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商人の後悔

「なんだ、今の爆発は!!」


遠くの方でそんな声が聞こえた。


『やべぇ、やり過ぎた!』


街道であんな魔法をぶっ放せば目立つに決まってるじゃないかと反省しつつも、慌てて近くの木に登りカモフラージュローブを羽織るラグナ。


しばらく隠れていると、ドカドカとフル装備で鎧を着込んだ兵士達がやってくる。


そして、


「一体何が起きたんだ……?」


大きく抉れた地面を見て立ち止まる兵士達。


「……魔法でしょうか?」


「この様子だとそうだろう……」


「しかし、一体誰がこんな魔法を?まさか魔法を使える魔物でも……」


ひとりの兵士のそんな呟きに緊張感が走る。


魔物が魔法を使う。


そんな事は有り得ないと言い切る事なんて出来ないのだから。


ほとんどの兵士達はつい最近まで魔物との戦闘経験など無かった。


魔物は魔の森と呼ばれている深き森から出ることは無いというのが常識だったから……


ガラガラ!


物音に反応し、武器を構える兵士達。


徐々に近寄ってくる物音に緊張感が高まっていく。


「はぁ……なんだ」


徐々に近寄ってきた物音の正体は荷を運ぶ馬車だった。


「魔物がうろうろしているんだ。護衛も用意しないで運ぶのは感心しないぞ」


と馬車に乗る商人らしき人物に注意する兵士。


「へ、兵士さん……」


顔を真っ青にしたまま挙動不審になっているその商人に、 兵士は尋ねる。


しかし……その答えは予想外のものだった。


「この辺で……し、少年の姿を見てはいませんか?」



「少年だと……?いや、私は見ていないが……お前ら、ここに来るまでに少年なんて見たか?」


周囲にいる仲間に兵士は尋ねるが、


「この場に駆けつけるまで誰も見ていません」


との回答が返ってきた。


その言葉を聞いて更に青ざめる商人。


そしてヨロヨロと馬車から力無く降りると涙を流しながら、


「すまない。本当にすまない」


と誰かに向かって謝罪するのだった。


「……何があったのだ?」


商人が落ち着くのを待って兵士が話し掛ける。


「実は……」


商人はボソボソと小さい声ながらも兵士に語り始めるのだった。


ヒノハバラから商品を仕入れ、カーリントウへと向かおうとしていた商人だったのだが……


ヒノハバラで商品の仕入れの際に護衛として雇っていたグループはヒノハバラでのみしか活動していない護衛だったので、ヒノハバラから出国後はイザスタで新たに護衛と契約する予定だった。


イザスタへの到着後、すぐに契約を結ぼうと考えていたのだが……


いつも頼んでいた護衛達が依頼人と共に行方不明という事を知り他の護衛を探そうと声をかけるが、


「他を当たってくれ」


「無理だ、無理!魔物がうじゃうじゃいやがるからな!」


と、断られ続けてしまい護衛を探し回ったが見つけることが出来なかった。


高い関税とお気持ちを手渡して出国したので、仕入れた品を売りさばけなければ破産してしまう。


イザスタの門番には引き止められたが、一か八かの勝負に出た。


その結果が、魔物との遭遇だった。


「魔物に追われていた私を逃がすために少年がその魔物達を引きつけてくれたのです……」


無事に魔物を振り切る事が出来た商人だったが……


落ち着きを取り戻すにつれて、少年に魔物の集団を押し付けてしまった事に対する罪悪感が募ってくる。


そして馬車を止めた直後にあの爆発。


商人は無我夢中で来た道を戻り今に至る。


「少年か……」


兵士達は話を聞いた後、少しでも遺品らしきものが残って無いか無言で草をかき分けて探し始める。


しかし、何も見つからない。


「勇敢な少年に」


重苦しい雰囲気のまま、兵士達は黙祷を捧げる。


商人は自分が無謀な行動をしてしまった結果、まだ未来ある若き少年の命を奪ってしまったと、地面にひざを突きながら涙を流していたのだった。




今回も読んでいただき本当にありがとうございます。

少しでも気に入って頂きましたらブックマークの登録や☆☆☆☆☆にて高評価して頂けると焚き火の火を見ながら1人嬉し涙を流すかもしれません。

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