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初心者キャンパーの異世界転生 スキル[キャンプ]でなんとか生きていきます。  作者: 奈輝
混沌が広がる世界

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自信過剰の無謀な勇気は暴走する。

「ぐあぁっ!」


「いてぇぇっ!!」


 無差別な石の雨によって騎士学園の生徒達が次々と負傷していく。


 投石によって怪我を負う者が増え、攻撃の手が徐々に減っていく。


 砦の中では商業学園の生徒達が必死に負傷者の手当てを行っていたが、全然間に合わない。


『このままだと……やべぇな……』


 後方で石を運んでいたイルマは嫌な流れを感じていた。


『このまま、じり貧でやられる訳にはいかない!』


 幼い頃の記憶が蘇る。


 本来は商家の娘であったイルマは狩人の練習に行く事を両親から良く思われていなかった。


 もちろん生粋の狩人を目指せるような立場では無いとイルマ自身も自覚していたので、もっと大きな魔物を狩りたいから剣が欲しいと両親に強請ることはしなかった。


 まぁ剣なんて強請っても、イルマにはそれを振る力は持ち合わせていない。


 弓の才能はあったのだが、弓矢ではどうしても金がかかる上に子供の力では威力に限界があった。


 教官役に連れられて他の子供達と森へ狩りの練習へと向かうが、子供が放つ矢の威力と危険性を考えて、森から浅い場所でしか許可されずに狩れるのは鳥か小型の野生動物だけ。


 でもいつかラグナと共に狩人として生きていけたらと夢を見ていたイルマ。


 今の自分でも扱えて、その上で金が掛からない。


 そして弓矢よりも威力がある。


 そんな夢のような武器は無いかと考えても思いつかなかったイルマは、子供達の面倒をみていたラグナに相談した。


「そんな夢のような武器なんてないよなぁ」


 と聞いてみたのだが……


 少し考え込んだラグナは一つの可能性を教えてくれた。


 それが材料も手軽に作れる投石紐スリングの存在だった。


 彼に教わったあの練習の日々が彼女を支えていた。


『イルマならできるよ』


 ラグナの言葉が脳裏をよぎった。


 その言葉を思い出し、イルマは準備の合間に作っていた投石紐を取り出すとしっかりと握りしめ、


「私だって……やってやる!」


 そう叫びながら壁の縁へと走って行った。


「おい!何を!」


 斥候の冒険者が警告するがイルマは止まらなかった。


 壁の縁から身を乗り出し、石を掴むと勢いよく投石紐に挟み込む。


 その動作は流れるように美しかった。


 投石紐を回転させながら加速をつけ、目の前にわらわらと群がるゴブリンへと。


 ズカン!


 イルマが放った石は、手で放たれるよりもはるかに速い速度でゴブリンへと命中。


 たった一撃でゴブリンは動かなくなった。


 飛んでくる石を軽やかに避けながら複数回それを繰り返すイルマ。


 イルマの登場に驚いた騎士学園の生徒達だったが、彼女が一撃で成したその光景に歓声をあげる。


 騎士学園の生徒達からの歓声、更にあまりにも簡単にゴブリンを次々と討伐出来てしまった事で、イルマは「私でも戦えるんだ」と自信が付いてしまった。


 そして、あろうことか門を破壊しようとタックルしているグラントの頭部を狙ってしまう。


「いっけぇぇぇっ!!」


 イルマが放った石弾は正確にグラントの頭部に命中し、大きな衝撃音と共にグラントが地に倒れるのだった。


「よっしゃぁぁぁ!」


 思わず喜びの声をあげてしまう。


 彼女の活躍を見たゴブリン・ソルジャーはイルマを最大の脅威と認識してしまう。


 ソルジャーの号令により、グラント達は目標を変えた。


 彼らは周囲から巨大な岩を拾い上げると次々とイルマめがけて投石を始めるのであった。


 イルマはその巨大な岩が自分に向かってくるのを見て息を呑んだ。


『しまっ……!』


 喜んでしまって目を離してしまった。


 今から回避するには絶望な距離に岩が迫っていた。


 その瞬間だった。


 ピカァッ!!


 イルマの髪飾りが青く光り輝くとイルマを包み込む。


 それはまるでシールドの魔道具の様だった。


 イルマへと向かっていた岩はその青い光に触れると粉々に粉砕された。


 あまりにも信じられない出来事に硬直してしまう、イルマ。


「嬢ちゃん!」


 という声が聞こえた時には遅かった。


 別のグラントが投げた二発目の岩がイルマが立っていた壁の一部に直撃し、その衝撃で壁が崩れ落ちてしまった。


「きゃあっ!」


 イルマの身体は宙に投げ出され、悲鳴を上げながら地面へと落下していく。


 砦の外に立つゴブリン達が目を見開きながら落下するイルマを見つめる。


 まるで餌を待つ獰猛な獣のような目だった。


『わりぃ……ラグナ……』


 時間がゆっくりと流れているような感覚に陥ったイルマ。


 死を覚悟し、心の中でラグナに謝罪したその時だった。


 ぐぁぱぁぁぁぁぁぁぁ


 という聞いたことも無い奇妙な鳴き声と共に、イルマの体はふわりと抱きかえられる感覚を感じた。


 彼女が恐る恐る目を開けると、ラグナが心配そうに彼女の顔を覗き込んでいた。


「……イルマ?大丈夫か?」


 救世主が今、到着したのだった。



今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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