出発前にノンビリと。
コンコン。
扉をノックする音で目が覚める。
「寝た気がしない……」
「ラグナ、起きてるかー?」
父さんが起こしに来たみたい。
「今起きたよ!もう時間?」
「それそろ朝ご飯の時間だから支度しろよー。」
「分かったー。」
とりあえず急いで支度。
部屋にある荷物で不要な物は収納スキルで収納。
ふと昨夜のことは夢じゃないよね?って不安に駆られた。
おもむろにネックレスを握る。
『おはよう。』
……あれ?
『おはよう。今起きたのかしら?寝坊助さん。』
『今起きたよ。』
『それでどうかしたの?』
『昨夜のが夢じゃないか不安になって連絡してみた。』
『何よそれ。それよりも急がないとご飯抜きになるわよ?』
『りょーかい。とりあえず答えてくれてありがとう。』
『……ばか。』
さて。急いでご飯食べに行くとしますか。
部屋から出て食堂へ。
「おぅ、おはよう。」
もう既に3人とも椅子に座っていた。
「みんなお酒飲んでたんじゃないの?よく朝起きられたね。」
父さんが顔をぽりぽり掻きながら答えをくれた。
「いや、こんな体験したことなくてな。ちょっと落ち着かなくて朝早く目が覚めた。」
残り2人も頷いている。
「逆にラグナがぐっすりと寝たり寛いでることに俺達は驚くわ。」
「そうじゃのぅ。普通なら気分が高まって寝れないじゃろ。」
「そうかな?普通にのんびりお風呂に入って湯船につかりながら冷たい飲み物を飲んで景色を楽しんでたよ。」
「「おっさんか!」」
父さんとハルヒィさんに突っ込まれたが解せぬ。
「皆様、おはよう御座います。ゆっくりと休むことは出来ましたでしょうか?」
支配人さんが登場。
「素晴らしい体験じゃった。ありがとう。」
村長さんの一言に大人達2人も頷く。
落ち着かなかった癖に。
「それならば安心しました。それでは今から朝食をスタートします。」
そう言うと支配人さんがパンパンと手を軽く叩く。
すると次々と朝食が運ばれてくる。
ふわふわな白いパンに目玉焼き。薄切りのベーコンにサラダ。
そしてまさかの朝からのステーキ。
「今日の恵みに感謝を。」
「「「頂きます。」」」
チラッと横を見ると朝からステーキでも構わないみたい。
パンを手に取ると直ぐに気がつく。
「本日より我が宿ではパンに切れ込みを入れた状態で提供することになりました。皆様、どうぞお好きな具を挟んでお食べ下さい。」
さっそく取り入れたのね。
ふわふわの白パンにサラダを切れ込みに入れてステーキをその上に。
そして一口。
噛んだ瞬間肉汁が口の中に広がる。
しかもほのかに醤油の味。
本当に美味しい。
この宿に来れて良かった。
ブリットさんのおかげだよ。
朝食をペロリと食べて休む。
「どうでしたでしょうか?」
「本当に美味しかったです!」
あっ。思わず村長さんよりも先に答えてしまった。
「確かにここの料理は本当に美味しかった。儂等のような人間に対してここまでの対応をして頂き本当に感謝する。ありがとう。」
皆で支配人に頭を下げる。
「頭をお上げ下さい。私共としても喜んで頂いたようでとても嬉しく思います。」
そして支配人さんは時計をチラッと見ると今日の予定を教えてくれた。
「現在、午前7時30分。旦那様の迎えは午前9時とのことなのでそれまではごゆっくりお休みください。」
あと1時間はお風呂に入れそうだな。
それぞれ皆の部屋で別れる。
「まずは直ぐに出発出来るように準備だな。」
着替えを取り出し、身に付ける物も準備。
朝起きた時に粗方終わらせたのでネックレスを手に持ったまま湯船の中へ。
『サリオラ、居る?』
『居るわよ、ってラグナのバカ!エッチ!』
『へっ?』
『はやく下隠しなさいよ!』
み、見えてるのか?
慌ててタオルで下を隠す。
『ごめん、見えてるとは思ってもいなくて。』
『全く!そっちは声だけかもしれないけどこっちはそのネックレス越しの映像が見えてるんだからね!』
マジか。
『ごめん、知らなかった。』
『まぁ私が説明忘れたのもいけないから今回は許すわよ。』
『ごめんよ。それでサリオラに話があるんだ。』
『何?』
『サリオラをこっちの世界に呼ぶときに皆に隠し通せる気がしないんだけど。』
『確かにそうねぇ。きっと広まるとラグナにとっては大変なことになるかも知れないわね。ちょっと創造神様に聞いてみるわよ。』
『それでサリオラは普段何をしてるの?』
『何をしてるか、か。とりあえず私の仕事は現世と天界を結ぶ狭間の世界を守ることね。』
狭間の世界?
『それって俺が行った白い世界?』
『ラグナの存在ではそう感じるかもしれないわね。まぁ実際は違うんだけど詳しいことは言えないわ。』
『そっか。それで俺以外にも迷い込んだりするの?』
『本当にたまに居るわね。迷い込んで来たり、攻めてきたり。』
『攻めてきたり?』
『居るわよ、神の力を狙ったバカ共が。』
そんなのが居るのか。
『じゃあこっちの世界に呼ばないほうがいいよね?万が一があったら大変なことになるし。』
『大丈夫。ここを守るのは私だけじゃないし。それに私はここでは下っ端も下っ端なのよ。』
サリオラが下っ端?
『だって君は守護の女神様の娘でしょ?』
守護の女神様と言えばこの世界ではとても有名だし。
『いろいろあるのよ、いろいろとね。』
あんまり触れて欲しくはないのかな。
『それよりもそろそろ時間大丈夫?』
8時30分過ぎか。
『それじゃあ、お風呂上がるよ。ありがとう。』
『いろいろと本当に気をつけなさいよ。』
『うん、わかった。』
そしてお風呂から上がり急いで仕度。
ブリットさん達に会いに馬車に乗り込むのであった。




