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世界に色がついたころ

作者: 噺 角蔵

 晴れてても、晴れたと感じない、感じられない日常を送っていた。きっと私は変わってしまったのだ。もう二度と、世界に色を感じることがないのだろうと、そう思っていた。

 暗くて良い、このままで良い。でも、願わくば早く世界が無くなれば良い。ずっとそう思っていたし、これからもそうやって時間が過ぎるのを待つのだろうと、そう思って疑わなかった。

 ヒーローなんて、現実にはいやしないし、いたところで、きっと私のような小物には目もくれない。あの頭にあんこが詰まったヒーローは、この世のどこにもいやしないのだ。


 幸福とは?

 生きるとは?

 寂しいとは?


 何度自分に問いかけても、わからなかった。あの時の私には、きっと感情なんてなかった。生きている、けど、死んでいた。


 全てがつまらない、全てがどうでもいい。


 時間だけが、ただただ憎くて、この若い体もいらなくて、もう全てを終わりにしたかったし、して欲しかった。

 涙は幾度と流れるのに、何で泣いているのかも、もうよくわからなくなっていた。


 助けてって言えば、助けてくれた?

 否定しないでって言えば、受け入れてくれた?


 きっと答えはNoだ。聞くまでもない。


 否定して、詰って、痛めつけて、お前は下の人間だと言い聞かせて。

 今思うと、凄く可哀相な人達だったと思う。あいつらの声なんか、聞かなければよかったと、本当にそう思う。

 そんな奴等に世界の色を奪われた。

 もう誰も信じない。信じてはいけない。何も感じたくないし、感じられない。


 君と出会って、劇的に世界が色付いた、なんてことは無かった。だって君も色を無くしていたから。

 君の世界に、色を取り戻さなければいけない。自分のことよりまず先に、君の世界に色をつけたかった。君は色んなことに怯えていたから、まずはそこから。二人でいれば怖くない、そう伝えるので精一杯だった。

 この人は一人にしてはいけない。本能的にそう感じていた。君を守ることで、少しずつ、私の世界には色が戻ってきていた。それはあまりにゆっくりで、何年もかけてじっくり見ないとわからないほどに微々たるものだったけれど、そこに確実に存在していたし、感じれるようになっていった。

 共依存でも、なんでも良い。君には私が、私には君が、どうしても必要だったんだ。

 お互い、笑顔が増えてきた。やれることも、少しずつだけど、増えていった。

 世界との共通点が増えてきた。私はもう死んでいないし、感覚も戻りつつある。


 幸福とは?

 生きるとは?

 寂しいとは?


 もうそんなこと考えない。君といられれば大丈夫。強いて言うならば、君といることが幸福で、君と歩むのが人生で、君と離れた時に感じる感情が寂しさなんだと思う。

 

 世界に色がついたころ、私は幸福を噛み締めていた。

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