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エルフに土下座で告白したら振られたけど、なぜか一緒にダンジョン攻略することになった  作者: 紅茶伝


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第13話:無意識の代償

 通路は、ゆるやかに下っていた


 踏み込むたびに、足元の土がさらさらと崩れる、細かい粒が靴裏にまとわりつき、重心がわずかに後ろへ引かれる


 乾いたはずの地面に、微かな湿り気


 空気も重く、肺に入るたびに少しだけ抵抗を感じる


 天井は低い


 突き出た岩が不規則に並び、無意識に首をすくめるような圧迫感がある


 ぽたり、と水の落ちる音


 その一滴だけが、やけに鮮明に響いた


 ミミが肩をすくめる


「なんか……静かすぎない?」


 声が反響して、すぐに吸い込まれる


 さっきまであった、土の擦れる音や微かな崩落音が消えている


 カイルが低く言う


「魔物がいないわけじゃない」


「気配が薄いだけだ」


 剣を握り直す音が、小さく鳴る


 ニナは目を細める


 視線は前ではなく、空間そのものを捉えている


「……溜まってる」


 アルトは、息を少し深く吸う


(密度が違う)


 空気じゃない


 空間そのものが、肌にまとわりつくように重い


 呼吸が浅くなりかけるのを、無意識に深くし直す


 それでも、足は止まらない


 止める理由がない


 その瞬間


 ザザッ


 前方の地面が波打つ


 わずかに盛り上がり、崩れ、また膨らむ



「来るよ」


 ニナの声が落ちる


 直後

 ドンッ!!



 地面が弾ける


 土の塊が噴き上がり、その中から腕のような塊が突き出る

 一つじゃない

 二つ、三つ


 同時に、別の位置から生えるように現れる


「え、これどういうタイプ!?」


 ミミが一歩下がる


 アルトは即座に言う


「本体は下」

「出てる部分だけじゃ終わらない」


 カイルが前に出る


「俺が引きつける!」


 踏み込んだ瞬間、足元の土が沈む


 振り下ろされる腕


 ドゴンッ!!


 衝撃で地面が割れる


 カイルが紙一重で避け、そのまま懐に潜り込む


「【炎よ】!」


 炎を纏った剣が横から叩きつけられる


 土が弾ける


 だが崩れきらない


 別の腕がすぐに地面を割って伸びる


 アルトが動く


「【雷よ】」


 足に電流が走る


 筋肉が強制的に引き締まり、地面を滑るように加速する


 一瞬で間合いに入り、腕の付け根を斬る


 ドンッ!


 刃が深く入る


「そこ!」


 ミミが叫ぶ


「固定する!」


 円盤型の魔法道具を投げる


 地面に触れた瞬間、光が広がる


 空間がわずかに軋む


「拘束展開!」


 腕の動きが鈍る


 その瞬間だった


 アルトの視界の端で、別の影が跳ね上がる


(後ろ――)


 振り向く


 遅い


 もう目の前まで来ている


 距離

 速度

 軌道


 全部、見えている


(避けられる)


 そう判断した瞬間


 同時に、別の情報が入る


 背後

 ミミの位置

 カイルの踏み込み途中の体勢

 逃げた先に、直線で重なる

(――逃げたら、当たる)



 その一瞬で


 選択肢が消える、体が勝手に前に出る


 避けるためじゃない



 “止めるために”


 剣を構える


 ドンッ!!


 衝撃


 腕に叩きつけられる重さ


 骨が軋むような感覚


 肘から先が一瞬しびれる


(……っ)


 息が詰まる


 足元がずれる


 それでも押し返す


 無理やり弾く


 砂が跳ねる


 そのまま回転して距離を取る

 着地した瞬間、わずかに膝が沈む


 ミミが叫ぶ


「今の無理でしょ!?」


 アルトは笑う


「大丈夫」


 声は変わらない


 でも


 右手の感覚が鈍い、握った感触が薄い


 それでも、ぎゅっと握り直す

(動く)


 それだけ確認して終わらせる


 ニナだけが、それを見ている

(避けなかった)

(違う)

(避けられなかったんじゃない)

(避ける場所がなかった)


 その違和感が、はっきり形になる


 戦闘は続く


 ニナが言う


「本体を引き出す」

「ミミ、範囲広げて」


「了解!」


 杭状の魔法道具を取り出す


「振動杭!」


 地面に突き刺す


 低い振動が広がる


 足裏から伝わる波

 土がざわめく

 中心がわずかに膨らむ


「そこ」


 迷いのない指示


 カイルが踏み込む


「【炎よ】!」


 一点に叩き込む


 ドゴンッ!!


 地面が弾ける


 本体が露出する


 アルトはすでに動いている


「【土よ】」


 地面から槍を生成


 一瞬の迷いもなく突き刺す


 ズドンッ!!


 手応え


 魔物が揺れる


「ミミ!」


「いくよ!」

「拘束最大!」


 光が収束する


 動きが止まる


「終わりだ!」


 カイルが振り下ろす


「【炎よ】!!」


 爆発



 ドンッッ!!!


 本体が崩れる


 腕が崩れ、砂になって消える


 静寂


 ぽたり、とまた水音が戻る


 ミミが座り込む


「はぁ……ちょっと焦った……」


 カイルが息を吐く


「厄介なタイプだったな」


 アルトは立ったまま


 呼吸を整える


 右手の感覚がまだ戻らない


 それでも、軽く開閉する


 問題ないように見せる


 ニナが近づく


 まっすぐに


「……アルト」


「ん?」


「さっき」


 一拍置いて


「受けた」


 アルトは笑う


「避けきれなかっただけだよ」


 ニナは首を振る


「違う」


「後ろに、いた」


 短く、それだけ言う


 アルトの視線が一瞬だけ止まる


「避けたら当たってた」


 ニナが続ける


「だから受けた」


 断定だった


 アルトは少しだけ目を逸らす


「まぁ……そういうこともあるよ」


 軽く流す


 でも、ニナは動かない


「それ、やめて」


 少しだけ感情が乗る


 アルトは一瞬だけ言葉に詰まる


 でも、すぐに笑う


「気をつけるよ」


 それだけ言う


 ニナはそれ以上言わない


 ただ、その視線だけが残る


 四人はまた歩き出す


 さっきより、少しだけ距離が変わる


 アルトを中心に


 自然と囲むような形で


 誰も言わないまま


 守るように


 ダンジョンの奥へ

ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!

もしよかったら感想などいただけると、とっても嬉しいです…!

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