グワパッパーーー! グ、グ、グ、グワパッパーーー!
マイコプラズマ肺炎が流行してきているらしいので気を付けてください。
いきなり白目になりかけてフラフラし始めた子供を見た時はリアルに焦りました……
しばらく更新はどうなるか……不明です……
夜が明けきる寸前、空は茜色を帯びはじめ、朝の静けさが世界を包んでいた。
「グワパッパーーー! グ、グ、グ、グワパッパーーー!」
突如として響き渡る甲高い鳴き声に、ラグナは心臓を跳ねさせながら目を覚ました。
「……おはよ。朝から随分元気だな」
ラグナは寝起きの身体をぐっと伸ばしエアーフレームテントから出ると、騒ぎ続ける鳥の首元を優しく撫でる。
大きな翼を持つダッシュバーードは嬉しそうに目を細め、頬を擦り寄せてきた。
「さてと……」
収納スキルを使い、朝食用のパンと焼きたての肉を取り出すとパンに切れ込みを入れて肉を挟む。
簡素だが、野外での食事としては十分だ。
イルマの事を思うとのんびりとしていられない。
「グワパッパーーー!」
朝からテンション全開なダッシュバーードは、ひとときも黙る気配を見せない。
「ちょっと落ち着けって……」
苦笑しながらも、ラグナは急いで食事を続ける。
そして食べ終えると、テントを畳むことなく収納スキルを使い収納すると装備を整える。
「グワパッパー!」
まるで「早く行こう」と言わんばかりに、ダッシュバーードが翼をばさりと大きく広げた。
「分かった、分かった。行くぞ!」
『何故こいつは俺が急いでいることを把握しているんだ?』という疑問を飲み込むと、ラグナはその背に軽やかに跨がり、目的地へと進路を取った。
少し時を戻して。
広大な平原をゆっくりと進む商隊の列。
その規模は大所帯と呼ぶにふさわしいものだった。
荷馬車が六台、馬は二十二頭。
キャラバンは魔物と出会うことなく、のどかに前進を続けていた。
構成員は以下の通り。
商業学園の生徒二十人に教師が二人に現役の商人が一人。
加えて、騎士学園から護衛訓練を兼ねて派遣された生徒十二人と教師が二人。
商業学園の専属学園騎士が三人。
冒険者パーティーが六名。(その内訳はBランク一人とCランク五人。)
総勢、四十六名。
馬車の御者台では、商業学園の教師ケイオスが、となりに座る女子生徒イルマとのんきに談笑していた。
「いやぁ~イルマ君、君は本当に真面目で素晴らしい。きっと立派な商人になるよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
イルマは品の良い笑みを浮かべる。
その口調も所作もまさに理想的な「お嬢様」そのもの。
だが……内心では鼻で笑っていた。
『このオッサン、チラチラと下心が丸見えなんだよな、気持ちわりぃ』
そう思いながらも、それでもイルマは演技を崩さない。
両親を失い、故郷も失った自らの立場と世渡りを理解していた。
しかし、その平穏は唐突に破られる。
ヒュン―――ッ!
風を切る鋭い音が耳をかすめた次の瞬間。
ズブンッ!!
ケイオスの頭部が血飛沫を上げて弾け飛び、彼の体は御者席からごろりと転がり落ちた。
「―――え?」
思わず声を漏らしたイルマの視線は、即座に周囲を見回す。
こんな事で慌てるような、都会でヌクヌクと育ったお嬢様ではない。
魔の森に囲まれた危険地帯で育った逞しいお嬢様なのだから。
そして、視界の端に弓を引き絞る影、敵の姿を捉える。
「襲撃っ! 戦闘態勢!」
張り詰めた声が、商隊中に響き渡った。
騒然とする生徒たち。
「ケ、ケイオス先生が……!」
「誰か! 救護班を……!いや、無理だ、もう……!」
「な、何が起きてんだよ!?」
叫びが飛び交い混乱が広がる中、さらに矢が次々と飛来した。
「全員、馬車の陰に伏せろ! 教師は生徒を守れ!」
商業学園の騎士が指揮を取る。
残る二人の騎士と連携し、生徒たちを守るよう陣形を整えさせる。
騎士学園の教官もただちに動いた。
「怯むな! 剣を抜け、構えを崩すな!」
「相手はゴブリンだ! 数は多いが訓練通りにやれば対処できる!」
だが、生徒たちの動きは鈍く、表情には恐怖が張りついていた。
目の前で人が死ぬという現実。
しかもそれが教師であり頭を撃ち抜かれたという事実は、若者たちの精神に強烈な衝撃を与えていた。
「ギャアアアアッ!!」
獣のような咆哮とともに、茂みの影から飛び出してくる無数の影。
緑色の肌に小柄な体躯、血走った目とギザギザの歯。
それは、誰もが教本で見たことのある存在。
ゴブリンだった。
「ひっ……! うわっ、来るなぁっ!」
「武器を構えろ! 列を乱すなッ!」
生徒たちが必死に応戦するが、戦闘は混乱の極みに達していた。
相手は訓練用の模擬戦とは違う、本物の殺意を持った魔物たち。
棍棒や錆びた短剣を振り回しながら、生徒たちに躊躇なく襲いかかってくる。
「お前たち! 落ち着け、隊列を維持しろ!」
「怯むな、盾を前に出せ!」
騎士学園の教官が怒号を飛ばすも、パニックに陥った少年少女たちには届かない。
目の前に迫りくる死の雰囲気。
流れる血、殺意を持って振り上げられる武器。
それら全てが、訓練では知り得なかった『恐怖』だった。
「ひぃっ! だ、誰か……!」
「助けて……!」
「手が……手が震えて持てない……!」
いくら剣を振るおうとしても、恐怖で手が震え、狙いは外れる。
無防備な隙を突かれて少なくない怪我を負っていく。
最悪の混乱だった。
商隊は今、未曾有の危機に晒されてしまった……
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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