5年前に他界し上の兄も昨年亡くなりました。」恰幅の良い背筋の伸びた優しい目をした男性の写真を見上げて彼女は、言った。「この家を使われてください。自分の家だと思っていただいて結構です。」明るい笑い声が響いた。ここらだと安芸門徒が有名で一向衆が多いんじゃなかったかなと、的外れな事を考えながら曖昧に頷いていた。

俺、俺たちは、図書館にいた。広島大学 東広島キャンパス 木を隠すなら森の中、学生を隠すなら学生の中、それにここなら学生以外の人物はとても目立つ。驚いたのは、同居の負担が減ったのか、おっさんが、いつの間にか大量の本を読んでいたことだった。マルチタスクというか、目の前に本を二冊並べて俺は、俺の本を読み、おっさんはおっさんの本を読んでいるのが、普通になった。それにおっさん馬鹿力というか武芸だけかと思ったら何と「量子力学」の本を読み耽っている。時々質問してくるが、土木建築に必要な物理学は古典力学で充分。時間と位置と速度が分かれば、何秒後どこでどれだけの速度で走っているか確定するのが古典力学。要は、未来は確定的ってこと。それに対して量子力学では、運動量が特定できたら位置エネルギーの特定は?位置エネルギーが特定できたら運動量は?の世界。量子の振る舞いに至っては、一つの量子が複数のスリットを通るのが、当たり前の世界。「これなどは、縮地すくちの技そのものであろうが」まだ俺も田村麻呂も爺様が八本の刃をすり抜けた事を知らない。なんて事をいきなり言い出すもんだから。えーい建築土木は古典力学で十二分なの、それに何でおっさん量子力学なんて読めるの。「いや今の言葉を覚えるより容易いぞ、量子力学のドメイン・専門用語は数十あるかないかで皆明確に定義があって石組がお互いを支え合っているように見事に無駄なく支え合っておる。美しいし楽であろう。」このおっさん意外にインテリか、、、銀縁眼鏡をかけて髪を七三に撫でつけたおっさんが、巨大ダンプをぶっ叩いてるところを想像して一人で笑ってしまった。

新聞の記事が目についた。九州の薩摩・大熊地方の方言にアイヌの言葉と共通する言葉が見つかったと書いてある。アイヌの言葉≒古代蝦夷の言葉、蝦夷の民が坂上田村麻呂によって強制移住させられた証拠の可能性が高いとの記述もあった。何だこりゃ、確かに北の者を南の畿外へ南のものは北の畿外に、団結できないよう分散させて住まわせ、その間に今来人、大陸からの渡来民や平氏・源氏 古くはヤマトタケルの名に集約された皇子たちを住まわせ、渡来民には、土地を与えてやったのだからと恩を売り、惜しみなく汝らの治水・冶金などの先端技術を吐き出して我らにつかえよとしたのは、藤氏に代表されるヤマトの貴族、大陸の風を知る遠来人の常套手段だが、田村麻呂は、恭順してきたエミシに最新の農耕技術と鉄製の農器具の作り方を教え、牧を拓き、水利が得れる場所では、水稲の栽培技術を教え定住を促したのではなかったか。2008年2月28日連日の大雨で清水寺の舞台が崩壊、近衛忠煇氏らが中心になり修復のための基金を捻出した。2008年2月28日あたりって嵐山の観月橋が水没しかけた日じゃなかったっけ、嵐山の事は何も書いてないな。何清水寺は、息子が重ねた殺生を恐れた田村麻呂の母が、基金を募り建立し、建立後、幾度も崩壊したが、都の貴族たちの献金・援助により復旧された。今回の崩落が何回目か記録を遡ってもはっきりしないほどである。ん〜Google先生「阿弖流為」について教えてよっと、何故に何も出ない?カタカナのアテルイでは、歴史関係や人物関係では、何もヒットしない。母礼は、え!すっからかんというか何もヒットしない。ん〜鬼は、あ、やたらヒットしたけど、東北地方における赤鬼・青鬼は田村麻呂の戦闘、女子供もなで斬りにする戦、今でも田村麻呂がくるというと子供も泣き止むという。その歴史的事実と田村麻呂の風貌からきたというのが定説であり・・・おいおっさんビット揺らぎどころじゃないぞ。「わしも先ほどから読んでいた」「阿弖流為も母礼も存在せず。わしでないワシが、存在する。」ちょっと待ってって、遠足で清水寺に行った時 阿弖流為と母礼の碑 俺ちゃんと見たぞ。う〜むパラレルワールドじゃな、一切存在した痕跡のない阿弖流為と母礼は、後回しにして、この時代の過去にワシでないワシは存在した。このあたりは、わしとお主がバロム1しておる理由になりそうじゃの。ワシでないワシ、それであの八瀬童子は激怒しておったのだな、物部守屋殿はどうなっておる。物部守屋、崇峻天皇の殺害を企て軍を起こすも、聖徳太子の稲の呪術に敗れ、自刃、子孫は東北地方へ逃れる。何か変じゃね?崇峻天皇を弑したのは、蘇我馬子じゃなかったっけ

