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茶道部の出来ごころ 〜茶道部の犬に、先輩のオッパイは揉めない〜  作者: 工藤操
第8章 宇宙からのメッセージ
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8-3 清楚な花には毒がある

「で、結局、何をどうしたいんです?」


 気がつくと全く話が進んでない。

 せっかく先輩には黙ってもらってるのに、それでも横道に逸れまくってる。


「ここ、ハッキリさせたいんですけど、高橋さんは彼氏と復縁したいんですか?」

「違う。別れてない。あたしがフラれるとか無いから」


 キッパリと言って、ソファの上にあぐらをかく。

 むくれているけど、バンツ見えそうって指摘した方がいいのかな?


 清楚な容姿で下品な仕草が板についてる。

 この人、ホントに清楚なのは見た目だけっぽい。


 とりあえずパンツの件は無視しよう。


「えーと、謝りたいとか、事情を説明したいとかですか?」

「は? なんであたしが謝るの?」


 ものすごい顔で睨まれてしまった。


 すごい価値観の相違を感じる。

 彼氏以外の男と《仲良くしてる》のを全く悪いと思ってない。


 復縁、謝罪でないのなら、あと残るのはなんだろう?


「つまり、えーと。高橋さんは彼氏の無事を確認したい、という話でいいのでしょうか?」


 行方を案じてるとか、心配している。

 当たり前すぎて聞かなかったんだけど、付き合っているのなら当然の話だ。


 なのに高橋はそれすらも否定した。


「あたしの事をほっとく男なんて、どうでもいいよ」

「え? そうなの?」


 これ、何が問題なんだ?


 彼氏と音信不通になった。

 でも、それは『どうでもいい』と言い切った。


 僕らは何の相談を受けているんだ?


「あのね、もうすぐクリスマスでしょ?」


 困惑している僕に、高橋は噛んで含めるようにして言い聞かせる。


「クリぼっちとか絶対やだし、あいついないんなら他の男見つけたい」


 ちょっと予想してなかった種類の相談だ。

 まさか《男を紹介しろ》とは思わなかった。


「残念ですが、僕、友達がいないので紹介できる人がいないんですよ」

「それは見てわかる。魔法使いだし」


 クスッと笑顔で言うところは、上品で可愛いと言えなくもないんだけど。

 毒が入っていそうな清楚さなのでなるべく敬遠したい。


「新しいパートナーが必要でしたら、オカルト研究会へ行って見たらいかがでしょう? 少し費用はかかりますが、確実なカップリングを保証してくれますよ」


 面倒くさいので他にブン投げようと企んだが、絢香さんに阻止された。


「オカ研は、こないだの件で活動自粛中。次やったら学校に報告するって釘刺してある」


 ちくしょう。他力本願は無理か。

 あからさまにがっかりした僕への慰めのつもりか、絢香さんがスカートから取り出した羊羹を手渡してくれる。


「あのね、あたしとしては行方不明になっている生徒がいるってトコが重要で、あんたたちを呼んだのよ。他の男を紹介する方向へ話を持ってかないで」


 絢香さんから、もっともな事を言われてしまった。

 まあ、そうでもなきゃ急に呼び出すわけもないか。


「えーと、それでは高橋さんの彼氏を見つければいいんですよね?」


 いちおう本人にも確認を取ったら、すごく不満そうな顔で頷いた。


「クリスマスに間に合うなら、それでもいい」

「そんなにクリスマス、大事ですか?」


 正直、よく分からない。


 高橋の話を聞いていると、大切なのはクリスマスというイベントであって、彼氏ではなさそうだ。


 僕ならよく知らない誰かと出歩くより、普通に先輩と一緒にいたいけどな。

 そうじゃなきゃ一人でいいや。


 そんな僕の気持ちを察したのか、高橋はため息交じりに説明してくれる。


「私は魔法使いとは違うの。クリスマスにボッチなんて惨めじゃん。これだけ放っとかれたんだから、プレゼント頑張ってくれないと」

「それは本人に言ってくださいね」


 僕らはどこにいるのか探すだけ。

 それ以上のことはしないと言外に含ませる。


「で、音信不通になった彼氏なんですけど、家には帰っているんですよね?」

「さあ?」


 眉間にシワを寄せて首をかしげる。


「あたし、あいつの家なんか知らないもん」

「いちおう聞きますけど、家の住所や電話番号は?」


 ダメ元で聞いたが、もちろん知らなかった。


 結局のところ、現状で判明しているのは。


 スマホ、繋がらない。

 SNS、更新してない。返信もない。

 最近、校内で姿を見かけない。


 の三点だけだった。


 これだけで音信不通と言い切るには弱すぎないか?

 ただ単に嫌われてるだけなんじゃないのか?

 ちょっと頭を抱えたくなった僕に代わって、ずっと黙っていた先輩が口を開く。


「仕方ないな。彼の個人情報は生徒会の方で調べてみよう」


 本当はこういう利用の仕方はダメなんだけどな、とぼやきながら問う。


「君の彼氏の名前と学年、クラスを教えてくれ」

「さあ? 聞いたことないから知らないし」


 堂々とした態度で高橋は言い切った。

 さすがに先輩も唖然としている。


「待て。それ、おかしくないか? 好きな男の名前も知らないのか?」

「告白してきたのアッシーからだし、それで不便なかったから」


 さすがにどうかと思うのだが、よく考えたら僕も生徒会の選挙まで先輩の名前を知らなかったから、あまり多くを言えない立場だ。


「プロフィールとかカタログスペックと付き合うんじゃないんだし、アッシーはアッシーじゃん? それでなんか問題あるの?」


 まあ間違ってはいないんだよ。

 僕もそう思っていたし、それで問題があったわけじゃないから。


 とは言え、ここで話を終わらせるわけにもいかない。


「えーと、いちおう確認しますが、その彼氏って実在しているんですか?」


 けっこう失礼な質問だったが、高橋は怒るわけでもなくスカートからスマホを取り出した。


「写真あるよ。見てみる?」


 そう言ってスマホの画面を僕らに向けた。

 画面の中には、僕と同じ制服を着た男子の姿が写っていた。


 ……写ってはいたんだけど。

 これ、本当に実在してるの?

 ほとんどCGみたいな写真だぞ。


「すいません。もう少し加工してない写真はないでしょうか?」

「何それ? ちょっと失礼すぎるよ!」


 高橋はブンむくれながらスマホをスカートにしまった。


 ……だって 宇宙人みたいな顔の男が写っていたんだもん。


 こんなんで個人を特定しろって言われても困る。

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