ボボチャチャ
シンガポールを出発して二日後。
北のマラッカ海峡に進む航路ではなく、南まわりの航路を選択した。
ペンギンちゃん船長は操縦室でずっと、天気予報のニュースと「にらめっこ」をしている。
「これは本気で困ったね」
おそれていたことが起きてしまった。
インド洋で巨大台風が発生したのだ。これから進もうと思っていた航路を、完全にふさいでしまっている。
船の外では早くも、小雨がふり始めていた。
ロボットペンギンたちには今、船の大部分を「船用のレインコート」でおおってもらっている。
この船は氷でできているのだ。そのため、暑さに弱く、雨にも弱い。特に強い雨は天敵だ。
ここまでの旅で、南極を出発した時よりも、船の大きさはかなり縮んでいた。
といっても、もしも天気が晴れなら、インドに着くことはできると思う。
しかし、巨大台風の中を進んでいくとなると・・・・・・。
ペンギンちゃん船長の予想では、
(アウトな気がする)
次の瞬間、ある光景が浮かんできた。インドの陸地を前にして、この船が海にしずんでいく光景だ。
かといって、この巨大台風をよけるのも厳しい。
かなりの遠まわりになるので、日数がかかる。
ここが南極の海なら、少しくらい日数がかかっても平気だけど、ここはインド洋だ。
南極よりも、海の水の温度が高い。そのため、氷は早くとける。
(もしも遠まわりをしたら・・・・・・)
ペンギンちゃん船長は計算してみる。
(だめだ)
インドの陸地を前にして、この船は海にしずむことになるだろう。
となると、今からシンガポールに引き返すか。
しかし、そこで天気が回復するのを待っている間も、この船の氷はとけていく。巨大台風が通りすぎてから、急いでインドに向かっても、間に合わないかもしれない。
ペンギンちゃん船長は考えこむ。
①このまま巨大台風に向かって進んでいく
②巨大台風をよけて、遠まわりをする
③シンガポールに引き返して、天気が回復してから再出発
(この船がインドに到着する、その可能性が一番高いのは・・・・・・)
ペンギンちゃん船長は決断する。
こうなったら、『奥の手』を使うしかない。
ロボットペンギンの一人に指示を出す。
「今すぐインド政府に緊急連絡を!」
あの『奥の手』を使うことができれば、きっとインドにたどり着くことができるはず!