初めての狩り。
ガストーチソードを練習するようになってから半年。
だいぶ早く発動出来るようになった。
季節は暑さの残る秋、9月。
学園入学試験まで半年を切っていた。
「ラグナ、今度の俺の休みの日に狩りに行くぞ。」
「狩り?魔物狩りってこと?」
狩りかぁ。
そろそろかなぁとは思ってたけど。
「まぁ最初は魔物じゃなくてウサギや猪や鳥をメインで狩りに行こうと思う。」
魔物じゃないとしたら魔の森側じゃないってことかな?
そして父さんが休みの日。
今ではもう倒れることが無くなった収納スキルで自分のお弁当やら調理道具やら細々したものを仕舞う。
父さんは自分で荷物を持つから大丈夫とのこと。
「それじゃあ行ってくるぞ。」
「行ってきます!」
「怪我だけには気を付けるのよ。」
「だぁーだ。ぶー。」
母さんと妹のメイガに見守られて初めての狩りへ。
魔の森とは反対側にある森の中へ。
「森に入ったら僅かな物音、異変にすぐに気がつかないと狩る側から狩られる側になる。油断するなよ。」
「わかった。」
普段の訓練の際、目隠しをして気配を感じる訓練はこういう時の為だったのか。
ゆっくりと森の中を進む2人。
右前方から枯れ葉が擦れる音がした。
グイドはラグナにハンドサインで止まるように指示。
魔法剣を発動し右前方の地面に剣を突き立てた。
「枯れ葉の音によく気がついたな。見てみろ。」
目の前には剣に顔を突き刺されて絶命している小さいヘビがいた。
「ヘビ?」
「こいつはただの蛇じゃない。こんな小さいくせに猛毒を持ってる。この毒は魔物すら殺せる毒だから気を付けろ。」
30cm位のサイズの蛇なのにそんなにも猛毒を持ってるのか。
グイドは突き立てた剣に付いた毒蛇の体液を魔法剣を発動して蒸発させた。
「俺はこうやって蒸発させるけど、普通は布切れで拭き取ったりする。絶対に素手で触るなよ。本当に小さい傷口からでも毒が入って死ぬからな。剣に体液が付いたままも絶対にダメだ。次に振り抜くときに飛び散って危ない。それに毒が付いてる剣で仕留めた獲物を食べても死ぬからな。」
「わかったよ。気を付ける。」
更に奥へと森を進む。
木の上で休む鳥を見つけた。
「父さん……」
指で鳥がいる方をさす。
父さんからゴーサインが出る。
収納スキルから子供用の弓を取り出す。
まだ鳥は気が付いてない。
矢をセットして息を殺して狙いを付ける。
「ふっ!」
ラグナは矢を射出した。
矢が飛んできたことに気が付いた鳥が慌てて飛去ろうとするものの身体に矢が刺さる。
一瞬よろめいたもののそのまま飛去ろうとした鳥目掛けてグイドが剣を振り抜いた。
スパン。
鳥の首が切断されて地面へと墜落した。
「狙いが甘かったかぁ。」
「もっと動いた先を狙うべきだったな。」
墜落した鳥の首からは血液がドクドクと流れ出ていた。
「本当なら血抜きをしたいとこだけどな。とりあえず収納スキルで仕舞えるか?」
「血の匂いで肉食の獣が集まっちゃうからだよね?収納するよ。」
首がない鳥に手をかざして収納する。
「今の鳥ってなんて名前?」
まるまると太っていて焼いたら美味しそう。
「フォローバードだな。焼くと美味いんだよ。」
「フォローバード?変な名前。」
「この鳥は威嚇するときに羽を広げてフォローって鳴く変な鳥なんだよ。弱いくせに気性が荒い。肉食獣にも普通に立ち向かって返り討ちにされてるからな。」
鳥が肉食獣に立ち向かうとかいろいろ間違ってるな。
「でもそんな鳥だとすぐに絶滅しちゃいそうだけど……」
「この鳥な。めちゃめちゃ多産で卵を産む間隔も短いんだよ。」
多産で間隔も短いって子育ては?
「そんなんだと子育て厳しいんじゃない?」
父さんは笑いながら教えてくれた。
「あいつらは子育てしない。産んだら産みっぱなし。勝手に育て方式だな。」
えっ?厳しくない?
「赤ちゃんとかご飯どうするんだろ?」
「こいつらは卵から孵るまでが長くて体がある程度出来上がった状態で産まれてくるんだよ。」
「卵の中で成長ってすぐに窮屈になるよね?」
「それがこいつらの卵は最初は柔らかくて徐々に大きくなりある程度のサイズまで成長すると硬くなってくるんだよ。」
「それじゃあ柔らかい卵だとすぐに食べられそうだね。」
「それはないな。柔らかいうちの卵は激臭なんだ。臭すぎるから子育てしないんじゃないかっていわれてる位だ。」
「そんなに臭いんだ。殻が硬くなると臭いが収まるの?」
「徐々に臭いが収まってくるな。父さんが昔興味本位で硬くなった卵を持ち帰って見守っていたことがあったんだが……産まれて1時間もしないうちに空に飛んでいった時は唖然としたな。その姿を親父は爆笑していたけど。」
産まれて1時間で空を飛べるってすごいな。
確かにそれならすぐに狩られても有る程度の数は維持できるのか。
一端森からは出て街道付近まで戻ってお昼ご飯。
父さんの昼ご飯は黒パンと乾燥して硬くなった肉
俺はスキルで焼きたての黒パンと温かいままのスープを取り出す。
「本当にそのスキル便利だよなぁ。皆が憧れて欲しがるわけだよ。」
「まぁその分魔力消費は多いけどね。はい、父さん。母さんから。」
母さんから預かっていた父さんの分のお弁当を手渡す。
「母さんから?俺に?」
「きっと意地になって普段と同じご飯にするだろうから持っていってって頼まれてたんだ。」
母さんから見透かされてることに照れながら父さんは弁当を受け取りいつものご飯はラグナが収納した。
「「いただきます。」」
2人で腹ごしらえ。
温かいご飯を食べた2人は午後の狩りへと向かうのであった。




