表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生官僚は最強のシステムを構築する  作者: 神代転一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

商人ギルドの天才少女と経済モデルを議論したら、なぜか弟子入りされた

 王都の商業区。


 朝から市場は活気に溢れている。果物売り、布地商、香辛料の匂い——だが俺のスキルが弾き出す数字は、この賑わいの裏にある歪みを示していた。


【演算】

王都市場・流通分析

・同一商品の地域間価格差:最大8倍

・中間業者マージン率:平均62%(適正値の推定:15~25%)

・農村から王都への物資輸送コスト:過大(道路整備費横領により道路が崩壊)

・商人ギルド正規会員と非正規業者の税率格差:4.3倍

結論:流通システムが機能不全。農村が搾取されている構造。


 こんな状態で国が持つほうが不思議だ。


「……あのう」


 突然、声をかけられた。


 振り向くと、赤髪ショートの少女が立っていた。年齢は俺より若い——十六歳くらいか。服は商人風だが質が良い。目が鋭く、値踏みするような視線で俺を見ている。


【鑑定】

セラフィ=ロード

商人ギルド・ロード商会次期頭首

計算力:S(天才級)

経済知識:B+(独学の限界)

現在の思惑:「さっきからずっとメモを取っているこの男は何者だ」


「あなた、さっきから何を計算してるんですか」


「市場分析だ」


「それ、私の店の前でやってますよね」


 俺は初めて気づいた。確かに、足を止めたのが青果店の前だった。


「失礼。邪魔をした」


「いえ、別に邪魔じゃないんですけど……」


 セラフィは俺のメモを覗き込んだ。それから、表情が変わった。


「……これ、何の数式ですか」


「流通の最適化モデルだ。需要曲線と供給曲線の交点を——」


「需要曲線? 供給曲線? そんな概念、聞いたことがない」


 当然だ。この世界には近代経済学がない。


「少し時間があるか? 説明する」


 ――――――――――――――――――


 近くの茶店に入り、二時間。


 セラフィはほとんど一言も喋らなかった。ただ、俺の話を聞きながら、自分でも羊皮紙に計算を走らせていた。その速さは確かに天才的だ。俺が一つの概念を説明し終わる頃には、もう応用計算を自分でやっている。


「……需要が増えれば価格が上がり、供給が増えれば価格が下がる。当たり前のことのようだけど、こうして数式にすると……」


「価格操作の余地がどこにあるか見えてくる、だろ」


 セラフィが顔を上げた。


「わかるんですか? 私がずっと思ってたこと」


「うちの市場、中間業者が多すぎる。農家から買い叩いて、消費者には高く売る。その差額が全部、特定の業者に流れている——私、ずっとそれがおかしいと思ってたけど、なぜおかしいかを説明できなかった」


「中間マージンの問題だ。競争が機能していれば自然に適正化されるはずだが——」


「ギルドが競争を妨害している」


 セラフィが静かに言った。


「非正規業者には不当に高い税をかけて、参入を阻んでいる。だから既存業者が搾取し放題になってる。それって……」


「独占と腐敗の組み合わせだ。どこかで聞いたような話だろ」


 セラフィが俺を見つめた。


「……あなた、何者ですか」


「ヴェイン伯爵家の三男だ」


「そんな話じゃなくて」


 彼女の目は真剣だった。


「あなたの知識は、どこから来てるんですか。私はギルドの帳簿を三年かけて研究してきた。でも今日、あなたとの二時間で、三年分より多くのことがわかった気がする」


 俺は少し考えた。


「独学だ。昔から、数字を見るのが好きでね」


「弟子にしてください」


 唐突だった。


「え?」


「弟子にしてください。私、あなたから学びたい」


 セラフィが頭を下げた。赤髪がさらりと揺れる。


「私の目標は、ギルドの腐敗を打ち壊して、この市場を正常化することです。そのための武器が欲しい。あなたの持っている知識が、まさにそれだと思う」


 俺は少し間を置いた。


 使える。この子は、俺の計画の経済システム改革において、最高の協力者になりうる。


「……条件がある」


「何ですか」


「俺の改革計画に協力してくれ。ギルドの内部情報と、商人ネットワークを使わせてほしい」


 セラフィは一瞬だけ考えて、手を差し出した。


「取引成立です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