冒険者登録始めました。
いろいろ葛藤がありましたが、お待たせしました。
「まずは俺から自己紹介といこうか。俺の名前はイシュバル。この冒険者ギルドのギルドマスターをやってる」
イアンの知り合いであろう子ども達を部屋へと案内するとギルドマスターであるイシュバルは自己紹介する。
「私はフィオナだ。この子らの保護者のようなものだ」
そう言いフィオナが手を差しだすと、イシュバルはその手をがしりと握り返す。
「あぁ。よろしく頼む」
そしてそのまま2人は握手を交わす。
『保護者だと?見た目は他のガキ共と対して違いも見られねぇが……もしや、エルフか?』
イシュバルがフィオナの耳をチラッと確認する視線に気が付いたフィオナは
「あぁ、言っておくが私はエルフでは無いぞ?」
そう言いながらイシュバルに耳を見せる。
「ん?人族だったか。それにしては……」
見た目以上に大人びていると言おうとした所でイアンが割って入ってきた。
「まぁ詳しい話はあとで話す。とりあえずどうやってこの国まで脱出出来たんだ?」
イアンは空を飛んで逃げるという手段が使えたからヒノハバラから脱出出来た。
しかし目の前の子ども達はそんな事は出来ない。
「ざっくり言うと学園に向かう準備をしていたら兵士達が寮にぞろぞろとやって来たから返り討ちにした。クララ、ベティー、シーヴァが既に学園に行ってたから救出に行ったけどやべぇやつがいたから撤退してエチゴヤと一緒にあの国から脱出してきた」
「お前らまでも襲撃されたのかよ!クソが!あの国はどうしちまったんだ……すまなかった。生徒を一番守らなきゃいけねぇ俺が何も出来なかった」
「いや、団長のせいじゃねぇーし。そもそもあいつは一体何なんだ?あんなヤバそうな奴があの国にいたなんて私は知らなかったぞ?私の魔法がアッサリ防がれたのは正直ショックだったがな」
学園に現れた新しい学園長。
フィオナの爆炎魔法を簡単に防いだ人物がいたという事に驚くしかないイアン。
「そもそも新しい学園長とやらが居たことすら俺は初めて知ったぞ。それに、お前の爆炎魔法を簡単にか……わからん。少なくとも俺が軍にいた頃にはそんな事が出来る人間なんていなかったぞ。それに俺もお前たちと同じ様なもんだ。学園の仕事を終わらせて屋敷に戻ってみたら、何故か屋敷には誰もいねぇ。しかも屋敷の中にあった金目の物は片っ端から無くなってる。更に執務室に行ってみれば手紙が一通。魔法学園の学園長の任を解くってな。んで、読んだ直後に魔力を感じたから障壁を張ってみれば屋敷に向かってズドンだからな。屋敷は粉々、屋敷の周囲には見たこともねぇ制服の兵士っぽい奴らに囲まれてたって訳だ。まぁ大臣が一新された時点でアブリック様から警戒しておくように言われてたからな。事前に転移柱は設置してあったし、転移球は常に持ち歩いてたから発動させて空を飛んでおさらばってな」
国の中枢の一部と関わりがあったイアンでさえ知らない強者。
『あんな実力者……今までどこにいたんだ?もしや、他国の人間か?』
考えれば考えるほどわからない。
「まぁ、いいや。今考えたってしゃーないし。それよりも私達は冒険者登録をしたいんだが……」
フィオナがイシュバルにそう言ったタイミングで先ほどの職員が現れた。
「お待たせしました。こちらが冒険者登録の記載書類になります」
ラグナも皆と同様に書類を受け取る。
名前
年齢
特技
等を記入する欄がある。
「……これだけか?」
フィオナが怪訝な表示でそう聞くと、
「はい。これだけです。最悪名前さえ頂ければ大丈夫です。代筆は必要ですか?」
「いや、大丈夫だ。それにしても、年齢……年齢か」
フィオナはこんな見た目になったが実年齢は……なので悩んでいるととある人物と目が合う。
するとぶふっと笑いを我慢出来ずに吹き出してしまったイアン。
「……なにが可笑しい?」
「ははは!いやぁ~、年齢を書き込むのが恥ずかしいのだろう?」
「うるさい!わざわざそんな事を言わなくていい!」
フィオナの赤く染まった頬にラグナも思わずプププと笑いが込み上げる。
「お、お前まで笑うなぁぁ!も、もとはといえばお前が原因なんだぞ!!」
確かに大人だったフィオナの見た目が変化したのはラグナのせいなのだが……
他人であるイシュバルや書類を持ってきた従業員には意味がわからなかった。
「……年齢は記入しなくてもいいんだよな?」
「は、はい。名前と血を一滴頂ければギルドカードに登録出来ますので
……」
「そ、そうか。よし!お前らもとっと書け!」
フィオナが少し照れながら書類の記入を促すとラグナ達は記入を開始する。
「……よし。書けた」
「同じく」
「俺も終わったぞ」
「私も書けた」
「僕も」
「ウチもや」
「私も書き終わりましたわ」
ラグナは皆の書類をまとめて集めると従業員に手渡す。
「では手続きしてまいりますので少々おまちください」
ぺこりと礼をして退室していく従業員。
その背中を見送るとイアンが子供たちをじっと見つめ、口を開くのだった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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