カルピス
インドの港は緊張につつまれていた。
港の出入り口近くの海上に、たくさんの『タイヤ舟』がならんでいる。
横に長い列が、前後に三つだ。横にならんだ『タイヤ舟』同士は、鋼鉄のロープでつながっている。
沖の方から順に、第一列、第二列、第三列で、列と列との間はそれぞれ、五〇メートルあいている。
ペンギンちゃん船長の連絡を受けて、急いで用意したものだ。
氷の船はブレーキが故障している。ここに間もなく、猛スピードで突っこんでくるらしい。
はたして、この『タイヤ舟』の列で食い止めることはできるのか。
列は三つあるけれど、はっきり言って「厳しい」と思う。
ペンギンちゃん船長には、他に何か秘策があるみたいだが・・・・・・。
灯台から連絡がある。
「沖に船を発見!」
氷の船だ。
「かなりの速度が出ています! 港の方に向かってきています!」
ペンギンちゃん船長の船でまちがいない。
「船は蛇行運転しています!」
少しでも速度を下げるためだろう。ずっと直線で走るよりは、ぐにゃぐにゃに走った方が、速度を下げることができる。
しかし、それにも限界があった。おそらく、あれが精一杯。
港にいる人々は嫌な光景を想像をしてしまう。『タイヤ舟』の列がすべて突破されて、あの船が港に乗り上げてくる光景を。
次の瞬間、異変が起こった。氷の船が蛇行運転をやめたのだ。直進してくる。
「ペンギンちゃん船長は何を考えているんだ?」
この直後、氷の船のおしり側から、「あるもの」が出現した。
「あれは・・・・・・パラシュートか?」
その通り。氷の船は今、後方に大きなパラシュートを開いていた。
普通の船に、「あんなもの」はついていない。