【第4話】

京都、鴨川が上流に二手に分かれるあたり。黒塗りのリムジンが走っていた。昭和の世であれば、政財界の黒幕が乗る車としてドラマや映画に引っ張りだこになりそうな車であった。車の中は芳醇な葉巻の香りが満ちていた。葉巻の香りとエジプトで考古学を学んだものなら「ミイラの香り」と表現しそうな香りが満ちていた。「えい、下鴨神社は、糺の森は、いかんと言ったであろうが。とにかく糺の森から離れよ。」「しかし鎌足さま」「本名は呼ぶなと何度言ったらわかる!」「黒麻呂さま」「うむ まだそちらの方が良い」背丈は、精神世界の淀川に現れた田村麻呂と酷似しているが、はるかに痩せ衰え腐臭に近いものを漂わせているものであった、最大の違いは眼、その輝きにあった見るものを吸い込み安堵させる深い緑ではなく、三白眼に近い眼、その目には光どころか昏い黒、わずかな黒と多くの黄ばんだ白しかなかった。「反魂の香、早く手に入れなければ、時間がないとおっしゃたのは黒マロ様では、なかったですか」腐臭というかミイラ臭がなければ、コメディいぽいやり取りを載せて走る車を観るものが、いた。現代というかオリジナルの輝がいた世界では糺の森の端あたり下鴨茶寮があったあたりで双眼鏡を持ち木の間に立っていた。髪の毛を除けば田村麻呂に近いものを感じさせる背筋の伸びた姿。「やっと見つけた」「こんな洛中に堂々と潜んでおったとは」輝は忘れずに太刀を持ってきておるであろうか。この世界の熱田神宮に押し込めておったとは、手には二振りの太刀、一振りは道場と共に焼けたはずの太刀、今、一振りは昨夜熱田神宮から拝借してきた草薙の剣。もう一振りは・・・

