オネエサマからの助言はもっとも
「まずは装備を整える所から始めようか。どこの武器屋と防具屋に見に行こうか?」
ラグナの提案にミレーヌがそれならばと、
「私たちはこの国に来たばかりで土地勘がありませんし、武器や防具の良し悪しも判断出来ませんわ。それならばちょうどウチにピッタリの人材がいるのでうちで揃えませんか?」
ミレーヌがそう提案すると、渋々頷くしかなかった一同。
ただでさえお世話になりっぱなしなのに、これ以上迷惑を掛けたくはないと思いつつも、確かにミレーヌの指摘通りに良し悪しなんてわからない。
なのでミレーヌにすまないといいながらお世話になるしかなかった。
「あら、いらっしゃい♪」
店に入った途端、出迎えてくれたのはエチゴヤ商店シーカリオン国マリンルー店の店長であるエイミーだった。
エイミーはみんなを笑顔で出迎えるとスルスルとラグナの隣に立ち腕を組む。
「それでみんな、今日はどうしたの?」
エイミーがそう問う中、ラグナと組まれた腕を無言で必死に振りほどこうと頑張るミレーヌ。
「みんなで冒険者登録したからさ。初めてのクエストを受けてきたんだ。その時に装備について指摘されちゃったんだよ。みんな学園時代のローブを使ったままだから何かないかなぁって。そっか。ミレーヌさんが言っていたのはエイミーさんの事か。エイミーさんが選ぶなら安心だね」
「安心?どういう事かしら?」
ラグナが安心と言った事で不思議な顔をするエイミーだったがウィリアムがその疑問に答える。
「俺たちは学園時代に装備の良し悪しなんて習っていないんだ。そっちの知識が豊富な人に選んでもらった方が確実だろうとミレーヌがな」
ウィリアムがエイミーにそう説明すると
「そういう事だったのね。それはもちろん喜んで協力させてもらうわ~。そうね。装備に関しては私が選ぶから問題ないわよ~。ただね……」
「ただ?」
「あなた達はどうするつもりなのかしら?全員が魔法使いで後衛。前衛が一人もいないのは冒険者として問題よ?それとも前衛の仲間でもこれから探すのかしら?」
「確かに……」
「それにラグナくんやミレーヌ様が常に一緒に冒険者として活動出来る訳ではないでしょう?それも踏まえて考えなければダメよ?」
エイミーの指摘はごもっともだった。
全員が魔法使いで後衛タイプ。
確かにバランス的には不安がある。
しかしルーの一言でみんなの意見が一致する。
「ウチはなんか他に仲間を増やすのはちょっといやや……」
その言葉にウィリアム達も頷く。
「でも冒険者として続けていくには前衛も必要よ?フィオナちゃんなら前衛も出来るとは思うけど、それでもバランスが悪いわよ?」
「……それならば私が前衛を務めるわ。一応これでも幼いころから剣を学んではいたから」
「ならば俺もだな。確かに俺とセシルなら剣で接近戦をしながら魔法でも戦えるように訓練はしてきたからな。」
セシルとウィリアムが前衛に名乗り出た。
「じゃあ僕とフィオナ先生が中衛かな。そして姉さんとシャール君が後衛。ラグナくんがいるときは前衛でミレーヌさんは後衛でどうかな?」
テオの提案に異論はない様子。
「それで問題ないな。あとは俺たちが経験を積んでいけばいいだろう」
「じゃあそのつもりで装備を準備するわ。他に希望はある?」
ルーが恐る恐る手をあげる。
「一番の問題があるねん。一応多少のお金は持ってるけど、そこまでの余裕はないんよ」
「そこは気にしなくていいですよ?ある意味皆さんもあの国の被害者なのですから」
ルーが金銭的な問題を指摘するのだが、ミレーヌは気にしないでと言う。
「エチゴヤだってあの国の被害者だろう?それに今は住むところまで世話になっているんだ。これ以上は迷惑を掛けられん」
ウィリアムはミレーヌにそう訴えた。
「そうだよ。友達に頼りっぱなしってものよくないよ」
「だな。でもどうする?実際問題俺たちが出せる金額はそう多くないぞ?そもそも俺たちは装備にどの程度の金額が掛かるのかよくわからない」
テオの意見にシャールも納得しながらもそもそも学園で生活してきた一同には武器や防具の適正価格などわからなかった。
「そうねぇ。それならばまずは新人の冒険者が買うようなレベルの品を買って徐々に稼げるようになったら新しい武器や防具に切り替えていくのはどう?ウチで買ってくれるなら品質も問題ないわよ。露店で買うのは目利きを出来るようになってからにしなさい。粗悪な武器は命を落とす原因にもなるわ」
「確かに装備で命を落としたくはないわね。それならばそうしましょうか」
「それがええんとちゃうか。今は新人用の武器や防具を買い。稼げるようになったらもっといい武器や防具に切り替えてもいいわけやし」
「俺も賛成だ。まずはコツコツと稼いでいくのが賢明だろう。フィオナ先生は嫌がりそうだけどな」
苦笑いしながらもエイミーの提案に全員が同意する。
「どうする?自分で選んでもいいし、私がコーディネートしてもいいわよぉ?」
「ウチはエイミーさんにお願いしようかと思うんやけどみんなはどうする?」
「ルーの言う通り、専門家の意見を聞くのがいいわね。私もエイミーさんに任せますわ」
「わかったわ。それじゃあまずはウィリアムくんからにしようかしら。ちょっとそこに立ってくれる?」
エイミーの言う通りに動くウィリアムなのだった。
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