アオバ村からの出発、2人旅。
いろいろあったあの事件から数ヶ月。
季節は2月。
いよいよ王都にある魔法学園の入学テストを受験する為に今日出発する。
「ラグナ、頑張ってね。」
「頑張ってこいよ!」
「ありがとう、母さん、父さん。頑張ってくるよ。」
「駄目だったらこっちの学園受けてもいいんだからな。」
「一応落ちるつもりはないんだけどね。イルマも頑張ってね。無理しちゃ駄目だよ。」
俺は王都にある王立ヒノ魔法学園の入学を目指して王都へと出発する。
イルマは既に推薦により海神国シーカリオンにある商業ギルド経営のマリオン商業学園へと入学が確定していた。
まさかマリオン様の名前を使った学園があるとは思わなかったよ。
「6年後、お互い無事に村で会おう。」
イルマと軽くハグをして別れる。
「それじゃあ行って来ます!」
サイさんの馬車に乗り込み村の皆に手を振る。
「じゃあ出発するよ。」
サイさんが馬に合図をして馬車を出発させる。
「でも助かりました。王都までどうやって行くか家族で話し合っていたので。」
「たまたま取引のタイミングと重なっていたからね。とりあえずナルタまでは2人でのんびり馬車の旅だよ。」
家族で受験のために王都に行く手段を話し合っていた頃、年末最後の取引に来たサイさんから嬉しい提案があった。
2月にまた取引に来るからその時に馬車に乗せてあげる。そして共に王都に行こうと。
父さんと母さんはサイさんにお礼を渡そうとしたけどサイさんからは恩返しをさせて欲しいと断られていた。
その時に後はこれとサイさんから渡された手紙があった。
手紙の宛名を見ると商業ギルドの神殿から。
開封して読んでみると、入学テストを受けに王都に向かう際、ナルタに立ち寄ったら神殿に寄ってくれと書かれていた。
神殿かぁ。出来れば近寄りたくは無いんだけど……
そんな感じで現在に至る。
馬車に揺られながらのんびりと景色を楽しむ。
「サイさん、1つ気になったことがあるんですけど。」
「ん?どうしたんだい?」
「サイさんはエチゴヤ商会の一族なのになんで護衛も付けないで商いをしているんですか?」
本当なら万が一が無いように護衛を付けるはず。
なんで護衛が居ないのか判らなかった。
「なんでだと思う?ヒントは馬車に乗ってれば気が付くかな。」
馬車で乗ってれば気が付く?
村を出発してから街道をのんびりと進んでいる。
特に変わったことが無いし……
うーん……
街道なら基本的に魔物は出てこないし。
これかな?
「街道を進むなら魔物に出会ったりしないからですか?」
「正解と言いたい所だけどまだ足りないね。」
うーん……
後はなんだろう。
……。
考えても 何も思い浮かばない。
「判らないです……」
「確かに魔物も危険だけどね。それよりも商人にとって危険な存在は人なんだよ。」
山賊とか強盗とかは確かに商人にとっては危険な存在だよ。
積み荷やお金を狙われる。
「あぁ、そうか。村を出発してからもそうだし、確かに前回帰るときもそうだった。」
そう言えばサイさん以外の商人ってイルマの家族以外ほとんど見たことはないや。
「わかったかな?」
「うちの村が辺境過ぎて基本的にサイさん以外の商人がほとんど街道を通ることが無い。山賊や強盗からしたら全く魅力が無いから?」
サイさんはにっこり笑うと補足してくれる。
「確かに他の商人とすれ違う事なんてほとんど無いね。基本的にアオバ村周辺の村との取引も私以外はほとんど居ないんじゃないかな。それに他の村だと村から村への移動の時は、立ち寄った村の人が隣の村まで護衛してくれるんだよ。」
「そうだったんですか。でもサイさんがうちの村に来るときはいつも1人ですよね?」
「私はいつも一番最初にアオバ村で取引をして、帰りがてら他の村に立ち寄っているんだ。」
「うーん……でも危険じゃないですか?」
「まぁそろそろ危険なラインだとは思ってるよ。アオバ村もここ数年発展が著しいし、周辺の村も発展してきてる。だからそろそろ必要かなとは考えてるんだ。」
確かに村は俺が産まれてからもどんどん大きくなっている。
食料となる動物や魔物は豊富だし、水にも困らない。
魔の森の素材は高値で取り引きされるからお金にも困らない。
確かにどんどん移住者が確かに増えているな。
「そうなんですか。気をつけて下さいね?」
「ありがとう。とりあえず今回はラグナ君も居ることだしナルタについたらうちから護衛を用意するから安心して王都までの馬車の旅を楽しんで行こう。」
前回とは違い特に事件が起こることもなく無事にナルタへと着くことが出来た。




