レインボー
ペンギンちゃん船長の船は、夜の海を進んでいく。
昼間は日差しが強いけれど、夜はそれを気にしなくていい。お日さまはお休み中だ。
とはいえ、南極の海とくらべて、赤道近くの海は水の温度がかなり高い。その分だけ、氷はとけやすくなっている。
この氷の船が半分以上とけてしまう前に、目的地にたどり着かなければならない。
船の甲板では、ロボットペンギンたちが夜用の双眼鏡をのぞいていた。
この双眼鏡なら、夜でも昼と同じように、遠くのものを見ることができる。これで他の船を見つけるのだ。
「前から大型客船が来ます!」
知らせを聞いたペンギンちゃん船長は、
「進路を変更!」
船の向きを少しだけ変えた。
夜は暗いので、気をつけていないと、船と船とがぶつかってしまう。そんな事故が、たまにあるのだ。
この時、海中にも「進路を変更します!」と伝えるのをわすれない。
海中には今、たくさんのイルカさんたちがいるのだ。旅行会社のお客さんたち。
ここまでの道のりで、あちこちの島に立ち寄っていた理由が、これだった。イルカさんたちをむかえに行っていたのである。どの島も、各旅行会社が「お客さんたちの集合場所」に使っているのだ。
赤道近くの海は水の温度が高い。しかし、この氷の船の近くにいれば、とても涼しいのだ。イルカさんたちは快適におよぐことができる。
しかも、船ぞこの下には、すてきな休けい所がついていた。『のんびりイルカさん旅行会社』などの各旅行会社が、いっしょに使う休けい所だ。
この休けい所は、船と一体化している。なので、急な「進路変更」をすると、休けい所もゆれるのだ。イルカさんたち、こわがらせてごめんなさい。
さらに、ペンギンちゃん船長はロボットペンギンたちに指示する。
すると、この船の甲板から、色とりどりの光が点めつした。
これで大型客船の方も気づいたらしい。
二つの船が通りすぎる。何の事故も起こらなかった。
ホッとするペンギンちゃん船長。
壁の時計を見ると、だいたい予定通りだ。船は順調に進んでいる。「明日の日の出」までに、赤道をこえることができそうだ。
(そのあとは・・・・・・)
操縦室のテーブルに、大きな地図を広げる。
今いる場所に、船の形をした玩具を置いた。
それを赤道の先まで動かしてみる。何の問題もなければ、この地点に到着するのは、「明日の日の出」直前になるだろう。
赤道をこえたら、そこから先は進路を北ではなく、西へと向ける。東南アジアを目指すのだ。
この旅もそろそろ中間地点をすぎようとしている。
(旅の最後まで、何の問題も起きないといいけど)
ペンギンちゃん船長は窓から星空をながめる。大嵐が来そうな気配は、今のところなかった。