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再会は突然に

リハビリチュウデス



「冒険者登録がしたい」


冒険者ギルドで長年冒険者ギルドの受付として働いてきたソーイは生まれて初めて感じた濃密な殺気にガタガタと恐怖で震えていた。


それも仕方ない。


つい数か月前まで冒険者ギルドというのは主に雑用や商隊の護衛任務などが主で、たまに害獣の駆除の依頼くらいしか無かった。


ほとんどが便利屋としか機能していなかった。


ヒノハバラとは違って、周囲にはほとんど魔物の姿は無い。


たまに海上に魔物が姿を現すが、陸上からでは討伐する手段などない。


数年に一度くらいのペースで何らかの理由で弱り、浜辺に打ち上げられた魔物を倒すくらい。


唯一この国で魔物を討伐しているのが漁船や輸送船に乗り、船乗りと共に魔物を討伐する冒険者くらいだろう。


しかし彼らの生存率は恐ろしく低い。


船が破壊されてしまったら後は餌になるだけなのだから。


そこまで命を掛けてもヒノハバラの冒険者に比べたら質の面でだいぶ劣る。


目の前に現れた10代半ばの少女からは今まで感じた事がないほどの覇気を感じていた。


「なんだ?出来ないのか?」


「い、いえ!すぐに登録させて頂きます!必要事項にご記入頂いてもよろしいでしょうか!」


ガチガチになりながらもソーイは登録記載書を取り出すとフィオナへと手渡す。


「ん?足りないぞ?」


「え?い、いえ。それだけで十分だと思いますが……」


「なにを言ってる。登録するのは私とコイツらだ」


フィオナはそう言いながらラグナ達を手で指す。


「も、申し訳ありません!すぐに準備します!」


ガサガサと受付にある棚を漁るが、ここ最近冒険者登録が爆発的に増えた為記載書の枚数が足りないことに気が付いたソーイは慌てて裏へと取りに行く。


フィリス達が記載書の準備を待っていると、


「来客中だってのによ、おめぇらは大人しく出来ねぇのか!」


と2階の階段から怒鳴り声が聞こえた。


「す、すいません!」


一斉に謝罪の声を上げる冒険者達。


フィリス達も怒鳴り声がした方を見る。


片目に眼帯をしたスキンヘッドの大柄の大男が怒りの形相で怒鳴っていた。


「そう怒鳴るなよ。騒ぐのは若い奴らの特権だろう?」


と言いながらスキンヘッドの男の肩を叩く男の姿を見てフィリス達は目を見開く。


「「が、学園長!?」」


「ん?おぉ!お前ら!」


そう言うと階段から飛び降り、フィオナ達の前にふわりと着地した。


「イ、イアン団長……」


フィリスは俯きながらもイアンの元へと近寄るとそのまま顔を埋める。


イアンもそんなフィリスを受け入れて背中をさする。


「お前らも無事で良かった……」


自身に魔の手が迫っていたイアンの唯一の心残りは学園の生徒達だった。


なんとか助けられないかと模索していたのだが、イアンがいくら手を尽くそうとしても一人ではどうにもならなかった。


ずっと後悔していた。


自分だけが逃げてしまった。


その罪悪感がイアンをずっと蝕んでいた。


自分だけが助かり、生徒や教師達は全員捕まってしまったのだろうと思い込んでいた。


それが、この子らは隣国まで脱出していた。


ヒノハバラ魔法学園歴代最強クラスと呼ばれていたが、フィオナ以外はまだまだ子供。


いくらフィオナが頑張ろうとも、どうにもならないだろうと思ってしまっていた。


それが……


「よく……本当によくここまで……」


目に涙を浮かべながら生徒の頭を一人ずつなでていく。


フィオナから始まり、セシル ミレーヌ ルー テオ シャール ウィリアム ラグナ


最後の一人の頭に手を置いて異変に気が付く


「……は?」


「えへ♪」


手を置いたまま固まるイアン。


「な、な、な……」


幽霊なんじゃないかと目の前の少年の足を確認するが、ちゃんとある。


手にもちゃんと感触を感じる。


自分が救えなかったはずの少年。


守護の女神の神殿の暴走によって異端者として処刑されてしまった。


王宮にこの愚行を止めるように抗議したのだが、


『守護の女神の神殿の決定に従う』


と、あの国王から言われてしまった。


王宮の異変に気が付いたのもこの時だった。


そして刑が執行されてしまった。


処刑されたはずの少年。


「ちゃんと俺は生きてましたよ?」


その一言でイアンは思わず目から涙が溢れ出る。


「ぐっ…いっちょ前に俺なんて…よく…よく…本当に良く無事だった……」


そう言うとラグナを強く抱きしめ、しばらくの間うずくまっていた。


「……ったく。おっさんのお涙頂戴なんてみてらんねぇ。おい、こんな所にいられたら業務の邪魔だ。一旦あの部屋に入ってろ」


眼帯の大男がイアンの背中をポンポンと叩くと、先ほどまでイアン達が居た受付の横にある階段を指差す。


「ほら、お前らもぼさっとしてねぇで仕事だ、仕事!」


冒険者ギルド内は再び慌ただしく時が動き出すのだった。




今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

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