ブルーハワイ
オーストラリアの港を出発して、北に進むのも数日めだ。
ペンギンちゃん船長は水着姿で甲板にいた。ビーチパラソルの下でのんびり、トロピカルジュースを飲んでいる。
氷の船は小さな島の横に停止していた。
もう少しで赤道に着く。
このあたりはものすごく暑い。今の気温はたぶん四〇度以上だ。昨日の昼に温度計が壊れたので、正確な数字はわからない。
この船は氷でできているから、暑さに弱いのだ。氷がとけるのを、少しでもおくらせるために、船の表面には黒いシートをかぶせている。移動するのも、夜の間だけだ。
ロボットペンギンたちが三時間おきに、船のあちこちを走りまわっている。船の氷がどのくらいとけているのか、「まきじゃく」で長さをはかっていた。
今どんな感じになっているのかを聞いたあと、ペンギンちゃん船長はつぶやく。
「まだ大丈夫とは思うけど、少し急いだ方がいいかも」
氷がとけすぎてしまうと、この船は目的地にたどり着けない。
できれば今夜、この島を出発したいけれど・・・・・・。
むぎわら帽子を顔の上にのせると、ペンギンちゃん船長は「おひるね」を始めた。
三時間後にまた、ロボットペンギンたちがやってくる。船の氷がどのくらいとけているのか、それを伝えにきたのだ。
ペンギンちゃん船長は顔の上から、むぎわら帽子をずらした。
夕やけが見える。暑さも昼間ほどではない。水着だと少し肌寒いくらいだ。
「さて、今夜は出発できるかな」
ペンギンちゃん船長は起き上がると、自分の部屋へと歩いていく。
自分の部屋でセーラー服に着がえてから、船の操縦室に向かった。
ロボットペンギンたちが無線通信をしている。
ペンギンちゃん船長はたずねた。
「どう?」
「あと一つです」
ロボットペンギンの一人が報告してくる。
さらに別のロボットペンギンが地図を持ってきた。
「今のところ、こんな感じです」
地図には赤いペンで、文字や数字が書きこまれていた。書きこみがあるのは、どれも小さな島ばかりだ。
「なるほどね」
地図を見ながらペンギンちゃん船長は、これからの航路を頭の中で考える。
途中で立ち寄らないといけない島はわかった。少し急げば、「明日の日の出」までに、赤道をこえることができるかも。
「最後の旅行会社とも連絡がとれました」
ロボットペンギンの一人が言う。
そして、地図に赤いペンで文字と数字を書きたした。
この近くの島だ。
ペンギンちゃん船長はうなずく。この島で待っていてくれるのなら、今考えていた航路を変更しなくてもいい。
よし。明日の日の出までに、赤道をこえよう。
ペンギンちゃん船長は決心すると、
「船のエンジンを動かす前に、海中にいる『のんびりイルカさん旅行会社』に連絡すること。この船は一時間後に出発する」
ロボットペンギンたちが出発の準備を始めた。