森永家でWiFi接続されたPCにLineからのメッセージが出た。発信者は、AB〜何だ、このLine IDは誰にも教えていないのに、、、しばらく逡巡してから輝はLineを開いた。「生きてる。明日AM0430大師山にて」あ、おばさ〜ん、、返事がない。さっき車の音がして帰ってこられているはずなのに??ん、おねーさん「ハイハイ」返事があってにこやかな顔が現れた。そんなそばにいるなら早く返事してよぉ。「だって輝くんいじるの面白いんだもの」一度田村麻呂とも対面しているはずなのだが、田村麻呂は弄らないのかな。碧眼となった輝、田村麻呂を見て「あらら背まで伸びちゃって、なくなったお父さんそっくり。」仏壇の横に飾ってある写真を見上げた。目は田村麻呂というより田村麻呂のイメージの中にある母礼に近いが、恰幅の良い男性が微笑んでいた。あ、あの〜「なになに、お姉さんに訊いて訊いて」大師山ってわかりますか?「わかるも何も福成寺、うちが檀家になっているお寺のすぐ裏にある山が大師山。車では上まで行けないけど、福成寺までなら西条駅より近いわよ。明日にでも連れて行ってあげようか」、このおば・・姉さん千里眼か、Lineの画面が見えるのか、、、あ、お願いします。できれば朝4時頃に麓か福成寺?についていたいのですが、「いいよ、輝くんちゃんと起きてね。あ、これで起こしたげようか」針金でできたハンガーの束に手を伸ばしながらこっちを見ていた。あ、はい、起きます。大丈夫です。翌朝は、眠かった。田村麻呂は、何も言わずにいたが、AB〜の謎に頭が興奮してしまい寝たのが2時をまわってからだった。「セブンの水素コーヒー、輝くん好きだったよねって」おば、、お姉さんがコーヒーを買ってくれたので少しマシになった気がしたが、眠かった。福成寺の山門で下ろしてもらって、ついて行こうかというお姉さまを置いて、大師山を目指した。昔は福成寺の寺域であったように思えるが、今は、個人の山だそうで。何の手入れもされていなかった。コーヒーのおかげが密教寺院の霊験のおかげか生まれて初めて勝手に気が満ちてくる感じを味わっていた。それでも獣道すら定かではないような道、マムシはいなそうで、山が優しいというか穏やかなのは、助かった。0426山頂着。福成寺の反対側の山裾から聞き覚えのあるエンジンの咆哮が、ゼイゼイというゆらぎを伴って聞こえてきた。きの間から見える朱、特徴的なデザイン、マツダのロードスターではなくてフェアレディZ Z32 2by2もどき、運転するのは、リーゼントの髪を乱したAB〜警部、流石にあの車高では、腹を擦ってしまったかに見えたフェアレディZ向かって僕は駆け降りた。誇り高き古代一の豪族アベ氏の裔にして、爺様と同じ体術を使う50代の戦士、ボロボロだった。拳の皮は剥け骨が見えていた。こめかみの少し上には、銃弾が至近距離を通過したか紅く膿を持った傷跡が左側に二筋、右側には三筋走っていた。「へへ お爺さまに伝えてくれ阿部も見切り5回できましたと。」ボロボロの手、指は、全部揃っているのか確かめたかったが、怖くて直視できなかった。その手が差し出してきたのは、あの剣、三振りで一体となる草薙剣。後ろから声がした「あら〜ボロボロだけど元亭そっくり、いい男ねぇ〜」おば、いやお姉さんだった。うん、俺でも若干苦労したこの山どうやってついてきたんだ、このおばあでなくてお姉さん大山祇の神の眷属か?「ほらっ、早く手を貸して、この人を車から出して。後は、私が運ぶから、輝くん急いで、これ新幹線の切符、車運転できるでしょ、この赤い車で急いで東広島へ行って!今なら東広島に停まるヒカリ間に合うから。え、俺ペーパードライバーだし、てか、こんな道?谷筋??なら関係ないか。ママよ。人目をひく傷だらけのフェアレディZを駐車場に掘り込んで、改札に走った。

輝がいた時代と同じように改装された京都駅、綺麗なのはともかく広いな〜切符の裏には油性マジックで「昼、京都駅」とだけ書いてあった。あ、ヤス兄ちゃん隣には、あの巨漢、おっかない雰囲気でこっちを睨んでいる。「まだ田村麻呂を信じたわけではない、だが森屋の翁のたっての頼みは無視できぬ。さらにこの京で帝に関わる不祥事が起きたとなれば、八瀬童子の名に関わる。」「よって同行する。」不機嫌と怒りをこね合わせて凶暴をスパイスにした声が聞こえてきた。「行こうか、守屋の翁は、もう待っておられる。」えっパトカーって、それに警視庁から皇宮警察に出向中なのに京都府警のパトカーって、、、「日本の警察だってバカばかりではない、おかしいものはおかしいと言える部分はまだ残っている。」「それにわしら八瀬童子は、このような時のためにある。いかに帝の外戚であろうと帝の世を乱すものは我ら八瀬童子決して見逃さぬ。許さぬ。」「行こうか」京都北山に向かう途中、避暑用の別荘と思しき建屋の中で、濃厚な吐き気を催しかねない香気の中で黒麻呂なる存在は、壁にもたれ眼を閉じていた。「来るぞ」「新しき身体じゃ」「この身体はもうあいた」「抜かるなよ」幾つもの影がひざまづいていた。秦氏・服部氏の裔であろうか、いずれも屈強な体に黒ずくめのレインジャー部隊のような服装。マシンガンを持つものもいたが、全員太刀を帯びていた。30を数える影が散った。

