再び出会う少年は
長らくお待たせしました。
「くっ!眩しい!」
ラグナがブリットに精霊樹の雫を振りかけ無理やり飲ませた結果、何故か目も開けれぬほど眩しく発光した。
ほんの数秒で光は収まり、チカチカする目を何とか開くと……
「これは……奇跡だ……」
安らかに寝息をたてているブリットの姿が目の前にあった。
更にそれだけではなかった。
「お父さまの腕と足が……それにお顔も……」
失われたはずの手足がもとに戻っている。
更に痛々しい火傷の跡も綺麗さっぱり消えていた。
「父上……良かった……」
先ほどまで命の灯火が消えかけていたブリットだったが、精霊樹の雫の効果は絶大だった。
真っ青だった顔色は健康的な色味を戻し、穏やかな表情をしながら眠りについていたのだった。
サイは父の無事な姿に安堵すると、ラグナの両手をグッと掴み、
「ありがとう!本当にありがとう!!父上を助けてくれて!!僕が用意した上級回復薬では全く効果がなかった。ラグナ君のおかげで、父上の命が助かったよ!!」
と涙を流しながらお礼を言い始めたのだが……
「えっ……ラグナ……君?」
まるで壊れたロボットかのように、カクカクとしながら自身の兄がラグナと呼んだ人物へと顔を向けた。
「う、嘘……」
髪の毛の色は違うが、目の前にいる少年の顔には見覚えがある。
あの日……
守護の女神の神殿によって自分達の仲間である少年が異端者として認定されてしまい、助け出す事も出来ずに目の前で処刑された。
そのはずだった……
「生きてた……生きてくれていたの……」
目から涙をポロポロと零しながら、ラグナにゆっくりと歩み寄るミレーヌ
「久し振りだね、ミレーヌさん」
と、どこか照れ隠しのように笑いながら挨拶するラグナ。
そのままミレーヌはラグナに向かって手を広げると、ギュッと力強く抱きしめるのだった。
「良かったぁぁぁ……死んでなかったよぉぉぉ……」
と、ラグナの耳元で声を必死に押し殺して泣くミレーヌ。
「あはは……今まで言えなくてゴメンね」
そう言いながらラグナはミレーヌの背中が手を回し、優しくトントンとなだめているのだった。
そんな2人を微笑ましい眼差しで見守るサイと「むぅ」とした声を小さくあげるフィリスだったが……
ドゴーーーンという激しい爆発音と共に人々の悲鳴と振動が馬車の中へと伝わってきたのだった。
「次、撃てぇぇぇぇぇ!!」
ラグナが慌てて馬車から飛び出すと、こちらに向かって杖を構える集団の姿が見えた。
その集団はあろうことか、エチゴヤと共に兵士を非難していた住人に向けて魔法を発射した。
「させるかぁぁぁぁぁ!!ウィンドスクリーーーン!!」
ラグナがそう叫び手をかざすと、住人達をぐるっと囲むように金属製の巨大な板が現れドスンという音と共に地面へと突き刺さり、盾となったのだった。
「なんだあれは!?」
魔法師達が集団で放った魔法はウィンドスクリーンに当たると、その場で爆発を起こした。
そのおかげで住人達に魔法が届くことは無かったのだった。
今回も読んでいただき本当にありがとうございます。
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