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茶道部の出来ごころ 〜茶道部の犬に、先輩のオッパイは揉めない〜  作者: 工藤操
第11章 友よ、秘密の図書館で会おう
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11-1 家宅捜索

 先輩は最近ずっとスカートの下にジャージを履いている。

 裾を上げてスカートの中に隠すこともしないで、足首までしっかりと覆っている。


 今日も先輩はスカート+ジャージの格好で僕の前に正座している。

 午後の授業が体育だったわけでもないし、もちろんこれから体育の補習があるわけでもない。


 休み時間の教室移動ですれ違ったりするときは、普通の格好をしてるのに。

 お昼休みと放課後、僕と顔を突き合わせるときに限ってスカートの下にジャージを履いている。


「……あの、先輩。そのジャージなんですけど?」


 静かにお茶を飲んでいる先輩に尋ねると、彼女は興味なさそうな顔で僕に視線を向ける。


「冷えるからな」


 それだけ言って、またお茶を啜る。


 絶対に嘘だ。


 部活が終わって帰宅するときは脱いでるんだもん。

 放課後だって生徒会室にいるときにはジャージを履いてないのも知っている。

 僕の前でだけ下半身をガードしているのだ。


 理由に心当たりはあるんだけどさ。

 見えなかったって言ったのに、全く信じてくれないんだから。


 まあ、そんな先輩もかわいいんだけど。


 セーラー服のスカートにジャージなんて、雑な格好をしている彼女の姿は新鮮で楽しい。


 ちょっと田舎の中学生みたいなかわいさがある。

 実際の中学生だと、いっそジャージ登校だったりするんだろうけど。


 ともあれ先輩が『冷える』というのなら、昨年からの懸案を解決するチャンスだ。

 

「寒いというのでしたら、やはりコタツを発掘しませんか?」


 押入れを指差して提案してみる。

 うっかり手を付けると1日潰れしまいそうなくらい、いろんな物が押し込まれているから、ずっと手を出せずにいた。


 だけど、そろそろ頃合いだろう。

 このままボンヤリしてたら春になり、一緒のコタツに入るチャンスを逃してしまう。


 僕の提案に彼女は小さく頷いて、やがて厳かな口調で言う。


「ポチ、君はエロ本が好きかね?」


 ……コタツとエロ本にどういう関係があるんでしょうかね?


 ホント、この人って僕の話を聞いてないよね。

 庭で犬が吠えてるくらいにしか思ってないんじゃないだろうか。


「えーと、そういうのって18禁だと思いますから、見たことないんですよね」


 何を聞かれているのか分からないから無難な答えでお茶を濁しておく。

 それもそうか、と先輩は呟き、改めて僕の顔を見る。


「つまり興味はあるわけだな?」


 そんな睨むように聞かれても。

 どう『つまり』なのか、さっぱり分からない。


「えーと、見たことない物ですから、どんなのかなって思いますよ」


 先輩は僕の答えに満足そうに微笑み、手に持っていた湯呑みを畳の上に置く。


「ふむ。実は廊下にエロ本が落ちていてね。持ち主を探しているんだが、手がかりがなくてな」


 そう言って彼女がバッグから取り出したのは、確かに『エロ本』だった。

 なにしろ表紙からして全裸の女性なので、一般の雑誌や写真集でないことが一目で分かる。


「いまどき紙のエロ本ですか?」


 ちょっと驚いてしまった。

 書籍やコミック雑誌ならともかく、エロを紙で欲しいか?


 先輩は少し小首を傾げて、不思議そうに僕の顔を眺めている。


「ふむ、こういうエロ本は珍しいのかね?」

「モノがあると隠し場所に困るんですよ。思春期の男子が親に見られたいものじゃありませんから」


「なるほど。そういうものか」


 僕の説明に彼女は感心したような声を出す。

 胸の下で腕組みをして、少し思案してから僕を見た。


「今度、君の部屋に行って家捜ししてみよう」

「やめてください! そんな面白いものは出てきませんから」


 とんでもない発案なので、真剣に拒否する。

 うっかりしてたら本当にやりかねない人だからな。


「しかし、今の説明の仕方を考えると、君はベッドの下とかに何か隠してそうだ」

「ホントに何か出てきちゃったらどうするんですか? 絶対、ドン引きしますよ?」


 大真面目に言ったのだが、もちろん先輩は納得してくれなかった。


「大丈夫だ。たとえ何が出てきても私は君を受け入れる覚悟がある」

「その覚悟は嬉しいですが、それでドン引きされたらマジで傷つきますので」


 なるべく丁寧にお断りしたら、先輩が目を丸くして僕を見る。


「……君はそんな物を隠しているのか?」

「そんな興味津々の顔にならないでください! 何もありませんから!」


「しかし、そこまで嫌がると何かあるのではと勘ぐってしまうぞ」

「普通、家捜しは嫌がりますよ。――じゃあ僕も何を見つけても受け入れますから、先輩の部屋を家捜しさせてください」


 この提案には、さすがの先輩も嫌そうな顔をした。


「君は女性の部屋のタンスを漁って何をする気なのだ? 私の下着でも穿いてみたいというのかね?」

「穿きませんよ! そんな趣味ないですから!」


 強く言ったら、先輩はあからさまにガッカリした。

 もしかして穿いて欲しかったんだろうか。


「残念だよ。君の家へ遊びに行けると思ったのに」


 あ、そっちなのか。


「……家捜ししないなら、いつでもいいですよ」


 遊びにきてくれるなら、もちろん歓迎するに決まってる。

 そう言ったら、一転して先輩が嬉しそうな顔になった。


「そうか。では近いうちにお邪魔するよ」

「あの、連絡だけは事前にくださいね」


 なんだか浮かれてる先輩に、懇願するように言っておく。

 ちゃんと釘刺しとかないと、この人は今日の夜とかにも来かねないからね。


 先輩が来るのなら、ちゃんと準備はしておきたい。


 だってほら、いろいろ隠しときたいじゃん?

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