第4話:ハウスの試験
「さてと」
ミミが椅子の上で体を揺らした。
「次どうする?」
腕を組んでいたカイルが答える。
「決まっている」
「ダンジョン攻略だ」
ミミも頷く。
「そのためには情報も必要だよね」
「あと依頼も受けたい」
僕はカップをテーブルに置いた。
「それならギルドだね」
ミミが首を傾げる。
「さっき言ってたやつかな?」
「ダールズと…ハウス?」
「そう」
僕は指を二本立てる。
「カイニーのギルドは二つ」
「ダールズとハウス」
カイルが聞く。
「どちらが優れている」
僕は肩をすくめた。
「規模ならダールズ」
「依頼数も情報量も向こうが上、待遇もいい」
ミミが目を輝かせる。
「じゃあダールズ?」
僕は少し笑う。
「でもダンジョンの情報なら」
「圧倒的にハウス」
カイルの眉が動く。
「何故だ」
「それは入ってからじゃないと教えられないな」
僕は少しもったいつける。
三人がこちらを見る。
そのとき。
ニナが口を開いた。
「……二人とも」
青い瞳がミミとカイルを見る。
「少しでもダンジョンの情報が欲しい」
ミミはすぐ笑った。
「私はいいよ!」
「この店ちょっと気に入ったし!」
カイルも頷く。
「俺も構わない」
「ニナが決めたならそれでいい」
ニナが僕を見る。
少し間を置いて言った。
「……アルト」
身を寄せる。
「ハウスに入りたい」
静かな声。
でも真剣だった。
「お願い」
三人の視線が集まる。
僕は腕を組んだ。
少し考えるふりをする。
「……まぁ」
わざと間を作る。
そのときだった。
近くのテーブルから声が飛んだ。
「おーアルト」
「新人連れてきたのか?」
振り向くと、酒を飲んでいた冒険者たちがこちらを見ていた。
別の男が笑う。
「また勧誘かよ」
「アルトの新人見る目は信用できるからな」
「まぁあいつに挑めばわかる」
店のあちこちから声が上がる。
三人がゆっくり僕を見る。
ミミの目が輝いている。
カイルは腕を組み直す。
……あれ。
思ったより空気が大きくなった。
僕は慌てて手を振る。
「いやいや!」
「僕ただのハウスの冒険者だから!そんな権限ないよ?」
一瞬の沈黙。
ミミが机を叩いた。
「ばかーーー!!」
カイルが呆れた顔をする。
「今の流れだと、お前が入れてくれるように聞こえたぞ」
僕は頭をかいた。
「紹介くらいはできるけど、決めるのはギルマス」
その横で。
ニナがぽつりと言った。
「……きらい」
――心が折れた。
そのときだった。
ギシッ。
二階の階段が鳴る。
店内の空気が少し変わった。
何人かの冒険者が顔を上げる。
「……起きたか」
「今日は早いな」
階段の上から気だるそうな声が降りてきた。
「……寝すぎた」
「頭痛い」
長い黒髪の女性が、だるそうに階段を降りてくる。
キャシーが声をかける。
「ギルマスー!お水持ってきますねー!」
ミミが小声で聞く。
「誰?」
僕は答える。
「あの人が、ハウスのギルドマスター」
ミミが前に出る。
「すいません!」
「ハウスに入りたいんです!」
ギルマスは眠そうに目を細める。
「んー?」
店内をゆっくり見回す。
「あー」
「またダールズのスパイじゃないだろうな」
誰かが笑う。
「最近多いですからね」
ギルマスと呼ばれた彼女が周りを見る。
「……アルト」
「いるか?」
僕は手を上げる。
「いるよー」
ギルマスが目を細める。
「……なんで泣いてる」
「いや気にしないで」
近くの冒険者が笑う。
「市場で見たぞ」
「エルフに土下座してたやつ」
「伝説だな」
……やめて。
ギルマスは頭をぼりぼりかく。
そして三人を見る。
少しの沈黙。
「そいつに勝てたら合格」
ミミが固まる。
「は?」
カイルも目を丸くする。
「三人で?」
ギルマスはもう階段へ戻り始めていた。
「三人でも四人でも好きにしろ」
「一発でも当てたら合格」
「当たらなかったら帰れ」
「じゃ、寝る」
そう言って二階に消えた。
店内が静まり返る。
そして。
「またそれかよ」
「新人試験だな」
「アルトに一撃入れたら合格」
「優しい方だぞ」
ざわざわと店が騒がしくなる。
僕は頭をかいた。
「あー」
「ごめん」
「最近ダールズが情報取りに来てるから」
「ギルマスちょっと警戒してるんだ」
三人を見る。
ミミとカイルの目が怖い。
ミミが笑う。
「いいじゃん」
「やろうよ」
カイルが剣の柄を握る。
「俺も賛成だ」
「強さを見せればいい」
僕はニナを見る。
「ニナは?」
ニナは少し考えて言った。
「……二人がやるなら」
「私も」
僕は立ち上がる。
「地下に訓練場あるから」
「そこでやろうか」
三人が歩き出す。
その後ろ姿を見ながら思う。
三人とも本気だ。
……仕方ない。
僕は笑った。
「あ」
三人が振り返る。
「これで負けても」
「入れるように言っておくね」
一瞬の沈黙。
ミミが叫ぶ。
「倒す!!」
カイルが吠える。
「ぶった斬る!!」
その後ろで。
ニナが小さく言った。
「……落ち着いて、いつも通りで」
地下へ向かう階段を降りながら思う。
この三人。
思ったより――
面白いかもしれない。
ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!
もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!




