混乱の国境門
ラグナが受付に戻ると、商人達がざわざわと騒いでいた。
「おい、聞いたか?」
「それは本当なのか?」
「俺はこの目で見てきてからヒノハバラを出国して来たんだ。見間違うものか!」
ラグナは商人達の話を気にしつつも、受付嬢に終わりましたと伝える。
「何かあったんですか?」
「私の口からはとても……未確認の情報を話すわけにもいきませんので」
「そうですか……」
受付嬢はそれ以上何も語らなかった。
「それでは、これで失礼します」
「わかりました。お気を付けてお帰りください」
ラグナがギルドを出ようとした所で、
「大変だ!ヒノハバラの国境門が閉じたぞ!」
と叫びながら商人が駆け込んできた。
「何だと!?」
「何が起きたんだ!?」
「嘘だろ!?今からヒノハバラに納品に行くところだったんだぞ!!」
「今すぐ確認しにいくしかねぇ!」
と商人達は大慌てで商業ギルドから駆け出していく。
『……もしかしてエチゴヤが関係してる?』
エチゴヤをこの街で待つ予定だったラグナも国境門が閉められたら大変な事になると気が付き、商人達の後を着いていく。
しばらく走り続けると、シーカリオンの国境を守る門にたどり着いた。
周囲は混乱しており、商人だけでなく兵士達の怒号が飛び交う。
シーカリオンとヒノハバラの国境には緩衝地帯とも呼べる空間があり、それを挟んで国境沿いにお互いの国境線ともよべる壁と国境門を建築していたのだが……。
ラグナはシーカリオン側の国境門へと近寄ろうとするが、もはやこれ以上先へと進むことすら出来ない状態だった。
「はやく入国させてくれ!」
「まだかよ!何してるんだ!」
と入国審査待ちの商人達が足止めを食らっており、兵士達に声を荒げている光景が見えた。
大量の人が押し寄せて混乱している状況下なのだが、何とか人混みを掻き分けて出国するための出口へと向かおうとしてみたものの……
途中で全く前に進むことも出来なくなってしまった。
「離れろ!離れるんだ!」
混乱状態の国境門に完全武装した兵士達が後方から強引に突き進んできた。
強引に突き進んで来た兵士に対して罵声を上げる商人達。
罵声を上げた所で兵士の歩みが止まることは無く、兵士はその場を取りまとめるべく強引に突き進む。
そして数名の兵士が腰にぶら下げていた小さな杖を上空へと掲げると、光の玉が空に向かって発射された。
空へと上がっていく光の玉はそのままぐんぐんと加速し、
一瞬の収縮と共に
パァァァァーーーーン
とまるでロケット花火が爆発した時のような音を鳴らしたのだった。
先ほどまで混乱状態だったが、音に驚いたのか静まり返る国境門。
その後、武器を構える兵士達。
殺気を感じたのか罵声を浴びせていた商人達もピタリと大人しくなり、素直に
道を譲るのだった。
その後、騒動の原因であるヒノハバラの国境門が開くまでは暫くその場で待機せよと兵士達から指示された。