かちわり
巨大台風の中を突き進んでいく氷の船。
エンジンは全開だ。
ものすごい勢いで、風や波が押し寄せてくる。
しかし、ペンギンちゃん船長の操縦によって、氷の船は風や波のすき間をうまくかいくぐっていく。
雨も勢いをましていた。ようしゃなく船全体にふりそそいでくる。
いくら船の大部分を「船用のレインコート」でおおっていても、この雨はきつい。氷の船にとって、強い雨は天敵だ。
ペンギンちゃん船長は船の操縦をしながら、横目で地図を見る。
赤い丸じるしのついた地点はもうすぐだ。そこで『雪だるま作戦』を開始する。
船内放送用のマイクをにぎると、
「今すぐ全員、船の中に避難するように」
船のあちこちで、赤いランプが点めつした。作戦の直前だということを、みんなに知らせる。
甲板にいたロボットペンギンたちが急いで、船の中に駆けこんできた。
数分後にロボットペンギンの一人が、
「全員の避難が完了しました」
報告してくる。
と同時に、ペンギンちゃん船長はマイクに向かってさけんだ。
「『雪だるま作戦』開始!」
そして、雪だるまマークのスイッチを押す。
すると、小さい方の「立ち入り禁止の部屋」で、大きな機械が動き始めた。
船の周囲で変化が起こる。甲板にある大きなパイプから、白いガスが勢いよくふき出し始めた。
そのガスにふれた雨が、一瞬で凍りつく。
この白いガスは「特別製の冷凍ガス」だ。
雨がみぞれに、さらに雪へと変わっていった。その雪が船全体につもっていく。
これが『雪だるま作戦』だ。「雨を雪に変えて、船をおおってしまおう」という作戦。
こうすることで、小さくなってしまった船のサイズを、少しだけ回復させるのだ。
とはいえ、雪でおおっただけでは、雨に弱い。
だから、今度は別のパイプから、「特別製の防水ガス」がふき出した。
甲板につもった雪の表面に、「水をはじく」効果をくわえていく。
それで雨を完全にしのげるわけではないけれど、いくらか時間をかせげるはず。
船につもった雪ががんばっている間は、その下にある氷の部分がとけることはない。
「今の内に、この巨大台風を突破する!」
この『雪だるま作戦』に使う「冷凍ガス」は強力なので、近くにいる他の船なども凍らせてしまう。
だから、インド政府の許可が必要だった。このあたりはインドの海。「使っても大丈夫な場所」を指定してもらったのだ。
船は台風の中心へと向かっていく。
はたして、ペンギンちゃん船長と氷の船は、この巨大台風を突破できるのか。