冒険者ギルドへ行こう!
まだまだ執筆リハビリ状態ですが……
翌朝。
まだ冷たい風が吹く中、ラグナを含めた元生徒達一向は冒険者ギルドへと向かうため宿泊していたエチゴヤから出発した。
ちなみにこの集団の中にリオの姿は無い。
駄々を捏ねて一緒についていくと騒いでいたのだが……
「お前のその身体はゴーレムなのだろう?その状態で冒険者ギルドに登録出来るのか?」
というフィオナからの一言で撃沈されてしまい、渋々と留守番をする事になったのだ。
ハンカチを口に咥えながらキーっとした表情のリオに見送られながら、一同は冒険者ギルドへと
足を進めるのだった。
「冒険者ギルドかぁ。初めての冒険って感じでわくわくするね♪」
テオが冒険者ギルドへ向かう道中そう呟くと…
「まだ冒険者になってないだろう?それよりも先生、冒険者登録して僕達は何をするのですか?」
「ま、まさか外に出て狩猟とか魔物の討伐とか………?」
シャールの呟きにルーが顔を青ざめさせていた。
「それは着いてからのお楽しみだな。いや、違うか。私もよく知らん。冒険者なんてやったことが無いからな!部隊に参加した冒険者から話を聞いたことがある程度の知識しか無いぞ。」
フィオナがルーに答えると、一同から驚きの声が上がる。
「先生でも経験がないの?」
「当然だ。私は兵士としての経験はあるが、冒険者としての経験は皆無だぞ。それに兵士と冒険者では装備も違うし、持ち物も違う。あいつらは常に生き残る事を前提としながら行動していたからな」
和気藹々と話しながら歩いていると冒険者ギルドへと到着した。
「あれが冒険者ギルドですか……」
テオが呆気にとられた顔で見上げる先には巨大な建物が立っていた。
建物には剣と杖がクロスした絵に盾の形をした看板が取り付けられている。
「これが冒険者ギルド……」
魔法学園の敷地内にも冒険者ギルドは存在していたが、特級組のメンバーは誰一人として近寄る事が無かった。
毎日毎日フィオナの後釜としてやってきたキエフ先生を隠れ蓑としてフィオナがみっちりと生徒達を鍛えていたから。
そのとばっちりとしてキエフも巻き込まれてしまい、生徒達と共に毎日訓練する羽目になってしまったのだが。
拒絶しようにも同じ部隊にいた隊長からの命令は絶対。
完全に調教済みのキエフでは拒絶なんてする勇気を持ち合わせていなかった。
毎日魔力欠乏症になるほど厳しい訓練を重ねていたメンバーには冒険者ギルドで何かをする暇など持ち合わせていなかったのだ。
フィオナを先頭に冒険者ギルドへと入る一行。
冒険者ギルドは人でごった返していた。
受付に列ができ、室内に常設されている酒場も人が溢れてほぼ満席となっている状況だった。
「思っていたよりも人がたくさんいるんだな」
「そやね~。学園内にあった冒険者ギルドはいつも暇そうって話を聞いた事があるんやけども」
ウィリアムとルーは物珍しい室内にキョロキョロとしていた。
そんな慌ただしくも殺伐とした室内に明らかに子供と思われる年齢の集団が入って来たら、まぁ皆の視線が集中する訳だ。
「おいおいおい」
「ここはお子ちゃまが来る学校じゃねーっての」
そんな声が周りの冒険者達から聞こえてくる。
その反応は様々で、興味深そうに見るものや明らかに馬鹿にした目で見る者、中には面白そうだと様子を伺う者もいたのだが……
「おい!お前ら!ここはガキの来る場所じゃねぇぞ!怪我する前にさっさと帰んな!」
酒場で酒を飲んでいた1人の冒険者がラグナ達の前を塞ぐように立ち塞がるも……
「ああん?」
と、絡んできた冒険者に向けて下から見上げながらメンチを切るフィオナ。
「ちっこいガキは帰ってミルクでも飲んでな!」
フィオナがそう絡まれているにも関わらず、ラグナだけはワクワクしてしまっていた。
『よくラノベで書かれていたテンプレってやつが来たーーーー!」
一人だけ様子が違うものの、シャールやテオは大柄の男に絡まれたとあって萎縮していたが、セシルやウィリアムは相手に一歩も引かず睨みつけていた。
ルーはのほほんとした表情、ミレーヌはそんな状況下でも笑顔のまま。
冒険者の男が一番先頭にいたフィオナに手を伸ばしたその瞬間、ギルド内の空気が一変する。
「なっ……てめぇぇ」
酒場で飲んでいた冒険者達も自分の武器に手をかける。
遠くで傍観していた熟練の冒険者達も臨戦態勢に。
まだまだ低ランクと呼ばれる程度の冒険者達は腰を抜かし座り込む者やガタガタと恐怖で震える者たちも。
それほど濃密な殺気と色がくっきりとわかるほど濃い真っ赤な魔力が目の前にいる赤髪の少女から発せられた。
「てめぇ、何者だ?」
並の冒険者では正面をきって立つ事すら出来ない程のプレッシャーを受けつつもなんとか踏み留まる男。
そんな中、のんきに酒を飲みながら絡まれている様子をつまみにしていた男が椅子を倒しながら慌てて立ち上がる。
「赤い魔力……でもそんなはずはねぇ……まさか子供がいたっていうのか……?」
慌てて立ち上がった男がそう呟くとガタガタと震え始め、カチャカチャと音を鳴らせながら杖を落としてしまう。
そして、椅子を倒した事で注目を集めた男へと視線が集まる中、フィオナの視線も自然とその男へと向けられる。
すると、
「あ……あ……」
そう一言だけ呟くと白目を剥き泡を吹いたまま倒れてしまったのだった。
そんな男の様子に周りは呆然とする中、フィオナが口を開く。
「私は冒険者登録をしにやって来ただけだ。駄目だってのか?」
「くっ……ダメじゃねぇが……」
フィオナの前に立ち塞がっていた男が悔しそうな表情をしながら酒場へと戻っていく。
「あぁ、そうだ。そこで倒れてる男に言っておけ。」
フィオナは先ほど倒れた男の仲間らしき人物に向けて指をさすと
「余計なことを言ったらわかっているな?と言っておけ」
「あ、あぁ。わ、わかった。必ず伝えておく」
「それじゃあ行こうか」
そう言ってフィオナが受付へと進んでいくと並んでいたはずの冒険者達が自然と道を譲っていく。
その道を縦一列になりながらフィオナの後を追うラグナ達なのだった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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