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初心者キャンパーの異世界転生 スキル[キャンプ]でなんとか生きていきます。  作者: 奈輝
混沌が広がる世界

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飢えた獣、目の前にはご馳走。

今回より正午に更新に変更します!時間変更申し訳ありません……





 シールドが砕け散った瞬間、ゴブリンどもの目が一斉に砦の外ではなく、その境界に転がされた二つの「餌」に向けられた。


 あれほど警戒していたはずのシールドの消失など、彼らには最早どうでもよかった。


 飢えた獣が眼前に転がる獲物を見つけた時のように、理性をかなぐり捨てて二人の人間に殺到したのだ。


 それはまさに、地獄絵図と呼ぶにふさわしい光景だった。


 ゴブリンの牙が剥かれ、醜い口が大きく開く。


 肉が引き千切られる湿った音。骨が砕け、咀嚼される鈍い音。


 内臓を引きずり出される時の濡れた音。


「ギャヒヒヒッ!」


「グゲェッ!」


 耳をつんざくような哄笑と悲鳴。


 あまりの痛みに意識を取り戻した二人の顔は恐怖と絶望に歪み、口からは「助けて」「いやだ」「死にたくない」という断末魔の叫びが迸る。


 だがゴブリンどもはそれを聞くどころか、嘲るかのように耳障りな声を上げ、嬉々として肉を貪った。


 その断末魔が砦の内部にも響き渡り、壁の上にいた生徒たち。


 特に騎士学園の生徒達は目の前で食われていく姿を見にしてしまい、顔面蒼白になった。


 膝から崩れ落ち、口を押さえて嗚咽し、嘔吐する者もいた。


『無理もない。あれはあまりにも惨すぎる』


 壁の上に立つ学園騎士の一人がそう思った時だった。


「お前たち!奴らが食事に夢中になっている今が好機だ!吐いている暇があったら石を投げろ!オリオールの死を無駄にする気か!」


 教官の怒号が砦中に響き渡った。


 その言葉に生徒たちはハッとしたように顔を上げる。


 恐怖を押さえ込み、震える手で石を掴むと投石を始めた。


 ゴブリン達は投石が当たると次々と倒れたり、怪我を負っていく。


 だが、屈強なグラントたちには効果が薄い。


「クソッ!これじゃ埒が明かねぇ!」


 弓使いが焦りの色を浮かべた。


 彼は壁の上からソルジャーとグラント達を睨みつけながら思案した。


『これ以上時間をかけてもシールドが復活するわけではない。門が破壊されるのも時間の問題か……それならばやることは一つ……一か八かだ!』


 弓使いは腰の矢筒から特別な矢を取り出した。それは他の矢と比べると装飾と模様が刻まれた矢、鏃の部分は赤い宝石のようなものが埋め込まれている。


「お前、それは……!」


 横にいた冒険者が驚いた顔で見る。


「ああ。カーリントーへの輸送物資の中にあった『爆裂矢』だ。サンプルとして積まれていたやつが1本だけあったんだ」


 弓使いは静かに呟きながら爆裂矢を一旦矢筒に仕舞うと、弓に通常の矢をつがえた。


 そして、


「まずは奴らの油断を誘わねぇとな!」


 と宣言すると、わざと手抜きしたように弱々しい軌道で矢を放った。


 続けて同じような軌道でもう一本の矢も放つ。


 二本の矢はグラント達が担ぐ倒木に当たるが、弱々しく飛んだ矢は刺さる事なく弾かれて地面へと落ちた。


 グラント達は嘲笑うかのように『グルル……』と鼻を鳴らし、侮蔑の眼差しを壁の上へと向けた。


『よし。奴らは完全に油断した』


 弓使いはニヤリと笑うと三本目の矢をつがえた。


 それは『爆裂矢』。


 弓使いは深く息を吸い込むと、今までとは全く異なる精度と速度で矢を放った。


 ヒュンッ!


 風を切る音と共に放たれた矢は一直線に倒木の中心へと吸い込まれていく。


 グラント達は先ほどと違う速さに驚くが、避けられない速度ではないから油断してしまった。


 パキンッ!


 矢が倒木に当たり深く突き刺さったその瞬間、


 ドォォォォンッ!!


 爆裂矢の先端が突き刺さった木の内部で起爆。


 中央から砕け散った倒木の破片が四方八方に飛び散り、激しい衝撃と爆風がグラント達を襲う。


「グギィィッ!!」


 悲鳴と共に二体のグラントが即死。


 残るグラント達も大小さまざまな傷を負ってしまった。


 更に運悪く一体のグラントは砕け散った大き目の倒木の破片に挟まれてしまったようだ。


 砦の中の者達はその光景を見て歓声を上げたが、


「まだ終わっちゃいねぇ!どんどん石を投げろ!」


 と冒険者が叫んだその時だった。


 ゴブリン・ソルジャーが倒木に挟まれて脱出しようともがいているグラントに近づき、一閃。


 剣で首を刎ねてしまった。


 その光景はゴブリンたちの恐怖を煽るのに十分だった。


 ソルジャーは剣先にその首を突き刺すと高々と掲げ、


「ギギギギギィッ!」


 と咆哮し他のゴブリンどもを脅しつけた。


『命令に従わなければこのゴブリン・グラントの様にするぞ』


 その言葉の意味を理解したかのようにゴブリン達は震え上がった。


 それを見たソルジャーは倒木を失ったグラント達に自らの肉体を武器に門へ突撃するよう命令するのだった。


 同時に、


「ギギィィィィッ!!」


 という怒号と共に他のゴブリン達にも壁の上へ投石するよう号令をかける。


 それは今までのような単なる投石ではなかった。


 ゴブリン達はソルジャーに殺される恐怖から必死に壁の上へと投石するのであった。





今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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