冒険者のランク制度が変更されていたらしい。
「さてと。そろそろ本題に入るか。お前達はこれから冒険者として活動していくってことでいいのか?」
「ミレーヌ以外は。こいつは家の手伝いがあるからな。ラグナについては知らん。こいつはいろいろややこしいらしいからな。私達はまずは冒険者として金を稼いでエチゴヤから自立する。ついでに魔物をバッサバッサ倒して自分たちの腕を磨いていく。今あの国に戻ったとしてもどうにもならん。他の生徒達を助けたい気持ちはあるがこのままでは返り討ちにあうだけだ。冷たいかもしれないけどな。それだけあの新しい学園長がやべぇ」
同じクラスだった仲間を一日も早く助けに行きたい。
もちろん出来れば他の学園の生徒達も。
ウィリアム達だって同様の気持ちだ。
しかし現状ではどうにもならないってのは理解している。
だから冒険者となって自分たちの刃を研いでいくしかない。
更にウィリアム、セシル、テオ、ルーにとってはあの国に対して復讐の想いもある。
しかしまだその想いは口には出来ない。
まだその決断は出来ない。
心のどこかではきっと無事に脱出できたと思いたい気持ちもあるから……
そして話題はラグナへ。
「お前も冒険者として活動していくのか?」
イアンの疑問は最もであるが、どう答えたら良いものか悩むラグナ。
「うーん……みんなと参加出来るときは参加するって形になるかなぁ。俺もいろいろとあるからさ」
ラグナのその答えに内心しまったとイアンは思いつつも「そうか」と答えることしか出来なかった。
ラグナが使徒と呼ばれていた事を先ほどまですっかり忘れていたが、部外者がいるこの場でラグナについて詳しく聞くことは控えることにした。
イシュバルという関係者ではない人物がいる為思うように話すことが出来ずに沈黙してしまった一同だったが、部屋の扉が開くと先ほど退出した従業員が帰ってくる。
「お待たせしました。これが皆様のギルドカードになります」
従業員は一人一人にカードを手渡していく。
ラグナ達の手の中にあるのは黒いカード。
表面には自身の名前、裏面にはデカデカとFと表記されていた。
「はい。初めての登録となりますのでFランクとなります。ランクの説明は致しますか?」
「あぁ、よろしく頼む。もしかしたら私の知識が間違っているかもしれないからな」
「では、ご説明させて頂きます。まず冒険者のランクはF~Sまでとなります。このランクによって受けられる依頼や待遇に違いが出てきますので気を付けてください」
従業員の説明を要約すると以下の通りになる。
F:一番下のランク。依頼内容は雑用や簡単な採取のみ。
E:Fランクの依頼+近場での簡単な魔物の討伐依頼が受けられる。
D:Eランクよりも高ランクな魔物の討伐依頼や採取依頼が受けられる。迷宮への探索が認められる最低ライン。
C:一般的に一人前と呼ばれるのがCランクから。護衛任務や犯罪者の討伐依頼なども受注が可能になる。
B:様々な依頼に対応できる能力を有している事を示す。護衛の依頼も大規模な依頼にも参加が許される。
A:一流と呼ばれる能力を示している。基本的に他国へ移動時の税金なども免除。貴族と同じ待遇で出入国などが出来る。
S:個としての戦闘能力や特殊能力において圧倒的な実力を示す。その他様々な優遇措置がある。
「と、まぁざっくりとした感じですね。もちろん例外もございますのでその都度説明させて頂きます」
この説明を聞いて驚く一同。
「……学園で習っていたランクの制度と違うよな?」
「うちらが教わった時はEランクスタートだったし、内容もこんなんじゃなかった気がするんやけど」
当時担任だったフィオナへと視線が向くが、
「……ここ最近でルールが変わったのか?」
何故子供達の視線が一斉に同じ子供である赤毛の女の子に向いたのか不思議に思いながらもギルド長であるイシュバルが口を開く。
「まぁそんな所だ。いたる所に魔物が溢れ、おとぎ話で聞いたことがある程度だったダンジョンなんてものが実際に現れたんだからな。シーカリオン以外にもエーミルダやミラージュにもダンジョンが現れたって情報が入っている。冒険者ギルドってのは今までは便利屋程度の存在でしかなかったからな。魔物の討伐なんて酔狂な事をやっていたのは極一部だ。過去の遺物。名前ばかりの冒険者。様々な陰口を言われてきた。けどな、あの謎の声で世界が一変した。勇者ヒノが戦ってきたあの時代の再来とも言われてる今、ルールを急いで変更したって訳だ。誰もが一攫千金を夢見てダンジョンに突撃していく。腕がある奴ならいい。中には口だけ達者な奴だっているんだ。そういった奴らを排除するためにランク制度を一新した」
腕もなく口達者な奴に連れられた低ランクの冒険者の致死率がとんでもないことになったらしい。
ダンジョン以外でも魔物が現れるようになったので挑んでは返り討ちにあったり、自らが餌になってしまったり大混乱に陥っていたとの事だった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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