爺ちゃん!「輝、来たか」「ブルースウイルスの叔父さんは?」すまぬ ヤスにいちゃんに頭を下げた。「奴らの毒を甘く見ていた。二人は、ワシを助けようとせくあまり早く上に上がってきすぎて毒を吸ってしまった。」二人って?「トミ殿、デブのおばちゃんの旦那様も毒を吸ってしまわれた」いやウチの父もそれほど不用心では、ありません。あれは皮膚からも吸収される神経毒、翁ほどの域に達していなかっただけ、気を満たす修練が不足していただけです。ドクターも峠は超えたと後3ヶ月もすれば二人とも通常の生活に戻れると言っておられます。」嬉しかった、おじさんのタバコくさい息を思い切り吸い込んでもいいと思った。何かがうなじを掠めた気がした。「来たな」「輝よ田村麻呂殿、この太刀を」「輝の太刀は、八瀬童子殿に」重い太刀であった。田村麻呂も一人では扱いかねる太刀であった。草薙の剣の荒御魂、風水火のうち火を司る剣。「兄ちゃんは?」「はは、講道館柔道を舐めるなよ。平氏・源氏の血を共に受け、阿弖流為殿の血も受けている。」「何!」 巨漢が目を剥いて睨んでいた。「阿弖流為殿だと〜」「あ〜だから言いたくなかったんだよね」にいちゃんの姿がブレた、影に当て身?が入っていた。講道館五教の型、嘉納治五郎師範が人斬り包丁を持った狂人から身を守るために培われた素肌柔術のエッセンスを封じ込めた型。そしてジッ様の声が聞こえた「あれも一つの太刀と同じく我らの一のアテ」八瀬童子の巨体が重力のない動きをした。幾つもの影が薙ぎ払われるように倒れた。「あれこそ、風の太刀」田村麻呂殿の血を受け修練したものだけに許される技。何かが飛んできた。半グレどもの火炎瓶を思い出した。じっちゃんの右手が影の如く動いた。「水の太刀には、毒は通じぬ。」毒薬入りの手榴弾?光の筋を避けたような気がした。筋の跡をマシンガンの弾が追ってきた。これが見切り?田村麻呂の意思か刀が動いた。炎か光か、物理的な圧力を持つ何かが、マシンガンの銃身と黒尽くめの身体を叩き潰しながら弾き飛ばした。残った影が屋敷に逃げ込んだ。中では、「黒麻呂殿」「我らの大半が既に撃たれ申した。」「ならばなんじゃ」「ここは、いったんお引きを」「何を言っておる。ならばワシが片付けてやろう。」「汝等 せめて血をよこせ。ワシの役に立て」鞭のようなものが伸びた。先ほど報告していた隊長と思しき影以外は、全て絡め取られていた。ゾッとするような何か濃いものを啜る音。「おのれ化物」部下達の姿が萎んでゆく。「化物が、部下を部下たちを返せ。彼らにも親はいる。妻や子がいる者もいる。返せ、彼らの命を戻せ、命の光を」「知らぬ。萎みゆく命を見る事こそ、苦しみ喘ぐ姿をこそ我に喜びを、力を与えてくれる。我の喜びとなることを感謝して逝け。」「許さぬ、化物め!」隊長の、服部の長の渾身の一撃、もとより相打ちしか求めていない見事な太刀筋。「通じぬよ。我には怒りの太刀は通じぬよ。主の怒りは美味いの。悔しさは甘露じゃ。ワシの力を大きくしてくれる。」屋敷に駆け込んだ輝たちが見たものは、鞭のようなものに巻き取られ天井近くつるしげられ萎みつつある長の姿であった。「田村麻呂殿 我らと同じく大陸から渡って来られたものの裔よ。我らの無念を」来たか田村麻呂、見よ、主の体じゃ。テラテラと蠢く蛇のような舌が口腔に収まると。禍々しさは、格別であるが、まさしく田村麻呂そのものが、立っていた。これが、おっさんが、俺と同居した理由か。一つの世界の同じ時間には、同一人物は、存在し得ない。「くれてやるは、その身体。人の血を啜ってまで生きようとは思わぬ。」「えっおっさんとずっと同居」隙ができた。まさにその隙に舌に巻き付かれ、香炉のようなものの上にぶら下げられた。甘いような香りであるが、絶対目覚めたら頭痛確定という香りに包まれた。