第3話:カフェ「ハウス」とカイニー街
街を一通り歩いたあと、僕たちは少し休憩することにした。
案内したのは、冒険者がよく集まるカフェだ。
扉を開けると、元気な声が店内に響いた。
「いらっしゃいませ~!ようこそハウスへ!」
ふわふわと宙に浮きながら忙しそうに働いているのは、ゴースト族の女性だ。
「キャシーさん!」
僕が声をかけると、彼女が振り向いた。
「アルくん!元気~?」
「元気だよ。奥のテーブル使ってもいいかな?」
「もちろん!綺麗にしてあるからすぐ使えるわよ~」
僕は三人を店の奥へ案内する。
店の中には様々な種族の冒険者たちが座っていた。
するとすぐ声が飛んでくる。
「アル!いたのか!」
振り向くと、顔なじみの冒険者が手を振っている。
「この前の依頼どうだった?」
「まだ終わってないよ!またあとで!」
別の席からも声が飛ぶ。
「アルくん!今日飲みに来る?」
「夜ならね!」
そんなやり取りを見て、ミミが目を丸くした。
「すごい…みんな知り合いなんだね!」
「常連なだけだよ」
僕は笑う。
「この店、冒険者がよく集まるから」
四人で席に座る。
ミミが言った。
「そういえばさ!さっき名前しか聞いてないよね」
「改めて自己紹介しよ!」
ミミが元気よく言う。
「ミミ・テルーチ!ポックル族!遺跡とか古いもの調べるのが好き!」
カイルが腕を組む。
「カイル・バーンビースト族だ前衛をやってる」
ニナは静かに言った。
「ニナ・リーチ」
「エルフ」
それだけだった。
でも、それがニナらしい。
僕も言う。
「アルト・ルーンこのカイニー街で育ったんだ」
ミミが店の中を見回した。
「ねぇ、この街ってどんなところなの?」
僕は少し考えてから説明する。
「ここはカイニー街、ミルト国の東にある港町だよ」
ミミが目を輝かせる。
「港きれいだったよね!」
僕は続ける。
「東には海、北には山」
「海があるから交易が多い」
「山からは鉱石とか資源が取れる」
カイルが頷く。
「なるほど、だから街が栄えてるのか」
「それもあるけど」
僕は窓の外を指差す。
「一番の理由は西にあるダンジョン」
ミミが身を乗り出す。
「ダンジョン!」
この世界には五つの大きなダンジョンが存在する。
土、雷、水、火、風。
それぞれ異なる属性の魔力を持っている。
ダンジョンはただの迷宮ではない。
世界に流れる魔力を循環させる役割を持っている。
もし放置すれば、魔力が溜まりすぎる。
その結果、魔物が増えたり、ダンジョンが暴走する危険がある。
だから人々は冒険者ギルドを作った。
冒険者たちはダンジョンを攻略し、魔物を減らし、世界の魔力のバランスを保っている。
つまりダンジョン攻略は、宝探しではない。
世界の均衡を守る仕事でもある。
それから僕は三人を見る。
「ところでさ」
「君たちもダンジョン目当てで来たの?」
カイルが少し笑った。
「まぁそんなところだ」
ミミが肩をすくめる。
「本当は別のダンジョンにいたんだけどね」
「探索してたら罠踏んじゃってさ」
「気づいたら森の中だったの!」
僕は驚いた。
「それって結構辛かったね…」
カイルが頷く。
「そうだな」
「位置も分からなかったから、とりあえず近くの街を探した」
ミミが笑う。
「そしたらここだった!」
ニナは静かに言う。
「……ダンジョンの近く」
カイルが続ける。
「街に来れば情報があると思ってな」
僕は笑った。
「それなら正解だよ」
「この街はダンジョンの情報が一番集まる」
ミミが目を輝かせた。
「やった!じゃあ運が良かったんだ!」
その時だった。
ガシャーン!
厨房から皿の割れる音が響いた。
「ごめんなさ~~い!」
キャシーさんの声だ。
僕は立ち上がる。
「あー…またやったな」
三人を見る。
「ちょっと見てくる」
「飲み物でも頼んで待ってて」
「はーい!」
厨房を覗くと、キャシーさんが慌てていた。
「アルくんごめんねぇ~!」
「大丈夫大丈夫」
僕は笑う。
「二人でやればすぐ終わる」
床に散らばった皿を拾う。
その時。
「……三人ならもっと早い」
横から声がした。
振り向くと。
ニナがしゃがんでいた。
一瞬、固まる。
距離が近い。
近すぎる。
「……何?」
ニナが怪訝そうに言う。
「あ、いや!」
僕は慌てて袋を差し出す。
「これに入れてくれる?」
「わかった」
ニナは静かに皿を拾っていく。
横顔が綺麗すぎる。
本当に天使だ。
「……小声で変なこと言ってない?」
「言ってない!」
僕は即答した。
数分後。
片付けは終わった。
「助かります~~!」
キャシーさんが頭を下げる。
ニナは立ち上がり、先に席へ戻っていく。
長い青い髪が揺れる。
小柄な背中を見ながら、僕は思った。
やっぱり綺麗だな。
後ろ姿を見送る。
小柄な体に長い髪が靡き、一歩一歩が美しい
――一生見ていられる気がした。
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