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茶道部の出来ごころ 〜茶道部の犬に、先輩のオッパイは揉めない〜  作者: 工藤操
第5章 遥かなるアトランティス
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5-12 邪魔は入らないので、ごゆっくり

 ……もちろん怪しいとは思っていたんだ。


 先輩の家の玄関先に座り込んで、しみじみと考える。


 過去の例から考えても、先輩が素直に胸を触らせてくれるワケがないし、いきなり自宅に招待するというのも不自然だった。


 そもそも《その先》が何なのか、先輩は一度だって明言していない。

 彼女の思わせぶりな態度に、僕が勝手に誤解をしたと言われればそれまでだろう。


 思い返せば先輩が明言していたのは『今日は家に誰もいない』と『手料理を食わせてやる』の二つだけだ。


 だから先輩の家にホントに誰もいなくて、留守だったのは怒っても仕方ない。

 こんな古典的なネタに引っ掛かった僕が悪い。


 一度帰宅してから来い、と先輩が言い出した時点で、このオチは予想すべきだった。


 でもさ、玄関の所に、大きな皿に山盛りのカレーが置いてあって、


《邪魔は入らないので、ごゆっくり》


 の置き手紙は酷すぎる。見た瞬間に膝から力が抜けてしまった。


 そりゃ確かに手料理だけどさ。

 先輩の手作りは嬉しいんだけど。

 エサじゃないんだし、あの人、やっぱ僕を犬だと思ってないか?


 それとも誰もいない家の玄関先で、中途半端に冷めた大盛りカレーを食すのが、先輩の言う《その先》なのか?


 正直なトコ、先輩の豊かな胸の谷間に熱いカレーと炊き立てのご飯を盛りつけて、スプーンでかき混ぜながら《その先》ってのはこの事かと小一時間、問い詰めたい気分だ。


 やらないけどさ。


 別に、そこまでして先輩の胸が揉みたいワケじゃないんだ。


 無理やり触っても楽しくなさそうだし、僕が本当に触れたいのは彼女の胸じゃなくて、精神とか魂みたいな物なんだ。


 だから学校の外でも彼女と時間を共有できる事が嬉しかったのにさ。本気で楽しみにしてたのに。


 玄関扉の前に座り込んで皿のラップを外す。

 一口食べてみたら普通に美味しかったから、なんか泣けてくる。


 いままで何度も約束を反故にされてきたけれど、一度も本気で怒らなかったのは先輩が一緒にいてくれたからなのに。


 そこを彼女は全く分かってくれてない。


 都合がいいだけの後輩では、きっと彼女の精神や魂に触れる事はかなわないだろう。

 先輩の全てに触れるなんてとても無理な話だ。


 それでも僕は諦めずに腕を伸ばし、せめて彼女の一部にだけでも触れたいと願う。


 僕が触れる事のできない部分は、僕にとって存在しないも同然なのだからそれでいい。

 ほんの一部でも触れられるのなら、それが僕にとって彼女の全てになる。


 なので僕は、ここでカレーを食べながら先輩を待つ。

 彼女が戻ってきたら、僕はもう一度、今度こそしっかり両腕を伸ばすのだ。


 ——ところで言うまでも無いのだが、僕が彼女から触るのを許可されたのは胸だけである。

 他の部分は許可されてないから触れない。


 触れられない所は無いも同じだ。


 つまり僕にとっては、先輩の胸こそが《彼女の全て》だと言い切れる。


 すなわち先輩とはオッパイの事であり、彼女の精神とか魂もオッパイにある。


 僕が先輩の胸を触りたいと思うのは、決していやらしい気持ちの表れなどではなく、彼女の魂を求めるあまりの、ごく自然な成り行きであると言えるだろう。


 ——逃がすもんか。


 金属のスプーンを握りしめながら、僕は強く決意する。


 絶対に揉む。


 嫌がっても叫んでも、無理やりにでも揉んでやる。

 カレーとご飯を盛りつけて、千切れるくらい揉んでやる。


 一晩中揉み続けてやるから、覚悟しろ。

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