コーヒー
氷の船が激突するのと同時に、一列めにあった『タイヤ舟』の多くが、空へと跳ね飛ばされていた。
二列めもほとんど同じだ。『タイヤ舟』の半分以上が、空へと跳ね飛ばされている。
そして三列め。『タイヤ舟』の半分以上が無事だ。
氷の船の方が、うしろに跳ね返されている。
そのまま後退していく氷の船。もうスピードは出ていない。あと少ししたら、勝手に止まるだろう。船のおしりから出ているパラシュートも、どんどんしぼんできている。
ペンギンちゃん船長の作戦成功だ。あれほどの衝撃だったのに、氷の船はほぼ原形を留めている。
しかし、港にいる人々は見た。
船の操縦室があるあたりに、『タイヤ舟』の一つが突っこんでいたのだ。かなりの破壊力があったみたいで、大きな氷の塊が周囲に散らばっている。
港にいる人々は青ざめた。
あそこには、ペンギンちゃん船長がいたはず。
まさか・・・・・・。
ロボットペンギンたちが操縦室の近くに集合していた。大きな氷の塊を移動させている。そうしなければ、操縦室の中に入れないのだ。
緊張の時間がしばらく続く。
氷の船は完全に止まっていた。インドの救助船が次々と港から出ていく。
そんな時だ。途切れ途切れの通信を、港の灯台がキャッチした。
「・・・・・・こちら・・・・・・船長・・・・・・」
ペンギンちゃん船長の声だ。雑音が混ざっていて、かなり聞き取りにくいけれど、ペンギンちゃん船長の声でまちがいない。
そして、数分後。
「助けてくれてありがとう」
ペンギンちゃん船長が操縦室の中から出てきた。
ロボットペンギンたちに両肩をささえられている。大きなケガはしていないようだ。
つかれた顔をしているけれど、口は笑っている。
ロボットペンギンたちに体をささえてもらいながら、船の先端へと歩いていった。
そこでペンギンちゃん船長は、港に向かって大声を張り上げる。
「ご注文の荷物を届けに来ましたー!」
氷の船はインドに到着。南極からの旅が終わった。