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茶道部の出来ごころ 〜茶道部の犬に、先輩のオッパイは揉めない〜  作者: 工藤操
第5章 遥かなるアトランティス
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5-7 エッチな事をして欲しいのかと

 急いで記憶を手繰り、思いついた事が実行可能か検証してみる。


「……ねえ、早瀬さん」


 僕が呼ぶと、彼女はニヘッとした笑顔を返してくれた。


「みゆきでいいよ。仲がいい人はみんなそう呼ぶし」


 そういう馴れ馴れしいのは苦手なんだけどなぁ。


「えーと、じゃあ、……みゆきさんに一つお願いしてもいいですか?」

「え? 何? いいよ。ポチくんの頼みなら何でもするよ」


 気安く言うので思わずエロい事をお願いしたくなったが、それは後回しだ。


「あのですね、もう少しだけ僕の近くに座ってもらえませんか?」


 僕らの間にある五〇センチの距離を詰めてくれとお願いしたら、


「これでいいの?」

「いや待って! 膝の上に乗ってくれとは言ってないから!」

「そうなの? エッチな事をして欲しいのかと思ったのに」


 こっちの内心を見透かしたような発言にドキッとするが、なんとか笑顔で乗り切った。


「みゆきさんと、普通に世間話がしたいだけです」


 すぐ隣に座り直した彼女とピッタリ体を密着させた姿勢で言い分けじみた事を言ったら、ふーん、と意味あり気な笑顔を作って、


「じゃ、話題は何でもいいのね?」


 念を押すように僕の目を見た。

 ホントにどうでもよかったので素直に頷くと、


「ポチくんは中身が大好きな人とどうなりたいの?」


 すかさず、さっきの話題を蒸し返してきた。


「どうもこうも、あの人、僕を犬かなんかと思ってますよ?」


 大真面目に答えたつもりなのに、彼女が大笑いしているのは何故だ?


「ダ、ダメだ、あんたたち。心底ダメだ。ここまでとは思わなかった」


 目に涙を浮かべて、まだみゆきさんは笑ってる。


「ねえねえ、あいつに告白とかしないの?」

「こっちの気持ちを一方的に押し付けるのは、迷惑になりますよ」


「でも告白したら、何か変わるかもしれないじゃん?」

「……犬に告白されて喜ぶ人はいないんじゃないかなぁ」


 想像してみれば分かるのだが、ある日突然、飼い犬がバリトンの日本語で「愛してる」なんて告白してきたら、それはもうホラーだ。怖すぎる。


「大丈夫! 世の中には特殊な性癖を持った人が——」


 そこまで言ってこらえ切れなくなったのだろう。体を二つに折って爆笑している。


「……く、苦しい。お腹イタい。もう、やだなぁ。ポチくんたらジョークが上手いんだから」


 息をゼイゼイさせながら、また僕の肩をバシバシ叩いている。

 何一つ、冗談を言ったつもりは無いんだけど……。


 いったい何がそんなに彼女のツボに入ったのだと悩んでいたら、校舎の方から大声がした。


「みゆき!」


 振り返れば、先輩が校舎のドア開けて、こっちへ走って来るところだった。


「あらら、あいつに見つかっちゃった」


 目尻の涙を指で拭いながらみゆきさんは言うが、


「先輩は最初からずっと見てましたよ」


 廊下の窓から顔が見えてたので、すぐに気がついた。

 よほど急いできたのだろう。長い髪を乱して肩で息をしている。


「ど、どういう事なんだ、みゆき?」


 額の汗を手で拭いながら先輩が問うと、みゆきさんはバツの悪そうな笑みで、


「ごめん、ちょっと借りてた」


 右手を上げて拝むような仕草をした。


 先輩は身体ごとクルッと向きを変えて、


「そうなのか? やはり経験豊富な方がいいのか?」


 僕の両肩を掴んでガクガクと揺する。


「……先輩、何の話をしているんです?」


 彼女が答えるよりも先に、横からみゆきさんが口を挟む。


「少しくらい、いいじゃん。羨ましかったんだよ。ほら、腕だって組んじゃうもんね」


 日焼けした細い腕が、するりと僕の腕に絡む。


「ポチ、私の時はあんなに嫌がっていたのに!」


 だって先輩と腕を組むと、僕の肘に胸が当たるんだよ。


 なんか後ろめたいじゃん?


 衆人環視の中で先輩とみゆきさんが大騒ぎをしていたら、梶崎が怒りで顔を朱に染めながらこっちへ歩いてくるのが目に入った。

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