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解き放たれた悪臭。

第1巻発売中~!

第2巻予約受付中なのでよろしくお願いします!

目指せ第3巻!!




ラグナを見て固まる集団を目にして、同じように固まるラグナ。


「時間が無いんだからね!ぼさっとしてないでいくわよぉぉ?」


「し、しかし!」


「今は脱出が先。詳しくはあとでよぉ?」


エイミーがそう指示するとラグナと同様に固まっていた集団はしぶしぶ動き出すのだった。


ラグナも混乱しながらも魔力を注ぎながらウィンドスクリーンを維持していく。


ウィンドスクリーンの中は現在進行形で阿鼻叫喚の図となっている。


狭い空間に大量のオオカミのオシッコが雨のようにばら撒かれたのだ。


嘔吐をしているうめき声が響いていたり、あまりの激臭に気を失ってしまう者も出始めていた。


その状況下の中でもウィンドスクリーンの中から脱出しようと必死な表示で剣でガシガシと壁をぶん殴っている者や涙や口からいろいろ垂れ流しながらも何とか魔法を詠唱してウィンドスクリーンを破壊しようとしている者もいたのだが……


悲しいかな。


ウィンドスクリーンには全く効果がなかったのだった。


エチゴヤの馬車を全て見送る頃には、ラグナの隣に赤い髪の毛の少女が腕を組んで無言で並んでいた。


「……助かった」


「ううん。気にしないで。ブリットさんの命の方が大事だからさ」


久々に会った二人は何から話せば良いのか。


チラリと顔を見合わせながら頬を掻くのだが……


「ん?」


徐々にラグナやフィリスが立っている場所にも異臭を感じられるようになり、思わず鼻を摘まんでしまう。


「詳しい話は後にしよう。私達もまずはこの場から脱出だな」


フィリスの提案にラグナは頷くと全力でこの場から逃げ出す。


遠くから野次馬をしていた住人達も異臭を感じたのか必死に走り始めるのだった。


少し涙目になりながらもヒノハバラから脱出したラグナとフィリス。


「思っていたよりもヤバかった……」


「なんてモノを街中にぶちまけたんだ、お前は」


少しでも油断すると、胃の中のモノがこみ上げてきそうになる。


街の外から破壊された国境門を見つめると、すぐに先ほどの臭いが二人へと襲い掛かる。


「ここまで離れても臭うのかよ!?」


そんな異臭のする街から再び逃げるように走る二人。


身体強化をしながら走る二人は街道を走るエチゴヤの馬車の列にすぐに追いつくのだった。


ヒノハバラからラグナが脱出してから数分後。


徐々に街へと襲い掛かる悪臭だったのだが……


悪臭を閉じ込めていたウィンドスクリーンがゆっくりと薄れるように消えてしまった。


意識を失っているのか、口から泡を吹いて倒れこんでいる者や、四つん這いになりながら嘔吐をしている者が多数地面に転がっていた。


中にいた兵士達は動く気配が感じられない。


もちろんその中にはヨハム公爵の関係者らしい青年も含まれていたのだった。


そして悪臭は解き放たれ、街を大混乱に陥れる。


「な、なんだあの匂いは!!」


破壊された国境門の周辺から街の中心部へと向けて漂う異臭に顔をしかめながら兵士や住人達が大騒ぎになって逃げ惑う。


その結果、エチゴヤの馬車を追う余裕がある兵士など一人もいなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」



新鮮な酸素を必死に取り込むラグナとフィリス。


「はぁ……はぁ……空気が美味いと感じる日が来るとは……」


と、フィリスはその場に座り込み、息を整える。


「あの壁はずっとあのままなのか……?」


「いや、そろそろ消えてると思うけど……」


「……今頃あの臭いが街中に広がってると?」


「……うん。そうなるね」


街の人には申し訳ないけど、エチゴヤのみんなを守るためには仕方がなかったんだよ。


フィリスは今頃阿鼻叫喚になっているだろう街に思いを馳せながら、


「仕方がないか……」


とだけ呟くのだった。





今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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