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茶道部の出来ごころ 〜茶道部の犬に、先輩のオッパイは揉めない〜  作者: 工藤操
第2章 新世界のアダムとイブ
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2-5 隠滅された証拠

 何だか、ややこしい話になってきたなぁ。


 助言が欲しくて隣の先輩へ視線を向けると、ぼんやりと退屈そうに窓の外を眺めていた。


「ねえ、先輩もそこでつまんなそうな顔してないで、何か言って下さいよ」

「うん、ポチが山本とばっかり話しているから、つまらないんだよ」

「あのね、これ、先輩が持ってきた話だから!」


 実は、とっくに相手をするのが面倒くさくなっていたらしい。

 切れ長の目を細めて無表情になっているが、全身から『もう帰りたい』というオーラが出ている。


 途中で嫌になるくらいなら、こんな相談、引き受けないで欲しいのに。


 とりあえず、すっかりやる気を失った先輩は放っておく事にして、改めて僕が話を続ける。


「えーと、フッコとセイゴの写真は持っていますよね?」


 すぐに山本は制服のポケットに手を入れる。


「あったかなぁ。フッコの写真だけはデーターが消えちゃってるんだよ」


 独り言みたいに言いながらスマホを操作しだした。


 ……今の言葉、ちょっと引っかかるぞ。


 他のデータやアプリはそのままと言っていた。

 なのにどうしてフッコの写真だけ消されてるんだ?


 どんな意図があって、そんな事を——。


「あ、あった。二人が写ってるのはこんなのしかないぞ」


 考えがまとまる前に山本がスマホの画面を僕に向けてきた。

 僕が覗き込むのに合わせて、集合写真に写っている二人の女の子を拡大してくれる。


「……明らかに別人ですね」

「うん。髪形やメイクで別人に見えている線は消えたな」


 先輩も僕に肩を寄せて、横から画面をのぞき込みながら頷いている。


「フッコは料理研究会でね。文化祭の出し物も、彼女の指導あっての賜物さ」


 その言葉を聞いて、急に先輩が感心したように頷いた。


「文化祭は好評だったな。釣り同好会が喫茶店とは意外だったが、評判は耳にしているぞ」


 へー、そうなんだ。文化祭なんかまともに参加しなかったから知らなかった。


「部員が釣ってきた魚を捌いて提供したんだ。素材と味にこだわったから大盛況だったぞ。驚くほど儲かったよ」


 ……ん? 


「その発言、おかしくないですか?」


 考えがまとまる前に話が次に行ってしまわないよう、声に出して《待った》をかけた。


 うちの文化祭ではトラブルを避けるために、販売系の出店は全てチケット制になっている。


 最終的には集めたチケットを生徒会が現金に精算してくれるのだが、赤字を出したトコに補填してから残金を比例分配するから、大きく儲かるなんてありえない。


 なのに儲かったと言うことは——。


「……もしかして文化祭で直接、現金のやりとりをしてましたか?」


 これ、追求すべきなのか迷って先輩に視線を向けると、彼女は僕らに背を向けて窓の外を眺めていた。


 どうやら面倒くさいから聞かなかった事にするつもりらしい。


 こういうトコ、先輩は大らか、というか大ざっぱだ。


 みんなには真面目で神経質な生徒会長と思われているが、実際の彼女は面倒くさがりでいい加減な人なのだ。


 最近になって少し分かってきたのだが、この人が普段あまり感情を表に出さないのは単に面倒くさいからだと思う。


 クールなのではなく、ものぐさなのだ。


 だんまりを決め込む先輩に対し、山本はやましいトコがあるのだろう。

 やたらと饒舌に語り出している。


「それは君の勘違いだ。俺たちはルールを破って現金商売なんかしてない。部員が釣った魚だから仕入れ原価がタダ同然なんだ。お客の入りだって他とは比較にならないほど盛況だった。儲かる事に不自然はないだろ?」


「いや、不自然ですよ。魚料理メインの喫茶店なんて普通は入りたくないですから。居酒屋じゃあるまいし、魚料理とコーヒーで盛況なのは、なんかおかしいです」


「いや、居酒屋なんだよ」

「……はい?」


「俺たちは文化祭で居酒屋を出店していたんだ」

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