ハロハロ
赤道をこえて三日後。
イルカさんたちと別れた氷の船は、東南アジアの東側にさしかかろうとしていた。
「困ったことになっちゃったね」
ロボットペンギンたちを前に、ペンギンちゃん船長はため息をつく。
昨日の夜から、どうもエンジンの調子が良くないのだ。
壊れている、とまでは言わないけれど、出力が安定しない。
大ざっぱになら出力を調整できるけれど、こまかい調整はむずかしくなっている。船を前に走らせるだけなら問題ないが、小まわりがきかなくなっていた。
この旅も中間地点をすぎている。船のどこかが故障するのは、予想していたけれど・・・・・・。
さっきペンギンちゃん船長は、船全体の点検をしてきた。他に故障している場所はなさそうだ。
調子が良くないのはエンジンだけ。といっても、進むだけなら問題ない。
しかしながら、ここから先は難所が待ちかまえている。
ペンギンちゃん船長は、東南アジアの地図と「にらめっこ」をした。
島がたくさんある。島と島との間がせまくなっている場所も多い。
小まわりがきかないとなると、船が進むことのできる航路は限られてくる。島と島との間が広い場所を進んでいくしかない。
どの航路をえらぶのか、頭の中で考えるペンギンちゃん船長。
他の船があまり使わない航路がある。
島と島の間をちまちま進むのではなく、東南アジアの南側の海を進んでいく航路だ。他の航路よりも遠まわりになるけれど、その航路には島がほとんどない。
そして、途中でシンガポールに寄る。
そのあと、多くの船は北の「マラッカ海峡」を進んでいくが、その航路を今回は使わない。というか、使えない。
マラッカ海峡の内側はいつも、たくさんの船で混雑しているのだ。今のエンジンの調子では、不安がある。小まわりがきかないので、他の船とぶつかってしまうかもしれない。
なので、シンガポールから先は、北の「マラッカ海峡」に向かうのではなく、南まわりに進む。移動する距離は長くなるけれど、広い海の上なら、小まわりがきかなくても何とかなる。
「インドまでもう少し」
ペンギンちゃん船長はつぶやく。そこが旅の最終目的地だ。
南極を出発して、およそ二週間。
ペンギンちゃん船長は二つのことを心配していた。
(このままエンジンが、最後までもってくれるといいけど・・・・・・)
もう一つは、シンガポールの先。
南まわりに進むのなら、最後に「最大の難所」が待ちかまえている。
大型台風が発生しやすい海域だ。
そこさえ無事に通過してしまえば、インドにたどり着くことができるけど、はたして・・・・・・。