俺の手とおっさんのでかい手が、二重写に見えた。うわー気持ちわるぅ。「早う身体をあけよ。」「これが反魂香か」、八瀬童子の太刀が振るわれ、風が来た。が、いっときの間、煙は薄れたが、またまとわりついて今度は、鼻から入り込もうとしてきた。意思あるような。煙の動きであった。「こやつが田村麻呂殿の名をもって悪行をなし続けておったか」「田村麻呂殿我が不明を許されよ。帝の世にあだなす害虫よ、許さぬ」八瀬童子の体が怒りに膨れあがった。風の太刀の一撃が黒麻呂の脳髄を砕いた蚊に見えたが、「聞かぬよ。効かぬ」「さすが八瀬童子、汝の怒り美味いは、心地よいは」黒麻呂の体がもう一回り大きくなりつやを増した。煙が密度を増し、締めつける力が増した。「そうれ出てゆけ、早う楽になれ」黒麻呂の言葉が、子守唄のように響いてきた。「輝ちゃん、目を閉じるな!」ヤス兄〜、禹歩を踏み小さな身体が舞っていた。いきなり投げ出された。受け身は取れたものの強烈な衝撃に背中が痺れた、ジッちゃんの声がした「やはりな、田村麻呂殿、輝 太刀を置け」「力を抜け」苦しんでいた、黒麻呂がのたうち回っていた「これは、なんじゃ、身体が溶ける。潰える。」「今少しで新き、今度は・テルイの身体を手に入れたものを〜」「良いか、こやつには武器が通じぬ。がこやつとて存在、滅せぬ存在はない」「塩田剛三も、神人合一の境地に達しておったわ。思い出せ、剛三師範の言葉を」なんだったか思い出せない。最高の合気についての答えだったであろうか、「私を殺しに来た人と友達になる事です。」そうだこの言葉だ、この言葉は、精神的理想を語った言葉ではない。極意神人合一の極意を伝えている。何故か森永家の大師様の姿が浮かんだ「密教にいう三密とは。身口意の一致、三密が一致すれば即身成仏も成る。この肉の身を持ちながら仏となることも叶うという」「本来 仏になりうるのが、人の本性であれば、人の人としての同じ部分と一つになる事など遥かにた易きこと。一つになり」黒麻呂の意識が、鎌足の意識が見えてきた「何故じゃ何故、福信の如き下賎のものの意見に従う。王はわしじゃ。」「何故笑う、養蜂しか出来ぬ人質王子と」「畿内にもう大陸の民は、入れぬ半島からの民も入れぬ。ワシらが最後じゃ」そうか、哀れだった脳、苦しかったのう。ジッちゃんの声か、意識か、「要らぬ哀れみなどいらぬ。同情など腹の足しにもならぬ。」そうか、お前はどうしたかったのじゃ、どうしたいのか。合力してやろう、ヤスにいちゃんに意識か、田村麻呂の意識か、「ワシかワシがしたいのは、こうじゃ」「皆んな喰ろうてくれる」漫画のようであった。黒麻呂が自らに食らいつきオウオウと歓喜の声を上げながら自らを食らってゆく。消えゆく。これが一つの太刀、一つの打ち。相手と一人に重なり相手の望みを叶えてやる。格闘技のレベルであれば相手の行きたい方向に手助けしてやる。相手を殴ろうと前のめりになっていれば、さらに自ら前のめりになり。前に飛んでしまう。なるほどな、、、納得しかけた時、あの強烈な頭痛と吐き気が襲ってきた。おば、じゃなくて姉さんと会ってお礼言わなきゃ。もう一度仁に会いたいな。大きな光が、暖かい光に包まれる感覚があった。

(完)

■量子力学と武術の「縮地」

劇中、田村麻呂が量子力学の本を読み耽り、「これは縮地の技だ」と喝破するシーンがあります。

古典力学的な「確定した未来」を生きる現代人に対し、不確定性や重ね合わせを受け入れる量子力学的な視点は、実は古流武術が目指した「神人合一」や「先の先」の境地に近いのではないか――。そんな空想を物語の核に据えました。

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