撤退だぁぁぁぁ!
※やっと子供の症状が落ち着いてきました。長らくお待たせしました。更新再開します。
ちょっと短いけど許してください(゜Д゜;)
「クソッ!このままじゃ持たない!」
馬車を囲む戦場で、騎士学園の教官二人は固く歯を噛みしめていた。
ゴブリンたちの波状攻撃が激しさを増し、数の暴力で押し寄せている。
訓練通りに動けない騎士学園の生徒。
騎士学園の教官でさえも魔物との戦闘などほとんど経験が無い。
対人戦の訓練ばかりしていたツケが濃く出てしまっていた。
馬車群の外側に配置されていた冒険者たちは、その情けない騎士学園の状況を見極めるとすぐに動き出した。
「おいおいおい……お前ら!ここは俺たちに任せろ!」
Bランク冒険者の剣士が低い野太い声で叫ぶ。
彼は大きく踏み出し、右手に握った刀身が薄く青白く輝く長剣を構えた。
その刃はシーカリオンの魔道具技術の粋を結集した疑似魔法剣で、かすかに波打つ刃先が妖しく光っていた。
「オラァッ!」
剣士は地面を強く蹴り、姿が一瞬残像となって消える。
次の瞬間、前線にいたゴブリン達の身体が次々と二つに割れていく。
そして遅れて赤黒い血が宙を舞い、周囲に飛び散った。
「怯むな!俺たちが前線を押さえる!」
剣士の叫び声に呼応し、仲間の疑似魔法士が魔道具の杖を掲げる。
杖先から無数の炎の矢が迸り、敵の群れを焼き尽くしていく。
炎に包まれて、悲鳴を上げながら倒れるゴブリンたち。
地面には焦げた土の匂いが立ち込めていた。
錬金術師は回復薬を抱え、負傷した生徒たちのもとへ駆け寄る。
雑に振りまく動作にも見えたが、お手製の回復薬の効き目は確かで、傷口がみるみるうちに閉じていく。
「ここに留まるのは危険だ!全員、撤退するぞ!」
冒険者のリーダーを務める剣士の声が戦場の騒音を割り込み、場の空気が一変した。
「撤退!?でも、どこに?」
騎士学園の教官が慌てて問う。
「南に三キロ。放棄された簡易砦がある。物資が残っている可能性もある!」
斥候が広げた簡易地図を指差す。
教官は険しい表情でうなずき、命令を下した。
「よし、全員、砦へ撤退だ!」
商業学園の生徒達は戦闘が始まると同時に学園騎士の指示によって速やかに馬車の中に避難していた。
恐怖に身を屈める中、一部の生徒はいつでも撤退出来るようにと身を屈めながらも御者の席に座って馬を落ち着かせていた。
撤退の合図と共に素早く動き始める馬車達。
盗賊に襲われた際の対処訓練を真剣に行っていた一部の生徒達が進んで御者の席に座っていたので動きに迷いが無かった。
「重盾衛士!先頭で壁になれ!」
叫び声に応え、巨大なタワーシールドを構えた重盾衛士が前に躍り出る。
ゴブリンの波状攻撃が盾に叩きつけられ、鈍い音が戦場に響いた。盾持ちの体は揺れたが、決して後退せず、前へ突き進んだ。
「火の魔法で撹乱しろ!」
「了解!炎の矢を放つ!」
疑似魔法士の杖から閃光が走り、炎の矢が次々とゴブリンたちに命中した。
煙が立ち込め、焦げ臭い匂いが鼻をついた。
焼け焦げた獣の悲鳴が、戦場のざわめきをかき消すように響いた。
「今だ!爆裂矢をブチかませぇぇぇ!」
弓使いが矢を放つ。
弧を描いた矢はゴブリン群の真ん中に着弾し、激しい爆発を引き起こした。
炎と破片が舞い上がり、吹き飛ばされた敵が無造作に転がる。
「錬金術師!残弾は?」
「まだあるが、無駄撃ちはできねぇぞ!」
ポーションを振りかけつつ、錬金術師は険しい表情で答えた。
「くそっ、回復が追いつかねぇ!動かねぇやつは置いてくからな!」
苛立ちを隠せず、疑似魔法士が騎士学園生徒の情けなさに舌打ちをした。
「なら俺の番だ!」
斥候が叫びながら腰の投げナイフを抜いた。
二本同時に投げつけた投げナイフの魔道具は、着弾と同時に爆発する仕掛けの使い捨て魔道具。
「ドカンッ!ドォンッ!」
連鎖爆発が起こり、炎と煙がゴブリンの群れを覆った。
パニックに陥った敵の勢いが削がれた。
「撤退!急げぇえええっ!!」
冒険者たちの叫びが響き、馬車群は素早く動き出したのだった。
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