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エルフに土下座で告白したら振られたけど、なぜか一緒にダンジョン攻略することになった  作者: 紅茶伝


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第26話:触れてしまった境界と、繋ぎ止める手

 

 アルトの体は、立っている形を保ったまま、すでに“自分で支えている状態”ではなくなっていた


 呼吸は乱れ、視線は完全に焦点を失い、外からの声も、触れられている感覚も、何一つ届いていないまま、内側で膨れ上がった力だけが暴れることで体を無理やり立たせているという不自然な均衡が、かえって崩壊を加速させていた


 ズキンッ――


 頭の奥で弾けるような痛みが何度も繰り返され、そのたびに内側の流れが形を失って散り、散ったかと思えばすぐに別の形でぶつかり合うことで、制御という概念そのものが消えていく


 アルトの意識は――ない


 完全に、沈んでいる


(……もう)


 ニナは理解する


 この状態は“戻す”じゃない


 “繋ぎ止める”しかない


 一歩、踏み込む


 迷いはない


 目の前で崩れようとしているのは仲間で、それ以上に――自分が手を伸ばす理由が、はっきりと存在している


「……離さない」


 小さく、だが確実に言い切る


 そのまま手を伸ばす


 アルトの胸元へ触れる


 ビリッ――


 強い反発


 だが、離さない


 そのまま押し込む


 魔力を流す


 “水”ではない


 隠していた本来の流れ


 空間を整え、流れを繋ぐ力


 それをそのまま、アルトの内側へと流し込む


 ぶつかる


 弾かれる


 それでも止めない


(……足りない)


 即座に判断する


 距離が足りない


 流れが“奥まで届いていない”


 アルトの体が大きく揺れる


 空気が歪む


 足元の砂が浮く


 このままでは間に合わない


 ニナは、迷わない


 さらに一歩踏み込む


 アルトの手を掴む


 指を絡める


「……離さないで」


 返事はない


 それでもいい


 そのまま魔力を流し込む


 さらに深く


 だが――


 まだ足りない


 流れが、繋がりきらない


 内側の暴走が上回る


(……まだ)


 ニナの呼吸が荒くなる


 限界に近い出力


 それでも止められない現実


 その瞬間


 ニナは、もう一段踏み込む


 距離を、詰める


 逃げ場をなくすように


 体を寄せる


 アルトを、抱き込むように


「……戻って」


 初めて、感情が乗る


 押さえきれないほどの想いが、声に混ざる


 そのまま――


 全力で魔力を解放する


 内側へ流し込む


 ぶつけるのではなく


 重ねる


 暴れている流れに寄り添い、形を与え、繋ぎ止めるように


 その瞬間


 変わる


 弾かれていた流れが、噛み合う


 バラバラだったものが、一つにまとまり始める


 ズキッ――!!


 最後の強い痛みが走る


 だが、それを境に


 流れが“落ち着く”


 アルトの内側で暴れていた力が、形を持つ


 “定着する”


 ドクンッ――


 一度だけ、大きく脈打つ


 そのあと、静かになる


 空気の歪みが、消える


 浮いていた砂が落ちる


 重さが戻る


 そして――


 アルトの意識が、浮かび上がる


「……っ……」


 小さく息を吸う


 視界が戻る


 音が戻る


 そして最初に感じたのは――


 近さだった


 すぐ目の前に、ニナがいる


 いや


 それ以上に近い


 体が、触れている


 抱きつかれている形になっていることを、遅れて理解する


「……え」


 思考が一瞬止まる


 状況を認識する


 距離


 触れている場所


 温度


 全部が一気に流れ込む


(……ちか……)


 鼓動が跳ねる


 さっきまでの痛みとは全く別の意味で、胸の奥が強く鳴る


 嬉しい


 安心する


 でも同時に――


 恥ずかしい


 混乱する


 理解が追いつかない


 全部が一気に来る


(……やば……)


 思考がまとまらない


 でも一つだけはっきりしている


(……嬉しい)


 それが、全部を上書きする


 ニナはまだ離れていない


 呼吸が近い


 視線が合う


 その距離のまま、数秒止まる


 ニナが小さく息を吐く


「……戻った」


 確認の声


 アルトは少し遅れて頷く


「……うん……」


 声が少し上ずる


 ニナはそれを見て、ようやく少しだけ力を抜く


 だが、完全には離れない


 まだ安定しきっていないことを分かっているから


 アルトはそのまま動けない


 離れたいのか、このままでいたいのか分からないまま、ただその距離に耐えながら、さっきまでとは全く違う意味で乱れた呼吸を整えようとしていた


(……これ……)


 戦闘よりも、よっぽどきつい


 そう思いながらも


 ほんの少しだけ


 このままでいいと思ってしまう自分がいることに、気づいてしまった

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!

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