コーラ
インドの港を前に、ペンギンちゃん船長は船の操縦をしていた。
蛇行運転をやめて、船をまっすぐ進ませている。
思っていたよりもスピードが下がらなかった。この速度だと、何が起こるかわからない。
大事故になるかもしれないので、船の操縦をロボットペンギンたちに任せるわけにはいかなかった。この船を守るのは、船長の役目だ。
ペンギンちゃん船長はペンギンの着ぐるみ姿の上から、黄色い救命胴衣をつけていた。頭には、黄色いヘルメットをかぶっている。
この時、船のあちこちにいるロボットペンギンたちも全員、救命胴衣とヘルメットをつけていた。
それぞれの作業をこなしながら、ペンギンちゃん船長を信じている。
あの女の子は南極で一番、船の操縦がうまいのだ。このピンチも、きっと切り抜けてくれるはず。
船の先端には、浮き輪やボートをたくさんぶら下げていた。船の中にあった全部だ。
あまり効果はないかもしれないけれど、何もしないよりは「まし」だろう。激突する時の衝撃を、少しでも弱くしたい。
また、船のおしりからは、大きなパラシュートが開いていた。
もしもの時に船から脱出するための「大型気球」。それを大急ぎで改造して、「パラシュート」にしたのだ。
パラシュートの内側に、たくさんの風が入りこんでくる。それによって、ブレーキのような効果が生まれていた。少しずつではあるものの、船の速度が下がっていく。
この「パラシュートによるブレーキ」という方法、普通は小型飛行機で使うものだ。短い時間で一気に速度を下げることができる。
それを飛行機ではなく、船でやろうというのだ。
これこそが、ペンギンちゃん船長の秘策である。
でも、まだかなりのスピードが出ていた。
あとは『タイヤ舟』に任せるしかない。
「3!」
ペンギンちゃん船長が船内放送で告げる。
ぶつかるまでのカウントダウンだ。「1」を告げた直後に、この船は『タイヤ舟』の列に激突する。
「2!」
船のあちこちにいるロボットペンギンたちは、作業を中断した。自分の近くにある「手すり」につかまる。
「1!」
ペンギンちゃん船長が告げた直後に、氷の船が『タイヤ舟』の列に激突した。
ものすごい衝撃が船全体を襲う。
さらにロボットペンギンたちは、ペンギンちゃん船長の悲鳴を聞いた。