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気まずい時間

『出るに出れる状況じゃねぇ……』


ラグナは目の前で繰り広げられた惨劇に困り果てていた。


ラグナが死んだと思い、罪の意識から泣き崩れている商人。


商人を守るために身体を張って助けた結果、散ったと思い黙祷している兵士達。


気軽に実は生きてました!なんて、とてもじゃないが出ていける状況では無かった。


ラグナにとっては気まずい時間だけが過ぎていく。


しばらくすると、商人が兵士に支えられながらのろのろと馬車に向かう。


「もし罪の意識があるならば、自らの足で商業ギルドに行き報告するんだぞ」


「……はい」


「我々も領主様に報告だけはせねばならんからな」



兵士は商人の肩を叩くとイザスタの方へと歩いていき、商人はどこか暗い表情のまま馬車に乗り込むとエメラダの街へと向かって行くのだった……


「……。」


ラグナもまた先ほどまでの光景を最初から見てしまっていたので、罪悪感に襲われていた。


出来るだけ早めにシーカリオンの商業ギルドに行く時間を作って事情を説明しようと心に誓うのだった。


今はいち早くイザスタの街へ。


でもこのまま街道を進むと兵士達にばったりと追い付いてしまう。


もしかしたら商人を助ける為に戦ったのが俺だと気がつかれてしまうかもしれない。


そうなると事情聴取やらなんやらで時間が取られてしまう。


なので……


ラグナは木から木へとぴょんぴょんと飛び移りながら、街を目指すのだった。


街道を巡回する兵士達にバレることなく追い抜いたラグナは無事にイザスタの街へとたどり着いた。


「子供が一人で街道を歩いて、よく無事だったな」


門番が驚きの声を上げる。


「本当に運が良かったのだと思います……」


「そうか……身分証はあるか?」


ラグナは門番に商業ギルドの身分証を提示すると、


「その歳で商人か……苦労してるんだな。今は魔物が出て来るようになっちまったんだ。絶対に無理だけはするなよ」


と言って中に入れてくれたのだった。


「いらっしゃい!」


「ヒノハバラから仕入れた新鮮な野菜だよ!」


「まとめ買いで安くするよ!」


国境都市というだけあって、思っていた以上に栄えていた。


露天商も沢山いるし、人通りも多い。


手持ちの資金が減ってきたので、ラグナは商業ギルドへと向かいお金をおろす事にした。


商業ギルドに入ると街の空気とは一変してピリッとした雰囲気を感じる。


「本日のご用件は何でしょうか?」


受付嬢もどこかピリピリとした雰囲気を感じる。


「預金口座から一部資金を下ろそうと思いまして」


「わかりました。それではこちらへ」



と別室へ案内されたのだが……


「使用した事はありますか?」


「い、いえ……初めてです」


「では使い方を説明します」


ラグナは動揺を必死に抑えて操作方法を頭の中に叩き込んでいく。


「では用件が済みましたら、受付に一言声をかけて下さい」


と言うと受付嬢は戻っていく。


「はぁ、焦った……こんなもの誰が作ったんだよ」


と目の前にあるATMの様な装置を見て、思わずボヤくラグナ。


ギルドカードをATMモドキの上にかざしてタッチパネルの様な画面に下ろす金額を入力すると、


ピピー ピピー ピピー


と、どこか懐かしい音と共に入力した分のお金がジャラジャラと出て来るのだった。


ラグナは出て来たお金を収納すると取引終了のボタンを押して出口へと向かう。


取引終了のボタンを押した直後に画面上に残高が表示されていたが、ラグナはそれに気が付く事無く部屋から出て行ってしまった。


その残高の表示には……


本人があまりの金額に恐怖し、腰を抜かしそうなほどの残高になっていたのだった。



今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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